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魔道院始末
魔拳士、敗れる
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竜は人とは存在の次元が違うのだと、古竜たちは言う。
まあ、わたし位になればそうとも言えるのだか、とアモンあたりならば言うだろう。
そこいら辺を、歩いたり這いずったり飛んだりしている育ちすぎの蜥蜴にいちいちそこまで高い評価をしてやる必要があるだろうか?
エピオネルは、咆哮をあげて立ち上がった。
やられた。
まんまとしてやられた。
目の前の男は強い。とほうもなく強い。
素手で竜鱗を破砕する力を持っている。それを正確に打ち込むための工夫もしている。
魔力をこめた打撃をうつためには、事前に、独特の呼吸とためが必要だと錯覚させ、見事な一撃を打ち込んだ。
あのまま、エピオネルが、回避に徹していれば、戦いはこう着状態になっていたはずだ。回避を優先すれば、いかに憲法の達人とはいえエピオネルに有効な打撃を打ち込めたとは思えない。
だから、スキを作った。
正確には、スキでもないものをスキだと錯覚させた。
攻撃に転じようとした、エピオネルは、魔力を乗せた打撃をモロに喰らったのだ。
強い。
だが、エピオネルは竜だった。
その耐久力。回復力についても人間の比ではない。
竜族の一部には、防御力に自信を持つあまり、本来備わった耐久力、回復力のリソースを、ほかに展開してしまう者も少なくなかったが、エピオネルは、その愚は犯さなかった。
ダメージは大きい。
魔法による攻撃は、信じられないことだが、ジウル・ボルテックに一日の長があるようだった。
魔法の制御の奪取。放たれた攻撃魔法を転移させる。
そんな高等技術を、いつ、誰を相手に磨いていたのだろうか。
かといって、肉弾戦は危うい。今の魔力撃をもう一発喰らったら、もう立てないだろう。そんな確信がエピオネルにはあった。
また、よろめく四肢では、今までのようなフットワークで、攻撃を交わし続けることも不可能に近い。
だが、エピオネルにはまだ切り札ど言うべき攻撃手段があった。
バリバリ。
音を立てて、口が耳まで裂けた。頬の肉が裂け、血が滴る。
歯の配列は、先ほど噛み付き攻撃を行うため、竜の顎の配列に戻っている。
それを魔法陣にみたてて、放射系の魔法攻撃を行う。
これが竜の最大の攻撃『ブレス』だった。
完全に遮断する障壁はない。
位相を移してなお、ダメージが通る。
絶対無敵、防御不能の攻撃それが、竜のブレスだった。
避ければ?
だか、そうすればジウルの背後の仲間たちが巻き込まれる。
“降参しろ、ジウル・ボルテック。おまえはよく戦った。 ”
エピオネルは、念話で呼びかけた。
心からの呼びかけだつた。
彼女の雇い主の要求には、彼を抹殺することも含まれていたが、このような優れた個体をここで殺してしまうのは、忍びなかった。
相手は、笑った。
回避行動はとらない。防御の障壁も展開しない。
ただ、そのまま、踏み込んできた。
わずかなブレス発射までのタイムラグ。それを使ってあの、魔力をこめた一撃を叩き込もうと、いうのか。
相打ち。いや、たとえ先ほどと同等の打撃でもエピオネルの命まではたてない。
一方、彼女のブレスは、拳士の体を跡形もなく消滅させるだろう。
最後までたっていたものが勝ちだ。
偉大なる魔導師にして、拳士よ。
わたしはおまえのことを末永く語り継ごう。
ジウルの指先が、エピオネルの肩先に触れた。
構わず、プレスを発射。
彼女のブレスは、光の放流となる全面にあるものを、すべて飲み込み、砕き、分解していく。
その先には。
何も無い。
ただ蒼穹の空が広がっていた。そこにただ光が突き抜けていく。行く手にあった、もくもくとした雲が破裂するように消滅した。
空に向かって。
光の放流は伸びて。
キラキラと、粒子を撒いて、消えていった。
「すごいな、おまえのブレスは。」
のんびりした声は背後から聞こえた。
振り返ったエピオネルの、目の前にグランダの街が見下ろすように広がっていた。
ブレス攻撃の瞬間に、外に転移させられたのだ。
呆然とするエピオネルの腹部に、もう一度、魔道の拳が炸裂した。
「勝者エピオネル。」
失神したエピオネルをかついで、再び闘技場に、転移で舞い戻ったジウルに、ジャイロは非情に告げた。
「な、なんで」
「故意に場外に出るのは反則です。いまの転移魔法はジウル殿のものですね?」
「い、いや、そうだが」
「なので、ジウル殿の場外負けです。」
「な、な、な、なんなのですか! あのジウル・ボルテックという拳士はっ!
あの転移魔法は、あれはまるで、ボルテック総帥の・・・」
「ああ、シライシ先生。あなたは、ボルテック卿が退任されてからの採用でしたな。」
ジャイロは、若い教師が、震えるのを慰めた。
「とにかく、ボルテック卿は勝手なお人で。」
ふうっと、ため息をついた。
「何かの拍子に若返ってしまって、その説明を我々やグランダ王国に対してするのが、面倒臭いという理由で、若い頃に熱中した拳の道に戻ることにしたらしいのだよ。
本人のひひ孫とか名乗って、な。」
「そ、そ、それは皆さん知っていたのですか?」
「まあ、古株の教師、職員はそんなことじゃないか、と思っているよ。残りも薄々は勘づいているんじゃないかな。
全く。」
闘技場で、なおも抗議を続けるジウル・ボルテックに、ジャイロは叫んだ。
「これで決着です。これ以上抗議するなら次の試合も没収して、魔剣研究会の勝利とさせていただきますが?」
まあ、わたし位になればそうとも言えるのだか、とアモンあたりならば言うだろう。
そこいら辺を、歩いたり這いずったり飛んだりしている育ちすぎの蜥蜴にいちいちそこまで高い評価をしてやる必要があるだろうか?
エピオネルは、咆哮をあげて立ち上がった。
やられた。
まんまとしてやられた。
目の前の男は強い。とほうもなく強い。
素手で竜鱗を破砕する力を持っている。それを正確に打ち込むための工夫もしている。
魔力をこめた打撃をうつためには、事前に、独特の呼吸とためが必要だと錯覚させ、見事な一撃を打ち込んだ。
あのまま、エピオネルが、回避に徹していれば、戦いはこう着状態になっていたはずだ。回避を優先すれば、いかに憲法の達人とはいえエピオネルに有効な打撃を打ち込めたとは思えない。
だから、スキを作った。
正確には、スキでもないものをスキだと錯覚させた。
攻撃に転じようとした、エピオネルは、魔力を乗せた打撃をモロに喰らったのだ。
強い。
だが、エピオネルは竜だった。
その耐久力。回復力についても人間の比ではない。
竜族の一部には、防御力に自信を持つあまり、本来備わった耐久力、回復力のリソースを、ほかに展開してしまう者も少なくなかったが、エピオネルは、その愚は犯さなかった。
ダメージは大きい。
魔法による攻撃は、信じられないことだが、ジウル・ボルテックに一日の長があるようだった。
魔法の制御の奪取。放たれた攻撃魔法を転移させる。
そんな高等技術を、いつ、誰を相手に磨いていたのだろうか。
かといって、肉弾戦は危うい。今の魔力撃をもう一発喰らったら、もう立てないだろう。そんな確信がエピオネルにはあった。
また、よろめく四肢では、今までのようなフットワークで、攻撃を交わし続けることも不可能に近い。
だが、エピオネルにはまだ切り札ど言うべき攻撃手段があった。
バリバリ。
音を立てて、口が耳まで裂けた。頬の肉が裂け、血が滴る。
歯の配列は、先ほど噛み付き攻撃を行うため、竜の顎の配列に戻っている。
それを魔法陣にみたてて、放射系の魔法攻撃を行う。
これが竜の最大の攻撃『ブレス』だった。
完全に遮断する障壁はない。
位相を移してなお、ダメージが通る。
絶対無敵、防御不能の攻撃それが、竜のブレスだった。
避ければ?
だか、そうすればジウルの背後の仲間たちが巻き込まれる。
“降参しろ、ジウル・ボルテック。おまえはよく戦った。 ”
エピオネルは、念話で呼びかけた。
心からの呼びかけだつた。
彼女の雇い主の要求には、彼を抹殺することも含まれていたが、このような優れた個体をここで殺してしまうのは、忍びなかった。
相手は、笑った。
回避行動はとらない。防御の障壁も展開しない。
ただ、そのまま、踏み込んできた。
わずかなブレス発射までのタイムラグ。それを使ってあの、魔力をこめた一撃を叩き込もうと、いうのか。
相打ち。いや、たとえ先ほどと同等の打撃でもエピオネルの命まではたてない。
一方、彼女のブレスは、拳士の体を跡形もなく消滅させるだろう。
最後までたっていたものが勝ちだ。
偉大なる魔導師にして、拳士よ。
わたしはおまえのことを末永く語り継ごう。
ジウルの指先が、エピオネルの肩先に触れた。
構わず、プレスを発射。
彼女のブレスは、光の放流となる全面にあるものを、すべて飲み込み、砕き、分解していく。
その先には。
何も無い。
ただ蒼穹の空が広がっていた。そこにただ光が突き抜けていく。行く手にあった、もくもくとした雲が破裂するように消滅した。
空に向かって。
光の放流は伸びて。
キラキラと、粒子を撒いて、消えていった。
「すごいな、おまえのブレスは。」
のんびりした声は背後から聞こえた。
振り返ったエピオネルの、目の前にグランダの街が見下ろすように広がっていた。
ブレス攻撃の瞬間に、外に転移させられたのだ。
呆然とするエピオネルの腹部に、もう一度、魔道の拳が炸裂した。
「勝者エピオネル。」
失神したエピオネルをかついで、再び闘技場に、転移で舞い戻ったジウルに、ジャイロは非情に告げた。
「な、なんで」
「故意に場外に出るのは反則です。いまの転移魔法はジウル殿のものですね?」
「い、いや、そうだが」
「なので、ジウル殿の場外負けです。」
「な、な、な、なんなのですか! あのジウル・ボルテックという拳士はっ!
あの転移魔法は、あれはまるで、ボルテック総帥の・・・」
「ああ、シライシ先生。あなたは、ボルテック卿が退任されてからの採用でしたな。」
ジャイロは、若い教師が、震えるのを慰めた。
「とにかく、ボルテック卿は勝手なお人で。」
ふうっと、ため息をついた。
「何かの拍子に若返ってしまって、その説明を我々やグランダ王国に対してするのが、面倒臭いという理由で、若い頃に熱中した拳の道に戻ることにしたらしいのだよ。
本人のひひ孫とか名乗って、な。」
「そ、そ、それは皆さん知っていたのですか?」
「まあ、古株の教師、職員はそんなことじゃないか、と思っているよ。残りも薄々は勘づいているんじゃないかな。
全く。」
闘技場で、なおも抗議を続けるジウル・ボルテックに、ジャイロは叫んだ。
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