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クローディア大公の結婚式
神子殺しの真相
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新興国の主を、名目だけでも臣下におくため、爵位と土地を与える=よくある。
さらにご機嫌をとるため、その結婚式を帝都でとりおこなう=まあ、ある。
その仕切りを平民でしかも他国のものにやらせる=そのものがよほど優秀ならありうる。
その席上で要人の暗殺が計画されている=ありえない。
仕切りをしている者は、その暗殺組織の知り合いである=ぜったい、ない。
式の出し物は、竜人と天使憑きの試合である=ぜったいぜったいぜったい、ありえない。
「興味があるって、まさか、試合に自分ででるつもりではないでしょうね?」
アウデリアの目がギラりと光った。
「試合! なんだそれは。」
しまった、とドロシーは思った。
アウデリアには、まだハロルド閣下の暗殺計画までで、ギウリーク特務戦力の対抗戦の話は伝わっていなかったのだ。
なんとか誤魔化そうとしたが。
アウデリアの白い犬歯をみて、わかった。
……正直に話をしないと喰われる。
案の定。
アウデリアは、これまでギウリークの特務戦力として名を馳せていた「聖竜師団」と「天使憑き」の対抗戦を、ものすごく喜んだ。
そして、ドロシーが心配した通り、自分も出場するのだと言い出した。
結婚式の出し物が血なまぐさいものになるのは、まあ、北の蛮族だからしかたない、と思おう。
でも、花嫁がそれに出陣する?
ない。
ないないない。
ないないないないないない。
ないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないない。
「アウデリアよ、ドロシーが困っている。」
見かねて、クローディア陛下が口を挟んだ。
「花嫁が真っ先に武張ったことをしてどうする。」
あ、ありがとうございます、クローディア陛下。
「大将か…いやレクス殿の出番を削いでは悪いから、副将あたりにしてもらおう。」
前言撤回。
陛下。
あんたもですか。
「しかし、よく打ち明けてくれたぞ、ドロシー。もし、式の当日にこれを知ったら、飛び入りで、とか言い出すに決まっておる。前もってわかっているからこそ、調整もきく、というものだ。」
ああ、そうですか。
ちょっと投げやりになったドロシーは、お茶でもいれましょう、と言って立ち上がった。
「アウデリアが、仕掛け屋に会ったそうだ。」
最前線で、万の軍を叱咤している所しか想像できない将軍は、意外にも優美な手つきで、香り高い茶のカップを手に取った。
「神子ハロルド閣下への“仕掛け”を請け負ったのだが、裏をとっている間にいろいろ妙なところが、出てきたという。」
なんで、結婚を控えた花嫁が、仕掛け屋と会ってるんでしょうか?
ドロシーは、その言葉を口には出さなかったが、目つきだけで、アウデリアには分かってしまったらしい。
「まあ、そう睨むな。まったくの偶然だ。
わたしが、盗賊に占拠されたレストランの解体を依頼されていたところに、たまたま、ナザクたちがやってきてな。」
「なんで、クローディア大公の花嫁になるお方が、盗賊討伐なんかやってるんですか!?」
「まあ、なんというか。なかなか式場も決まらぬし、退屈なので、銀級冒険者としての自分を優先してみたのだ。」
非難するような目で、思わずクローディア陛下を睨んだが、陛下は鷹揚に笑った。
「ガルフィート伯爵やハロルド閣下と、一献酌み交わす機会があってな。」
一国の支配者がなにをやって、
ああ、それは別にいいのか。
「アウデリアからの話をきいて、どうも状況が見えてきたので、仕掛け屋たちに繋ぎをとってほしいのだ。」
一国の支配者が殺し屋と会いたい?
……うん、ギリありうるかもしれない。
「神子殺しの意味とほんとうの依頼人、ですか?」
「意味は、神子という制度をもう無くすこと。依頼したのは、ハロルド閣下とアライアス侯爵の両方だ。」
ない。
それはない。
ドロシーは、首を振った。
神子が、元妻と協力して自分を殺させようとしたと言うの?
ありえない。ありえない。絶対にありえない。
さらにご機嫌をとるため、その結婚式を帝都でとりおこなう=まあ、ある。
その仕切りを平民でしかも他国のものにやらせる=そのものがよほど優秀ならありうる。
その席上で要人の暗殺が計画されている=ありえない。
仕切りをしている者は、その暗殺組織の知り合いである=ぜったい、ない。
式の出し物は、竜人と天使憑きの試合である=ぜったいぜったいぜったい、ありえない。
「興味があるって、まさか、試合に自分ででるつもりではないでしょうね?」
アウデリアの目がギラりと光った。
「試合! なんだそれは。」
しまった、とドロシーは思った。
アウデリアには、まだハロルド閣下の暗殺計画までで、ギウリーク特務戦力の対抗戦の話は伝わっていなかったのだ。
なんとか誤魔化そうとしたが。
アウデリアの白い犬歯をみて、わかった。
……正直に話をしないと喰われる。
案の定。
アウデリアは、これまでギウリークの特務戦力として名を馳せていた「聖竜師団」と「天使憑き」の対抗戦を、ものすごく喜んだ。
そして、ドロシーが心配した通り、自分も出場するのだと言い出した。
結婚式の出し物が血なまぐさいものになるのは、まあ、北の蛮族だからしかたない、と思おう。
でも、花嫁がそれに出陣する?
ない。
ないないない。
ないないないないないない。
ないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないない。
「アウデリアよ、ドロシーが困っている。」
見かねて、クローディア陛下が口を挟んだ。
「花嫁が真っ先に武張ったことをしてどうする。」
あ、ありがとうございます、クローディア陛下。
「大将か…いやレクス殿の出番を削いでは悪いから、副将あたりにしてもらおう。」
前言撤回。
陛下。
あんたもですか。
「しかし、よく打ち明けてくれたぞ、ドロシー。もし、式の当日にこれを知ったら、飛び入りで、とか言い出すに決まっておる。前もってわかっているからこそ、調整もきく、というものだ。」
ああ、そうですか。
ちょっと投げやりになったドロシーは、お茶でもいれましょう、と言って立ち上がった。
「アウデリアが、仕掛け屋に会ったそうだ。」
最前線で、万の軍を叱咤している所しか想像できない将軍は、意外にも優美な手つきで、香り高い茶のカップを手に取った。
「神子ハロルド閣下への“仕掛け”を請け負ったのだが、裏をとっている間にいろいろ妙なところが、出てきたという。」
なんで、結婚を控えた花嫁が、仕掛け屋と会ってるんでしょうか?
ドロシーは、その言葉を口には出さなかったが、目つきだけで、アウデリアには分かってしまったらしい。
「まあ、そう睨むな。まったくの偶然だ。
わたしが、盗賊に占拠されたレストランの解体を依頼されていたところに、たまたま、ナザクたちがやってきてな。」
「なんで、クローディア大公の花嫁になるお方が、盗賊討伐なんかやってるんですか!?」
「まあ、なんというか。なかなか式場も決まらぬし、退屈なので、銀級冒険者としての自分を優先してみたのだ。」
非難するような目で、思わずクローディア陛下を睨んだが、陛下は鷹揚に笑った。
「ガルフィート伯爵やハロルド閣下と、一献酌み交わす機会があってな。」
一国の支配者がなにをやって、
ああ、それは別にいいのか。
「アウデリアからの話をきいて、どうも状況が見えてきたので、仕掛け屋たちに繋ぎをとってほしいのだ。」
一国の支配者が殺し屋と会いたい?
……うん、ギリありうるかもしれない。
「神子殺しの意味とほんとうの依頼人、ですか?」
「意味は、神子という制度をもう無くすこと。依頼したのは、ハロルド閣下とアライアス侯爵の両方だ。」
ない。
それはない。
ドロシーは、首を振った。
神子が、元妻と協力して自分を殺させようとしたと言うの?
ありえない。ありえない。絶対にありえない。
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主人公?の王子がヌルヌルとつかみどころがない人格なのもなんだか新鮮で大好きです!
右住局説って紆余曲折(うよきょくせつ)の誤字なんだろうか……
たぶん、右往左往と紆余曲折の混じった造語です。
ご指摘ありがとうございます。修正いたしました!