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クローディア大公の結婚式
神獣のお迎え
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「目が覚めたか?」
目が覚めて、愛しい男の顔を、至近距離に見ることになったドロシーは、悲鳴を噛み殺した。
「ジウルっ!」
素裸のドロシーは、胸元をシーツで覆った。
「寝顔をジロジロ見ないでって、お願いしたでしょ?」
「久しぶりだったからな。」
ひとつ指摘しておくが、二人の逢瀬は、ほんの十日ばかりぶりである。
「寂しかったか?」
「別れた相手になに言ってるのよ?」
シーツが捲られた。
はい、R18。
激しい喘ぎと、湿った音は短時間で終わった。
断っておくが、昨晩からカウントすれば5度目である。
フィオナリナ辺りなら、「相性がいい」の一言で終わられせそうであるが、仲の良いふたりではあった。
「ジウルっ!」
ドロシーは、口元を拭いながら抗議した。
「わたし、この前、18歳になったんだよっ!」
「そうだったな。誕生日と、それから成人
おめでとう。」
まじめくさった顔で、ジウルは、綺麗に包装された小箱を取り出した。
「いや、違う。違うんです、ジウル。わたしって、
そんなことを言いたいんではなくって…ありがと。」
頬を赤らめて、ドロシーは匣を受け取った。
見つめ合う視線のなかで、6戦めが始まりそうだったが、ひょっこりと、女の子とも男の子ともつかぬ美貌の生き物が、顔を出した。
「そろそろ、ドロシーを返してもらってよろしいでしょうか?」
「ギムリウスっ!」
はい、そうですが。
ギムリウスは、やや強ばった顔で、そう答えた。
フィオナリナとリウのせいで、男女の営みごとに、嫌悪感をいだくようになっていたギムリウスは、正直、辟易しながら、ジウルとドロシーを眺めていたのだ。
とりあえず、礼儀正しいギムリウスは、途中で声を掛けるようなまねはしなかった。
それだけに、忍耐力の試される使命だったのだ、これは。
「クローディア陛下の結婚式の件で、アライアス侯爵が相談したいそうです。」
出来るだけ、無表情に見えるように、顔の筋肉をコントロールしながら、神獣は言った。
「わたしと一緒に、ミトラに戻ってください。そもそも、いまここに居ていい人物ではないでしょう、あなたは。」
ドロシーは、ジウルからのプレゼントを胸にだいて、後ずさりした。
何度となく、殺されかけたギムリウスだが、いまの彼女が群を抜いて怖かった。
「さあ」
ギムリウスは手を差し伸べたが、ドロシーはその手を取らずにいやいやをした。
ギムリウスの顔が顰められた。
この神獣の義体は、実に優れている。
ギムリウスの気持ち、感情をほんとうにそのまま、表情にのせることができる。だから、ギムリウスはほんとうに、イライラしているのだ。
「すまんな、階層主どの。」
素直にジウルは、頭を下げた。
「思いもかけずに、手をかけることになった。ドロシーを責めないでやって欲しい。俺が無理に読んだのだ。」
あなた方が、素粒子になってこないことで、それはお分かりだと思う、と律儀な蜘蛛は答えた。
目が覚めて、愛しい男の顔を、至近距離に見ることになったドロシーは、悲鳴を噛み殺した。
「ジウルっ!」
素裸のドロシーは、胸元をシーツで覆った。
「寝顔をジロジロ見ないでって、お願いしたでしょ?」
「久しぶりだったからな。」
ひとつ指摘しておくが、二人の逢瀬は、ほんの十日ばかりぶりである。
「寂しかったか?」
「別れた相手になに言ってるのよ?」
シーツが捲られた。
はい、R18。
激しい喘ぎと、湿った音は短時間で終わった。
断っておくが、昨晩からカウントすれば5度目である。
フィオナリナ辺りなら、「相性がいい」の一言で終わられせそうであるが、仲の良いふたりではあった。
「ジウルっ!」
ドロシーは、口元を拭いながら抗議した。
「わたし、この前、18歳になったんだよっ!」
「そうだったな。誕生日と、それから成人
おめでとう。」
まじめくさった顔で、ジウルは、綺麗に包装された小箱を取り出した。
「いや、違う。違うんです、ジウル。わたしって、
そんなことを言いたいんではなくって…ありがと。」
頬を赤らめて、ドロシーは匣を受け取った。
見つめ合う視線のなかで、6戦めが始まりそうだったが、ひょっこりと、女の子とも男の子ともつかぬ美貌の生き物が、顔を出した。
「そろそろ、ドロシーを返してもらってよろしいでしょうか?」
「ギムリウスっ!」
はい、そうですが。
ギムリウスは、やや強ばった顔で、そう答えた。
フィオナリナとリウのせいで、男女の営みごとに、嫌悪感をいだくようになっていたギムリウスは、正直、辟易しながら、ジウルとドロシーを眺めていたのだ。
とりあえず、礼儀正しいギムリウスは、途中で声を掛けるようなまねはしなかった。
それだけに、忍耐力の試される使命だったのだ、これは。
「クローディア陛下の結婚式の件で、アライアス侯爵が相談したいそうです。」
出来るだけ、無表情に見えるように、顔の筋肉をコントロールしながら、神獣は言った。
「わたしと一緒に、ミトラに戻ってください。そもそも、いまここに居ていい人物ではないでしょう、あなたは。」
ドロシーは、ジウルからのプレゼントを胸にだいて、後ずさりした。
何度となく、殺されかけたギムリウスだが、いまの彼女が群を抜いて怖かった。
「さあ」
ギムリウスは手を差し伸べたが、ドロシーはその手を取らずにいやいやをした。
ギムリウスの顔が顰められた。
この神獣の義体は、実に優れている。
ギムリウスの気持ち、感情をほんとうにそのまま、表情にのせることができる。だから、ギムリウスはほんとうに、イライラしているのだ。
「すまんな、階層主どの。」
素直にジウルは、頭を下げた。
「思いもかけずに、手をかけることになった。ドロシーを責めないでやって欲しい。俺が無理に読んだのだ。」
あなた方が、素粒子になってこないことで、それはお分かりだと思う、と律儀な蜘蛛は答えた。
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ご覧いただきありがとうございます。なんとか完結しました。彼らの物語はまだ続きます。後日談https://www.alphapolis.co.jp/novel/807186218/844632510
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