婚約破棄で終わらない! 策謀家王子と腕力家公爵令嬢 チートな二人のそれからはじまる物語り

此寺 美津己

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クローディア大公の結婚式

トラブル愛好家たち

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ドロシーは、端的に言って困っていた。
完全にガルフィート伯爵やアライアス侯爵は、彼女を過大評価している。
ドロシーは、思った。たぶん自分、決まりきった事務仕事を効率よく片付けていくことに才能があるのだ。
間違っても、王侯貴族の結婚を取り仕切ったり、いや、そこまではいい。
だが、そこに神子の暗殺やら、竜と天使の対抗戦などをイベントとして、組み込むのは勘弁してもらいたい。

まあ、いい。
ある程度、開き直らないとどうにもならない事はある。
ドロシーは、問題点、というか彼女に任せられた業務を書き出した。

まず、クローディア大公とアウデリアさまの結婚式と披露宴。
これは、落ち着いて考えてみれば、場所の問題だけだった。
もともとは、ミトラ大聖堂で行われるはずだったのを、その大聖堂が壊れた、いや、はっきり言おう。

ギムリウスが壊してしまった。
もちろん、かの大神獣にも言い分はあるだろう。
ルトとフィオリナの結婚。
それについては、ドロシーの知る神々がこぞって反対していた案件なのだ。

もっとも、ドロシーが面識のある神は、アウデリア様とアキルしかいなかったが。


彼女たちは、ルトとフィオリナの結婚を延期させるために、尽力したのだ。
ギムリウスの大聖堂破壊もその一環である。もちろん良識の固まりのギムリウスは、うっかり区画ごと踏み潰してしまう心配のある「本体」は呼ばなかった。
呼んだのは、ギムリウスの軍団のなかでも、解体作業に適した蜘蛛たちである。

もちろん、事前に承認を取ったわけではないので、抵抗にあった。
結果、大聖堂は半壊ですんだのであるが、かろうじて、屋根と壁の一部が残っている建造物で、結婚式を執り行うのができないのは明らかだった。

式次第とパーティー会場を別に設ける。

これで、この問題は解決しそうだった。
加えて。天使と竜の果たし合い。

天使は、誰か人間の体を媒介に、天使を下ろすのだろう。竜人のほうはもちろん人間の姿だから、うん、ならば、どこかのスタジアムで十分だろう。
もし、最悪のケース。
レクスが自分も出場すると言い出したとしても、人型の戦いなら。
うん、十分だろう。

ならば、神子ハロルドの暗殺の件はどうだろうか。

これは、「裏」をとるために、ドロシー自身も活動中である。ハロルドは、もとアライアス侯爵家の入婿で、親戚一同から邪魔者扱いされ、暗殺されかけたところに、神子の話をもちかけられ、渡りに船と飛びついた。
アライアス侯爵としては。なっとくしにくい部分もあるだろうが、少なくとも、殺したいほど、ハロルドが憎い、というのとは違うようだ。
ならば、なぜ、アライアスは、ハロルド暗殺を「仕掛け屋」に依頼したのか。

考えられるのは、アライアス自身が語ったよつに「神子」という制度自体をぶち壊すことが目的、ということ。
「神子」は「神子」である限り不死、というのが教皇庁のスローガンだから、多くのものが見守る中で、神子を暗殺すれば、その権威と「神子」という制度そのものに、大きなダメージが与えられるだろう。

しかし、なぜいま。
それが、わからない。

ドロシーは真剣に、自分の世界に没入していたので、外はかなり、日も落ちて、執事がドアをノックするまで、時後経つのにも気がつかなかった。

「ドロシー様。」
先ほどとは、うってかわって、その声には明らかに畏怖の響きがある。

聖竜師団の顧問が、ほんものの古竜であることは、彼のような立場なら当然、知っている。
その古竜と、親しげに話したドロシーをただ者ではないと。
そう、思っているのだろう。

「はい、おります。」
ドロシーは立ち上がった。
「夕食のお時間にはまだ、早いような。」

「お客様です。」
「先触れもなしに? どなたです。
わたしは、クローディア大公のご結婚の準備のため、これからいくつか手紙をしたたまなければならないのですが…」
「ならば、ちょうどよかった。」
執事は、ほっと安心したように言った。

「ご来客は、まさにそのクローディア大公陛下ご夫妻です。」

レクスから、竜人と天使の試合を演し物として要求されていたドロシーは、これ以上大変なことはもう怒らない。
そう確信した。

だが、往々にしてこの手の思い込みはまだ早いのだ。

「よう、ドロシー。」
アウデリアは、嬉しそうに、笑いかけてきた。
「話はきいたぞ。面白そうなことに関わってるな。わたしにも一枚かませろ。」

「え! まさか、アウデリアさまがご自身も、竜人と天使の対抗戦に、お出になると!?」

「え?」
アウデリアのめが丸くなった。

「…いえ、レクスさまから、お聞きになっまのでは?」
「違う。わたしがきいたのは、ナザクからで、結婚式を利用して神子ハロルドを暗殺しようとする……。」
「ああ、そっち?」
「そっちも、だ。」

アウデリアが打ち付けた両方な拳が、ゴンと音を立てた。

「楽しみなイベントが盛りだくさんだな。はて、わたしはどうすればいいのかな?」


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