婚約破棄で終わらない! 策謀家王子と腕力家公爵令嬢 チートな二人のそれからはじまる物語り

此寺 美津己

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クローディア大公の結婚式

神子の憂鬱

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改めて誓おう。
わたしは、おまえにすべてを与える。
何が欲しいか言ってみろ。

富か。
名誉か。
安定か。
いくらでもくれてやる。

おまえが望むものはなんだ?

あの女との生活か?
いいだろう。
わたしは、すべてほ頚木から、おまえを解き放つことが出来る。

世俗の。
いや、神が定めたルールでさえ、わたしにとっては意味が無い。

わたしとともに来い。
わたしを受け入れ、わたしともに歩むがいい。

わたしは、ヴァルゴールなどという邪神とは違う。
従うならば然るべき、報酬をもって報いることを約束しよう。

ハロルドは、全身を汗に塗れて、飛び起きた。
身体に入れられた見えない刺青が、火のように熱い。
刺青は、神封じの呪いだ。

聖光教の最高峰の魔道の粋を集めた神封じの刺青が、燃え盛っている。

ベッドの脇から、錠剤をとりだして、水と一緒に流し込んだ。
目が覚めてなお、聞こえるその声が、徐々に小さくなっていく。

体のほてりも収まりつつあった。

…危ないところだった。
薬が無ければ、押し切られていたかもしれない。

ベルを鳴らして、このことを報告しようと思ったが、その手を止める。
報告?
報告してどうなる。


神封じの技術にこれ以上のものはない。
もはや、為す術なしと、教皇庁幹部が判断すれば、ハロルドは速やかに神子を退位させられる。

普通なら、お役御免で、優雅に暮らすには充分な年金をもらって、寿命がつきるまで生きるのだが、ここまで侵食を受けた身ではそれもかなうまい。

何ヶ月かの幽閉のあと、命を取られて終わりだろう。

こんなことが。
ハロルドは、自嘲的な笑いを浮かべた。
歴史上、一度も起こったことのない音が起こりかけているのだ。

神子の身に、本当に神が降りようにしているなど!
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ご覧いただきありがとうございます。なんとか完結しました。彼らの物語はまだ続きます。後日談https://www.alphapolis.co.jp/novel/807186218/844632510
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