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第4部 B級と公爵さまの陰謀
王女ヨルガ
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ヨルガ王女。その名は聞き覚えがあった。
わたしのように、付き合いの悪い、自分の研究以外は季節の移り変わりすら、関心のない者でも、流石に今の王族の名前くらいは、入ってくる。
ヨルガ王女は、その美しさと。
奔放さで知られていた。
浮名を流した数は、多分、ゴシップ紙を飾っただけでも、30名を超えるのではないだろうか。
その中には、目の前の「元」勇者のオルフェ氏も混じっていたはずだ。
あまりの醜聞の多さに(普通の恋愛関係ならまだしも、妻帯者にまで手を出すとなると話が違ってくる)ついに、痺れを切らしたのか、王室は、ヨルガを遠い異国の地へ嫁に出すことを決めた。
印象は、甚だよくないが、元々、彼の国の王子が、こちらに留学に来ていた際に、ヨルガ姫を見染めたのがきっかけらしい。つまりは、まんざら、外交案件ということでもなく、願われて、いくのであるから、王族という特殊な立場の人間にとってはそれは十分、幸せなことなのではないか、とわたしなどは思うのだが、ヨルガ姫は違ったらしい。
まるで、醜聞が相手に伝わってもらわないと困るかのように、それこそ、芸人や役者、冒険者といった身分違いのものとまで、遊びまくり、それがある時から、ピッタリと収まった。
「ご気分がすぐれないので」
という言い訳のような理由で、彼女は、公式な席にも一切姿を見せなくなり。
悪い病気をもらって療養中。
あるいは、
堪忍袋の尾が切れた王から、謹慎を食らっている。
どちらもありそうな話ではあった。
だが、現実に起こった話では。
と、ここで噂話をするものは声を顰めるのである。
彼女が異様な能力を発揮するようになり、さらには、その能力に合わせるように、体が徐々に変化していったのだという。
それは、明らかに異形なものとなりつつあり。
魔族の軍勢が、正門に押し寄せたその夜に、これに呼応するように牢を破り、脱出したという。
そして、離宮に詰めていた衛兵を次々にその手にかけ、さらに街中へ暴れ出そうとしたところを、駆けつけたルークに退治されたのだと。
にわかには信じがたいような話だった。
だが、目の前の魔族、マルコは、実際に魔族の力を人に分け当たることができるといい、それによって人格が変貌してしまうことも示唆した。
オルフェは。両手を突き刺さった木の枝の槍に手をかけて。
勢いよく引き抜いた。
普通ならば、悪手だ。引き抜いた拍子に重要な器官や、血管を傷つけたりして、かえって出血を激しくしてしまう。
オルフェは、その枝を振りかぶって、マルコに打ち下ろした。
やってることが無茶苦茶だけに、これはマルコの意表をついたようだった。
脳天を殴られたマルコが転倒した。倒れたマルコを、さらにオルフェが殴り続ける。
殴るたびに、オルフェの腹から血が噴き出ていた。
「やめさせろ。」
レティシアが言ったが、わたしたちが呆然としているので、自らオルフェの首筋に手刀を当てた。
「全く・・・おまえも大概に悪趣味だ。効いてはおらんのだろう?」
言われて、マルコが体を起こす。倒れた時にその服だか、表皮高に泥がついた。
彼の損害はその程度だ。
「これはこれはありがたい。」
くすくすと笑いながら、マルコはいった。少なくともこちらから攻撃したのは事実であるが、彼はそのことは全く気にしていないようだった。
わたしのように、付き合いの悪い、自分の研究以外は季節の移り変わりすら、関心のない者でも、流石に今の王族の名前くらいは、入ってくる。
ヨルガ王女は、その美しさと。
奔放さで知られていた。
浮名を流した数は、多分、ゴシップ紙を飾っただけでも、30名を超えるのではないだろうか。
その中には、目の前の「元」勇者のオルフェ氏も混じっていたはずだ。
あまりの醜聞の多さに(普通の恋愛関係ならまだしも、妻帯者にまで手を出すとなると話が違ってくる)ついに、痺れを切らしたのか、王室は、ヨルガを遠い異国の地へ嫁に出すことを決めた。
印象は、甚だよくないが、元々、彼の国の王子が、こちらに留学に来ていた際に、ヨルガ姫を見染めたのがきっかけらしい。つまりは、まんざら、外交案件ということでもなく、願われて、いくのであるから、王族という特殊な立場の人間にとってはそれは十分、幸せなことなのではないか、とわたしなどは思うのだが、ヨルガ姫は違ったらしい。
まるで、醜聞が相手に伝わってもらわないと困るかのように、それこそ、芸人や役者、冒険者といった身分違いのものとまで、遊びまくり、それがある時から、ピッタリと収まった。
「ご気分がすぐれないので」
という言い訳のような理由で、彼女は、公式な席にも一切姿を見せなくなり。
悪い病気をもらって療養中。
あるいは、
堪忍袋の尾が切れた王から、謹慎を食らっている。
どちらもありそうな話ではあった。
だが、現実に起こった話では。
と、ここで噂話をするものは声を顰めるのである。
彼女が異様な能力を発揮するようになり、さらには、その能力に合わせるように、体が徐々に変化していったのだという。
それは、明らかに異形なものとなりつつあり。
魔族の軍勢が、正門に押し寄せたその夜に、これに呼応するように牢を破り、脱出したという。
そして、離宮に詰めていた衛兵を次々にその手にかけ、さらに街中へ暴れ出そうとしたところを、駆けつけたルークに退治されたのだと。
にわかには信じがたいような話だった。
だが、目の前の魔族、マルコは、実際に魔族の力を人に分け当たることができるといい、それによって人格が変貌してしまうことも示唆した。
オルフェは。両手を突き刺さった木の枝の槍に手をかけて。
勢いよく引き抜いた。
普通ならば、悪手だ。引き抜いた拍子に重要な器官や、血管を傷つけたりして、かえって出血を激しくしてしまう。
オルフェは、その枝を振りかぶって、マルコに打ち下ろした。
やってることが無茶苦茶だけに、これはマルコの意表をついたようだった。
脳天を殴られたマルコが転倒した。倒れたマルコを、さらにオルフェが殴り続ける。
殴るたびに、オルフェの腹から血が噴き出ていた。
「やめさせろ。」
レティシアが言ったが、わたしたちが呆然としているので、自らオルフェの首筋に手刀を当てた。
「全く・・・おまえも大概に悪趣味だ。効いてはおらんのだろう?」
言われて、マルコが体を起こす。倒れた時にその服だか、表皮高に泥がついた。
彼の損害はその程度だ。
「これはこれはありがたい。」
くすくすと笑いながら、マルコはいった。少なくともこちらから攻撃したのは事実であるが、彼はそのことは全く気にしていないようだった。
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