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クローディア大公の結婚式
銀雷と女侯爵
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アライアス侯爵は、ポットを取り上げて、みずからお茶をいれて、ドロシーにも、差し出した。
「これは」
恐縮して、ドロシーは縮こまる。親元が仕えていたランゴバルドの子爵家でもこんな厚遇はうけたことがなかった。
「わたしが、依頼をした神子のことだ。」
「ヘロデさまのお父様ですね。」
「そうだな、」
面白そうに、アライアスは笑った。
「わたしから話す前に、カイがどう話していたか聞いておこうか。いちいち齟齬があっては面倒だ。」
まず相手に話をさせて、充分な情報を聞き出してから、自分の話すべきことを決める。会話の基本ではあるが、アライアスは交渉相手としても油断ならない相手だった。
とは言え、話さない訳にはいかない。
このままでは、「仕掛け屋」の的は、アライアス侯爵になりかねないのだ。
「身分が釣り合わぬご結婚だと、伺いました。」
ドロシーは様子を伺いながら言った。
「辺境の騎士団に、所属していたと、自称してましたが、それもウソだったと。」
「カイのやつはよく喋る。」
アライアスはかおをしかめた。
「ああ、カイはガルフィートのファーストネームだ。わたしたちは幼なじみでな。
もともと、カイの飲み友達ということで、知り合ったのがハロルドとの馴れ初めだ。確かに、底の浅い嘘をずいぶんとぬかしていたよ。」
「騎士団のことですか?」
「そもそも、武道をなにひとつ習ったことがないことくらいは、立ち振る舞いを見ればすぐわかる。」
アライアスは昔を懐かしむように、天井を見上げた。
「わたしも、恋に恋している時分は、よく考えたものだ。身分は最低これこれ、どこぞの学校をある程度以上の成績で卒業し、剣の腕は流派の皆伝以上、なによりもわたしを一番に思い、なによりもわたしを大切にしてくれる・・・。」
浮かんだ笑いは、苦笑いか。
「いやはや!
いざ、恋に落ちてみると、そんなものはどうでも良くなったのだが、な。」
ドロシーは、侯爵閣下のあけすけなうち明け話に、若干ひきながらも尋ねた。
「その‥自分の理想とかけ離れた相手を好きになるものなのでしょうか?」
「その歳で、しかもなかなかの美形ではないか、ドロシー。」
「閣下!!」
「周りにひとがいないときは、ミーアと呼べ。許す。」
許すも何も、平民のドロシーには、気が重いだけなのだが、この手のことを自分が度量がある人間だということを見せつけるためにやる貴族は多い。そして、そういう奴らは言われた通りにしないと、へそを曲げるのだ、やっかいだ!
「ミーアさま、わたくしのことはさておき、ハロルドさまです。」
「ふむ? あのジウルとはいう拳士とは、どうやってしりあった? 歳もずいぶんと違うだろうに。」
「グランダ魔道院との対抗戦のおりに、ンわたしの試合相手になったのが、ジウルです。」
正直に答えているようで、真実は隠す。
「拳士として負け、師事いたしましたところから、引かれ合い、一時はともに旅もいたしましたが、いまは道を違えております。」
「ふむ?
ならば、この先、一緒になる予定は無いということか?」
「わたくしは、まだ冒険者学校の学生です。卒業したら、上級魔法学校に進学するつもりです。結婚は、そのあとです、ね。」
「堅実なような。そうでないような。」
アライアスは、クビを傾げて、ドロシーを見やった。
「ジウルというオトコは、そこまでおぬしを待ってくれるのか?」
「あ、いえ、違いますよ。結婚する相手は、わたしの幼なじみで、主家のお坊ちゃんです。いまは冒険者学校の同級生ですね。」
アライアスはわけがわからん、という顔をした。
「そこいらの、恋愛感情はどう働いているのだ?」
「結婚予定のマシューは、わたしがいないとなんにもできないので、これからもずっと支えてやりたいと思ってます。」
「ジウルは?」
「愛してはくれてるんでしょうが、対話だ足りてませんね。結局よくは分からずじまいでした。」
「なら、ハロルドのこともわかれ。」
アライエスは、笑みを含んでそう言う。
「当たり前に釣り合うだけが、恋愛の対象ではないのだ。。」
「これは」
恐縮して、ドロシーは縮こまる。親元が仕えていたランゴバルドの子爵家でもこんな厚遇はうけたことがなかった。
「わたしが、依頼をした神子のことだ。」
「ヘロデさまのお父様ですね。」
「そうだな、」
面白そうに、アライアスは笑った。
「わたしから話す前に、カイがどう話していたか聞いておこうか。いちいち齟齬があっては面倒だ。」
まず相手に話をさせて、充分な情報を聞き出してから、自分の話すべきことを決める。会話の基本ではあるが、アライアスは交渉相手としても油断ならない相手だった。
とは言え、話さない訳にはいかない。
このままでは、「仕掛け屋」の的は、アライアス侯爵になりかねないのだ。
「身分が釣り合わぬご結婚だと、伺いました。」
ドロシーは様子を伺いながら言った。
「辺境の騎士団に、所属していたと、自称してましたが、それもウソだったと。」
「カイのやつはよく喋る。」
アライアスはかおをしかめた。
「ああ、カイはガルフィートのファーストネームだ。わたしたちは幼なじみでな。
もともと、カイの飲み友達ということで、知り合ったのがハロルドとの馴れ初めだ。確かに、底の浅い嘘をずいぶんとぬかしていたよ。」
「騎士団のことですか?」
「そもそも、武道をなにひとつ習ったことがないことくらいは、立ち振る舞いを見ればすぐわかる。」
アライアスは昔を懐かしむように、天井を見上げた。
「わたしも、恋に恋している時分は、よく考えたものだ。身分は最低これこれ、どこぞの学校をある程度以上の成績で卒業し、剣の腕は流派の皆伝以上、なによりもわたしを一番に思い、なによりもわたしを大切にしてくれる・・・。」
浮かんだ笑いは、苦笑いか。
「いやはや!
いざ、恋に落ちてみると、そんなものはどうでも良くなったのだが、な。」
ドロシーは、侯爵閣下のあけすけなうち明け話に、若干ひきながらも尋ねた。
「その‥自分の理想とかけ離れた相手を好きになるものなのでしょうか?」
「その歳で、しかもなかなかの美形ではないか、ドロシー。」
「閣下!!」
「周りにひとがいないときは、ミーアと呼べ。許す。」
許すも何も、平民のドロシーには、気が重いだけなのだが、この手のことを自分が度量がある人間だということを見せつけるためにやる貴族は多い。そして、そういう奴らは言われた通りにしないと、へそを曲げるのだ、やっかいだ!
「ミーアさま、わたくしのことはさておき、ハロルドさまです。」
「ふむ? あのジウルとはいう拳士とは、どうやってしりあった? 歳もずいぶんと違うだろうに。」
「グランダ魔道院との対抗戦のおりに、ンわたしの試合相手になったのが、ジウルです。」
正直に答えているようで、真実は隠す。
「拳士として負け、師事いたしましたところから、引かれ合い、一時はともに旅もいたしましたが、いまは道を違えております。」
「ふむ?
ならば、この先、一緒になる予定は無いということか?」
「わたくしは、まだ冒険者学校の学生です。卒業したら、上級魔法学校に進学するつもりです。結婚は、そのあとです、ね。」
「堅実なような。そうでないような。」
アライアスは、クビを傾げて、ドロシーを見やった。
「ジウルというオトコは、そこまでおぬしを待ってくれるのか?」
「あ、いえ、違いますよ。結婚する相手は、わたしの幼なじみで、主家のお坊ちゃんです。いまは冒険者学校の同級生ですね。」
アライアスはわけがわからん、という顔をした。
「そこいらの、恋愛感情はどう働いているのだ?」
「結婚予定のマシューは、わたしがいないとなんにもできないので、これからもずっと支えてやりたいと思ってます。」
「ジウルは?」
「愛してはくれてるんでしょうが、対話だ足りてませんね。結局よくは分からずじまいでした。」
「なら、ハロルドのこともわかれ。」
アライエスは、笑みを含んでそう言う。
「当たり前に釣り合うだけが、恋愛の対象ではないのだ。。」
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ご覧いただきありがとうございます。なんとか完結しました。彼らの物語はまだ続きます。後日談https://www.alphapolis.co.jp/novel/807186218/844632510
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