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第126話 ルーレットの迷宮
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「ここまでのところ、おまえは、うまくやれていない。そのところの自覚はあるか?」
サイノスの舌鋒は鋭い。
「わたしくと、リウ。最終局面をこの形に持っていく。その為には、奴に組みなすもの、それを事前に排除しておく。
このために、四烈将が与えられたのですが・・・。
確かに、あやつらの働きは充分ではない。」
「そうだな。
その理由がわかるか?」
それは、やつらの実力の問題だろう、と言わんばかりの、自信満々のドゥルノ・アゴンの顔を見て、サイノスは、持っていた杖の先端を床に打ち付けた。
放射状のヒビが走り。それは、床か天井にまで、達した。
「指揮したお主の責じゃっ!
場所をわきまえず、相手を選ばずに仕掛けた結果だ。」
意外なことを、あまりなも意外なことを言われたように、ドゥルノ・アゴンは押し黙った。反論しようにも、こんな形で責められるとは思ってもみなかったようだ。
「よいか! 四烈将は、お主の時代に、お主の側近となるべく育てたもの達じゃ。単なる戦闘用の消耗品ではない!
それをあえて、戦いに投入するのは、将たるものの裁量。しかし、お主のやっておる事は、当てもない消耗戦じゃ。
かくなれば、まだ本隊というべきもなが、ランゴバルトに控えている『踊る道化師』がはるかに有利になるのは、自明のこと!」
「し、しかし!」
ドゥルノ・アゴンは、なおも、反論した。
ドロシーは、また心の中で、舌打ちした。
ドゥルノ・アゴンは、なんと言うか、そこまでの男だった。
本当ならば、ここでドゥルノ・アゴンには、引いて欲しいのだ。
そうすればサイノスも、それ以上は責任を追求することはないだろう。
なにしろ、ドゥルノ・アゴンの地位は、簡単に他のもので埋められるものではないからだ。
だが、この不格好な反論は。まるで、ドロシーの前でみっともないところを見せたくないと力んでいる街のチンピラのようではないか。
「我々が戦う度に、カザリームの街は損害を受けています。街の治安を預かるカザリームにはこれは看破しがたきダメージになっているはず・・・」
「嫌がらせとしたならばな。
いくら続けても、むこうのマイナスにこそなれ、こちらのプラスにはならん。それに、奴らがある程度の犠牲に目を瞑ると、覚悟した瞬間に消えたなくなるアドバンテージだ。」
サイノスは、炯々とひかる眼で、ドゥルノ・アゴンを見つめていたが、
「指揮は、わしがとろう。」
ぶっきらぼうにそう言った。
「やつらは、バズス=リウ自身を餌に有利な戦場を設定してくるはずだ。
そうなれば、こちらから仕掛けるしか出来ん。」
「し、しかし、ならば我々が逆にカザリームに対して、自在に攻撃をかけられる立場にあるわけですから」
「カザリームをいくら破壊してもなんの成績にはならん。、倒すべき候補者は、魔王または、魔王の卵しかない。」
サイノスは、忌々しそうに杖を振り回した。
「戦場はこちらが設定する。そのに、リウとその配下共をおびき寄せて、雌雄を決するのだ。」
--------------------------
「サルザリウの迷宮?」
数時間して戻ってきたアシットは、黒い便箋に封じられた手紙を、持っていた。
深紅の文字で、旧世代の魔王へ、と仰々しく書かれている。
封を切ると、そこに
「サルザリウの迷宮で待つ」
と、そう、書かれた手紙が一枚、味もそっけもなく、入っていた。
なにか重要な誓約、呼出状などに使われる古紙と呼ばれる、生成から一定期間を経た用紙ですらない。
「先手をうたれた・・・ということか。」
アシットは難しい顔でそういった。
「こちらとしては、わたしやロウランの魔法戦闘が使いやすい、広大な空間をもつ迷宮をあてこんでいたのだが、さきを越された。
集団戦で殲滅するつもりが、個別に戦わされる。当然、完全な勝ちなど望めない。」
「なにが、問題なのだ?」
リウが真顔で尋ねた。
「どの迷宮を想定していたのか、知らないが、オレは『迷宮』という閉鎖空間に戦闘を限定してやることのみが重要で、それ以外のことは度外視している。
なにもこちらだけが、有利な世界を作り出してもらう必要はない。」
「・・・そう・・なのか?」
「おまえらもそうじゃないのか? どこで戦っても、あいつらの力ならそのブロックが壊滅することは避けられないから、迷宮におびき寄せるんじゃなかったのか?
こちらに少しでも有利なバトルフィールドを展開するためなんて、その次の話だろう?」
「・・・確かに、あなたは魔王の風格があるよ、リウ。」
アシットは、横にたつベータを横目で見ながら、そう言った。
「だが、サルザリウの迷宮はいささか特殊でね。どんな迷宮なのか、説明してやってくれるか、ベータ。」
「簡単に言ってしまえば、転移陣が設置された小部屋が続く迷宮よ。」
ベータは、カザリームで育っただけあって、ここの迷宮のことはくわしいようだ。
「どこにどう飛ばされるのか。そもそも、すべての移動が転移によって行われる以上、部屋がいくつあるのか、どうつながっているのか、そもそもつながっていないか・・・まったくの不明。
一定の法則性があって、そこに存在するのは、同時に一対の敵味方同士のみ。そして、部屋を脱出するには、相手を倒すしかない・・・とまあ、そんな具合ね。
通常は、魔物が待ち構えているのだけれど、もし、事前にコアを掌握されてしまっていたりすると、待ち構えているのは、ドゥルノ・アゴン一味でしょう。」
「まあ、それなりに公平な戦いはできそうじゃないか?」
とザックが言った。
彼としては、この迷宮が大いに気に入った。リウと違って、大っぴらに正体をばらしたくない彼としては、一対一で、戦えるのは好ましかったのだ。
サイノスの舌鋒は鋭い。
「わたしくと、リウ。最終局面をこの形に持っていく。その為には、奴に組みなすもの、それを事前に排除しておく。
このために、四烈将が与えられたのですが・・・。
確かに、あやつらの働きは充分ではない。」
「そうだな。
その理由がわかるか?」
それは、やつらの実力の問題だろう、と言わんばかりの、自信満々のドゥルノ・アゴンの顔を見て、サイノスは、持っていた杖の先端を床に打ち付けた。
放射状のヒビが走り。それは、床か天井にまで、達した。
「指揮したお主の責じゃっ!
場所をわきまえず、相手を選ばずに仕掛けた結果だ。」
意外なことを、あまりなも意外なことを言われたように、ドゥルノ・アゴンは押し黙った。反論しようにも、こんな形で責められるとは思ってもみなかったようだ。
「よいか! 四烈将は、お主の時代に、お主の側近となるべく育てたもの達じゃ。単なる戦闘用の消耗品ではない!
それをあえて、戦いに投入するのは、将たるものの裁量。しかし、お主のやっておる事は、当てもない消耗戦じゃ。
かくなれば、まだ本隊というべきもなが、ランゴバルトに控えている『踊る道化師』がはるかに有利になるのは、自明のこと!」
「し、しかし!」
ドゥルノ・アゴンは、なおも、反論した。
ドロシーは、また心の中で、舌打ちした。
ドゥルノ・アゴンは、なんと言うか、そこまでの男だった。
本当ならば、ここでドゥルノ・アゴンには、引いて欲しいのだ。
そうすればサイノスも、それ以上は責任を追求することはないだろう。
なにしろ、ドゥルノ・アゴンの地位は、簡単に他のもので埋められるものではないからだ。
だが、この不格好な反論は。まるで、ドロシーの前でみっともないところを見せたくないと力んでいる街のチンピラのようではないか。
「我々が戦う度に、カザリームの街は損害を受けています。街の治安を預かるカザリームにはこれは看破しがたきダメージになっているはず・・・」
「嫌がらせとしたならばな。
いくら続けても、むこうのマイナスにこそなれ、こちらのプラスにはならん。それに、奴らがある程度の犠牲に目を瞑ると、覚悟した瞬間に消えたなくなるアドバンテージだ。」
サイノスは、炯々とひかる眼で、ドゥルノ・アゴンを見つめていたが、
「指揮は、わしがとろう。」
ぶっきらぼうにそう言った。
「やつらは、バズス=リウ自身を餌に有利な戦場を設定してくるはずだ。
そうなれば、こちらから仕掛けるしか出来ん。」
「し、しかし、ならば我々が逆にカザリームに対して、自在に攻撃をかけられる立場にあるわけですから」
「カザリームをいくら破壊してもなんの成績にはならん。、倒すべき候補者は、魔王または、魔王の卵しかない。」
サイノスは、忌々しそうに杖を振り回した。
「戦場はこちらが設定する。そのに、リウとその配下共をおびき寄せて、雌雄を決するのだ。」
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「サルザリウの迷宮?」
数時間して戻ってきたアシットは、黒い便箋に封じられた手紙を、持っていた。
深紅の文字で、旧世代の魔王へ、と仰々しく書かれている。
封を切ると、そこに
「サルザリウの迷宮で待つ」
と、そう、書かれた手紙が一枚、味もそっけもなく、入っていた。
なにか重要な誓約、呼出状などに使われる古紙と呼ばれる、生成から一定期間を経た用紙ですらない。
「先手をうたれた・・・ということか。」
アシットは難しい顔でそういった。
「こちらとしては、わたしやロウランの魔法戦闘が使いやすい、広大な空間をもつ迷宮をあてこんでいたのだが、さきを越された。
集団戦で殲滅するつもりが、個別に戦わされる。当然、完全な勝ちなど望めない。」
「なにが、問題なのだ?」
リウが真顔で尋ねた。
「どの迷宮を想定していたのか、知らないが、オレは『迷宮』という閉鎖空間に戦闘を限定してやることのみが重要で、それ以外のことは度外視している。
なにもこちらだけが、有利な世界を作り出してもらう必要はない。」
「・・・そう・・なのか?」
「おまえらもそうじゃないのか? どこで戦っても、あいつらの力ならそのブロックが壊滅することは避けられないから、迷宮におびき寄せるんじゃなかったのか?
こちらに少しでも有利なバトルフィールドを展開するためなんて、その次の話だろう?」
「・・・確かに、あなたは魔王の風格があるよ、リウ。」
アシットは、横にたつベータを横目で見ながら、そう言った。
「だが、サルザリウの迷宮はいささか特殊でね。どんな迷宮なのか、説明してやってくれるか、ベータ。」
「簡単に言ってしまえば、転移陣が設置された小部屋が続く迷宮よ。」
ベータは、カザリームで育っただけあって、ここの迷宮のことはくわしいようだ。
「どこにどう飛ばされるのか。そもそも、すべての移動が転移によって行われる以上、部屋がいくつあるのか、どうつながっているのか、そもそもつながっていないか・・・まったくの不明。
一定の法則性があって、そこに存在するのは、同時に一対の敵味方同士のみ。そして、部屋を脱出するには、相手を倒すしかない・・・とまあ、そんな具合ね。
通常は、魔物が待ち構えているのだけれど、もし、事前にコアを掌握されてしまっていたりすると、待ち構えているのは、ドゥルノ・アゴン一味でしょう。」
「まあ、それなりに公平な戦いはできそうじゃないか?」
とザックが言った。
彼としては、この迷宮が大いに気に入った。リウと違って、大っぴらに正体をばらしたくない彼としては、一対一で、戦えるのは好ましかったのだ。
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