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第143話 色彩魔術対氷の貴婦人
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「あはははっ......ちょっとやりすぎちゃったかな? でも、どうせすぐに再生するんでしょ?」
部屋の中央で、ロゼリッタが笑う。 その目の前で、壁が崩れ落ちた。
「......そのとおりだな。」
壁の向こうから、ロウランが現れた。
身にまとっていたドレスは、破れ、身にまとうのはわずかに蒼を帯びたガードルのみ。そこから伸びた両腕には、金色の腕輪がいくつも嵌められている。足にも、同じような飾りがあった。どれも、なにかの骨で作られたものらしい。蒼と金と白の色彩は、それだけで、ひどく目立つものだった。 結い上げた髪はそのままで、まるで、怖い家庭教師が、できの悪い貴族のお嬢様のまえにあらわれたような感があった。
「出来ることがあるなら、早くやっておきなさい。」
静かに、そう言って、ロウランは腕を振るった。 その先に、無数の小さな氷の鏡が現れる。
「わたしから落第を宣言されるまえに。」
氷の鏡から氷の塊が、ロゼリッタめがけて飛んだ。
ロゼリッタは、すばやく身をひるがえしてそれを避けたが、彼女がさっきまで立っていた場所には、大きな穴があいた。
「あははっ...なかなかおもしろいじゃない!」
ロウランの攻撃は、それで終わりではなかった。 次々と、部屋中に鏡が出現していく。そしてそれらは、そのむこうに無限の回廊を展開していた。 数百枚の鏡のうち、一枚につき、ひとつずつ、ロウランが放った魔法が反射されていく。 やがて、すべての鏡面から放たれた氷塊は、互いを相殺しあい、消えていった。
ロゼリッタの大蛇は、有無を言わせぬ氷の乱打に、うたれそれでも起き上がろうとした。
竜鱗の近い、防御よりをもつ、大蛇には、この攻撃は必ずしも致命傷にはならなかったのだ。だが。
気がついたときに、ふたりのバトルフィールドは、氷に埋め尽くされてた。
そして、大蛇もまた、氷に埋め尽くされて動けなくなっていた。
「これは、おまえの魔法の目的か。たしかにすごい。」
感嘆の声とともに、ロゼリッタが笑った。
「でも次の手はどうするの。」
ロゼリッタのドレスが、ふたたび千々に乱れて、彼女の周りを旋回する。 それが、彼女の体に巻き付くと同時に炎をモチーフにした緋色の鎧をまとったロゼリッタが現れた。
「言ったよね? 魂までボロボロにすりきれるまで、負けることさえ許さない。」
ロゼリッタが、炎の剣を両手に持って構える。
ロウランは、そんなロゼリッタを見て、わずかに眉をひそめた。
「……まだ、そんな玩具でわたしの冷気に対抗できるつもりなのね。」
そうつぶやいて、ロウランは右手を横に伸ばした。
その手に現れたのは、一振りの剣だった。
実際の「剣」というよりは、魔力を媒介する魔法具だったのだろう。
部屋をほぼ、埋めつくした氷塊から、巨大な氷の巨人たちが立ち上がる。
それは、かろじて人の形を形成しているにすぎなかった。
ただ、巨大すぎる人型の物体として、部屋の中央に立ちふさがった。
「あなたこそ、その玩具で、わたしに勝てると思っているの?」
ロゼリッタの問いに、ロウランは静かに答えた。
「勝つ必要なんてないのよ。わたしはあなたに、敗北の味を教えるだけよ。」
ロゼリッタは、その言葉に思わず吹き出した。
「あんたって、けっこう面白いやつなのね。気に入ったわ!」
言うなり、彼女は手にした炎の剣を振りかざし、まっすぐに突進していった。
「あははははははっ!!!」
ロゼリッタの笑い声が響く中、氷の巨人たちは、巨大な壁となってその行く手に立ち塞がった
。
炎の剣と、巨人たちの拳がぶつかり合う。
衝撃とともに、炎が舞い散り、巨人たちは四肢を切断され、倒れた。
しかし、巨人たちは、倒れる傍から、産まれてくる。
強引に、巨人たちの間を、ロゼリッタが駆け抜けようとしたが、ついに彼らの一体がロゼリッタに抱きつくことに成功した。
抱きつかれていないほうの腕で、ロゼリッタは、自分を捕まえている巨人の頭に剣を振るう。
「あはははっ!!
脆い! 脆いわあ! ロウラン。」
笑うロゼリッタの前で、巨人の顔が崩れていく。
「なによこれ! 気持ち悪いわだけね!」
叫びながらも、ロゼリッタは、巨人の腕を斬り落とし、さらに胴体を蹴り飛ばした。
巨人は、そのまま後ろに倒れ込み、動かなくなった。
「こんなやつらじゃ、相手になんないわね。」
ロゼリッタは、笑いながら、さらに巨人の群れを切り裂いていった。
「ほら、早く来なさいよ。」
言いかけたロゼリッタの、声が凍った。再び氷の巨人たちが、復活していく。今度はさきほどよりも精緻な作りだ。
その腕には氷の剣や盾が構え立てている。
---------------------
「次に勝敗が決まりそうなのは、ここになりそうです。」
ドロシーは、鏡の中の二人の吸血姫を、眺め流れそう言った。
「その見立てはどうかな。」
ドゥルノ・アゴンが言う。
「共に無限の再生力をもつ吸血鬼だ。」
「ロウラン閣下はすでに、バトルフィールドを氷で埋めつくしました。環境を己の有利なふうに持っていった時点で、氷魔術の勝ちです。」
そう言えば冷えるな。
足元をみた、ドゥルノ・アゴンは愕然とした。
彼の足は、床に氷で張り付いて、動かせなくなっていた!
部屋の中央で、ロゼリッタが笑う。 その目の前で、壁が崩れ落ちた。
「......そのとおりだな。」
壁の向こうから、ロウランが現れた。
身にまとっていたドレスは、破れ、身にまとうのはわずかに蒼を帯びたガードルのみ。そこから伸びた両腕には、金色の腕輪がいくつも嵌められている。足にも、同じような飾りがあった。どれも、なにかの骨で作られたものらしい。蒼と金と白の色彩は、それだけで、ひどく目立つものだった。 結い上げた髪はそのままで、まるで、怖い家庭教師が、できの悪い貴族のお嬢様のまえにあらわれたような感があった。
「出来ることがあるなら、早くやっておきなさい。」
静かに、そう言って、ロウランは腕を振るった。 その先に、無数の小さな氷の鏡が現れる。
「わたしから落第を宣言されるまえに。」
氷の鏡から氷の塊が、ロゼリッタめがけて飛んだ。
ロゼリッタは、すばやく身をひるがえしてそれを避けたが、彼女がさっきまで立っていた場所には、大きな穴があいた。
「あははっ...なかなかおもしろいじゃない!」
ロウランの攻撃は、それで終わりではなかった。 次々と、部屋中に鏡が出現していく。そしてそれらは、そのむこうに無限の回廊を展開していた。 数百枚の鏡のうち、一枚につき、ひとつずつ、ロウランが放った魔法が反射されていく。 やがて、すべての鏡面から放たれた氷塊は、互いを相殺しあい、消えていった。
ロゼリッタの大蛇は、有無を言わせぬ氷の乱打に、うたれそれでも起き上がろうとした。
竜鱗の近い、防御よりをもつ、大蛇には、この攻撃は必ずしも致命傷にはならなかったのだ。だが。
気がついたときに、ふたりのバトルフィールドは、氷に埋め尽くされてた。
そして、大蛇もまた、氷に埋め尽くされて動けなくなっていた。
「これは、おまえの魔法の目的か。たしかにすごい。」
感嘆の声とともに、ロゼリッタが笑った。
「でも次の手はどうするの。」
ロゼリッタのドレスが、ふたたび千々に乱れて、彼女の周りを旋回する。 それが、彼女の体に巻き付くと同時に炎をモチーフにした緋色の鎧をまとったロゼリッタが現れた。
「言ったよね? 魂までボロボロにすりきれるまで、負けることさえ許さない。」
ロゼリッタが、炎の剣を両手に持って構える。
ロウランは、そんなロゼリッタを見て、わずかに眉をひそめた。
「……まだ、そんな玩具でわたしの冷気に対抗できるつもりなのね。」
そうつぶやいて、ロウランは右手を横に伸ばした。
その手に現れたのは、一振りの剣だった。
実際の「剣」というよりは、魔力を媒介する魔法具だったのだろう。
部屋をほぼ、埋めつくした氷塊から、巨大な氷の巨人たちが立ち上がる。
それは、かろじて人の形を形成しているにすぎなかった。
ただ、巨大すぎる人型の物体として、部屋の中央に立ちふさがった。
「あなたこそ、その玩具で、わたしに勝てると思っているの?」
ロゼリッタの問いに、ロウランは静かに答えた。
「勝つ必要なんてないのよ。わたしはあなたに、敗北の味を教えるだけよ。」
ロゼリッタは、その言葉に思わず吹き出した。
「あんたって、けっこう面白いやつなのね。気に入ったわ!」
言うなり、彼女は手にした炎の剣を振りかざし、まっすぐに突進していった。
「あははははははっ!!!」
ロゼリッタの笑い声が響く中、氷の巨人たちは、巨大な壁となってその行く手に立ち塞がった
。
炎の剣と、巨人たちの拳がぶつかり合う。
衝撃とともに、炎が舞い散り、巨人たちは四肢を切断され、倒れた。
しかし、巨人たちは、倒れる傍から、産まれてくる。
強引に、巨人たちの間を、ロゼリッタが駆け抜けようとしたが、ついに彼らの一体がロゼリッタに抱きつくことに成功した。
抱きつかれていないほうの腕で、ロゼリッタは、自分を捕まえている巨人の頭に剣を振るう。
「あはははっ!!
脆い! 脆いわあ! ロウラン。」
笑うロゼリッタの前で、巨人の顔が崩れていく。
「なによこれ! 気持ち悪いわだけね!」
叫びながらも、ロゼリッタは、巨人の腕を斬り落とし、さらに胴体を蹴り飛ばした。
巨人は、そのまま後ろに倒れ込み、動かなくなった。
「こんなやつらじゃ、相手になんないわね。」
ロゼリッタは、笑いながら、さらに巨人の群れを切り裂いていった。
「ほら、早く来なさいよ。」
言いかけたロゼリッタの、声が凍った。再び氷の巨人たちが、復活していく。今度はさきほどよりも精緻な作りだ。
その腕には氷の剣や盾が構え立てている。
---------------------
「次に勝敗が決まりそうなのは、ここになりそうです。」
ドロシーは、鏡の中の二人の吸血姫を、眺め流れそう言った。
「その見立てはどうかな。」
ドゥルノ・アゴンが言う。
「共に無限の再生力をもつ吸血鬼だ。」
「ロウラン閣下はすでに、バトルフィールドを氷で埋めつくしました。環境を己の有利なふうに持っていった時点で、氷魔術の勝ちです。」
そう言えば冷えるな。
足元をみた、ドゥルノ・アゴンは愕然とした。
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