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魔道院始末

魔道院始末

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剣は金属なので、雷撃系の魔法にはなかなか立ち回りが難しい。
それこそ、達人と言われる域に達するものなら「雷」を「切る」ことさえ可能になるのだが。
その域まで達するものは、剣を志したもののうち、百に一人か千人に一人か。

ジウル・ボルテックが幼き日に薫陶したアフラだが、まだ若い。剣は王立学院の授業で学んだ程度だ。そこまでの域に達しているはずもない。
剣を介した電流は。アフラの体を痙攣させ。
当然のように、至近距離でそのような魔法を使ったヤンのまた同様のダメージを受けた。

両者失神による戦闘不能。
絵に描いたような「引き分け」であった。

「おまえもずいぶんな技を仕込んだな。」
ジウルは、シホウを責めるような口調だ。
「完全な自爆技だ。ドロシーは・・・・特殊な防護服でそれを可能にしているのだが、単純に術者の方にダメージが大きい。」
「正々堂々と、正面からやりあって、斬り殺されるという選択肢は、俺にはないので、な。」

シホウはでかい肩をすくめて見せた。

「お主の弟子の『銀雷の魔女』ドロシーの戦い方を真似てみたのだ。」
「だからと言って・・・・」
「ヤンはな。」
シホウは困ったように言った。
「もともと体も弱く、性格もおとなしかったために、子どもの時分はよく虐められていたらしい。少し年齢がいって魔法に才能があることが見出されて、魔道院に進学してみたが、そこでは、同じ程度の秀才は山ほど転がっている世界だったそうだ。
その時がやはりいちばん、絶望したものだ、とやつは言っていた。」

「ふむ。」
顰め面のジウルだが、待つ程もなく、シホウが続けた。
「自傷癖、があるらしい。」
「・・・」
おいおい、まさか。
この自爆技が、ヤンの個性にぴったりの技だった、とそういうことか?

「戦いたくないものも、世の中にはいる。それはそれで、ひとつの分野が苦手なだけで有用な人材には違いない。
逆に言えば、苦手な分野があるだけで、その人物を否定することがないように心がけたいな。まして、教育機関ならば。」

「シホウ!」
ジウルは、シホウの丸っこくてぶっとい腕を握りしめた。
「おぬし、魔道院で教職につく気は無いか?」
「俺もおまえも鉄道公社の『絶士』でだな。」
シホウは忘れているだろうことを思い出させてやる。
「いまは、特に任務のない期間なのでこうして、のんびりも、していられるが、ほかの職に付けるほど暇ではないぞ。」

「魔剣研究会と魔道拳法研究会の対抗戦は、二勝二敗一分。すなわち、引き分け、とする。」
ジャイロの声が響く。

「わたしも戦わせてください!」
魔剣研究会のひとりが叫んだ。
「試合にも出られないまま、解散なんてあんまりです。」

「ならば、部員の多さにものを言わせて、力づくで、魔法拳法研究会を圧倒して勝ちとするが?」
「同じ相手が何度でも出場すればよいのではありませんか。
魔法拳法研究会は誰ひとり、負傷すらしてないんですか・・・ら・・・」
魔剣研究会のものは、押し黙った。
言っていて気がついたらしい。

「そうだな、星の数は互角でも、実力差はかなりありそうだ。どうです? ジウル先生、シホウ先生。魔剣研究会は、続きを所望しておられるようですが。」

ジウルは嬉々として、シホウはのっそりと、ヨウィスとドロシーはいやいや立ち上がった。
どういうわけか、エビオネルも立ち上がった。
「なんでおまえが?」
「わたしもこっちに付くよ!」
エビオネルは、宣言した。
顔色を変えたものが、魔剣研究会に多いのは、エピオネルの正体が、古竜エピオネルであることを知っていたからだろう。

「だいたい、30対5、と言うところだな。」
ジャイロは皮肉たっぷりに言った。
「数は適正だろう。魔法拳法研究会さえ良ければ、試合を続けようか?
ただし、時も移るので、集団戦とさせてもらう。」

ぞろぞろと、ジウルたちは闘技場におりた。
魔剣研究会の、ものたちはうごかない。、誰一人として。

「戦いの続きはなし・・・・だな。よろしい・
ならば、今回の対抗戦をもって、魔法拳法研究会は解散とする。」

え?

「おいっ!」
静まり返った会場に、シホウの怒声が響いた。
「いったいどうなっている!?
なぜ、我々が解散せねばならんのだ!」
「二十日間かかって部員をひとりしか集められないからですぞ、シホウ先生。」
ジャイロは淡々と答えた。
「二人の実践での技量、そしてヤンをここまで育て上げた指導力には感服いたしましたが、なにしろ生徒をあつめられないのですから、問題外です、な。」

「しかし!」
「魔剣研究会のほうもいささか、育成方針に問題があるのとは言うまでもない。いかなる事情があるにせよ、魔道院外部から応援をもらってのこの体たらく。」
ジャイロは、わざとらしくため息をついた。
「ここは、負傷したアレフザート先生にかわり、魔剣研究会の顧問として、ジウル、シホウ両先生に刷新の意味も兼ねて、顧問に就任いただきたい。いかがです?」

なるほど。
そうきたか。
ジウルは、内心でにやりと笑った。
ジャイロは。
ここ10数年は、彼の腹心と行っても良い存在だったのだ。
そして、その期待を裏切られたことはほとんどなかった。
     
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