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魔道院始末
ジウル・ボルテックのスカウト
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ジウル・ポルテックは、ミトラにおいたマーカーを目印に「転移」を行った。場所は、ミトラの大聖堂である。
正確にはそこに程近い今は閉店したレストランの地下、であった。
だが、転移先が確定し、己ひとりならば、これは天才ポルテック卿にとっては、馴染みのバーで「いつもの」を追加するより容易い。
だが。
この日のバーテンは、ド新人だったようだった。
マーカーは、健在であった。
寧ろ、強化されているといえる。
いや、そんなバカな?
強化されている、だと?
考えられることは。
誰かが、彼の転移マーカーを流用したのだ。
そんな事ができるものは。
これはもう動機、アリバイあらゆる考察を吹っ飛ばして、ギムリウスだった。能力的に、ほかに出来るものはいない。
ジウルは転移先を、湖水のなかから、空を見上げるように認識している。これも彼が普段使うエフェクトでなかった。
場所がかわっていないこと。
致死性のガスや、もっと悪ぃほかの金属でうめつくされたいないことは、こちらからも確認できる。
意を決して、ジウルは飛び出した。
目の前には、貴族家の侍女の制服をまとった清楚な美女が佇んでいた。
はあ?
ふたりの視線がからみ、また離れた。
「ドロシー、なぜここに、」
「だ」
ドロシーの顔が歪んだ。
「騙されるかあぁっ!」
指先に紫電がともり、不規則な弾道を描いて駆け回る。
コントロールはきかないし、一撃必殺の魔法では無いが、閉鎖された地下室では避けにくい。
ジウルは、魔力による身体強化で「耐える」ことを選んだ。
バチバチ。ジウルの肌で火花が弾けた。一撃必殺はないにせよ、一撃で悶絶はありうる。
痛みに耐えるのも拳法家の宿命である。
「ドロシー、俺だっ!」
「ジウルは、別れたオンナのもとに未練がましく姿を現す男ではない!」
そういう見方もあるのか。
ジウルは内心臍を噛んだ。
彼としては、対抗戦のメンバーを、当然のように、ドロシーとヨウィスあたりに依頼するつもりでいた。
ドロシーは、そろそろ最初に約束した交換留学の期間は、そろそろだが、魔道院の学生と言い張れば通るだろう。
ヨウィスなどは、これ以上ないくらに見事な魔道院の学生だった。ついでに冒険者と院長秘書を兼任はしていたが。
その当然のことを依頼するために、転移でミトラを訪れた。
帰りはぎりぎりで10日かかるが、竜による輸送をたのめれば、すこし短縮もできるだろう。説得については、ジウルはまったく心配していなかったのだ。
いまのいままで。
ドロシーの踏み込みながらのひじが鳩尾につきささった。
電撃の痛みをこらえることも、計算されている。
ドロシーはそういう闘者だった。
「すまん。用があれば平気で、前の女のもとに姿をあらわす男だったようだ。」
この。
連撃の肘に今度は、鋭利な氷の刃が生えていた。
最初の一撃のように「耐えて」やりすごそうと思えば、骨まで裂かれる。
ジウルは、ぎりぎりで「受けた」。
頬が裂け、鮮血が飛んだ。ドロシーの頬に、唇にかかる。
「この。」
接近した距離からの蹴り。鍛え上げた筋肉にくわえ、柔軟性もいる。あごが跳ね上がった。
「この、この、この」
炎を、岩塊を、氷をまとった攻撃だけを避ける。それ以外は全部受けた。
どうにも。
ジウルは、頬から鼻から額から血を流しながら、苦笑いをうかべた。
「俺は、おまえには弱いようだぞ。ドロシー」
はあ、はあ、はあ。
息をつきながら、ドロシーはうるんだ目でジウルを見上げた。
「ジウル・・・大好き。」
唇が、ふれあいドロシーの舌が、ジウル・ボルテックの口腔内をねぶった。
電撃がふたりを包んだ。
正確にはそこに程近い今は閉店したレストランの地下、であった。
だが、転移先が確定し、己ひとりならば、これは天才ポルテック卿にとっては、馴染みのバーで「いつもの」を追加するより容易い。
だが。
この日のバーテンは、ド新人だったようだった。
マーカーは、健在であった。
寧ろ、強化されているといえる。
いや、そんなバカな?
強化されている、だと?
考えられることは。
誰かが、彼の転移マーカーを流用したのだ。
そんな事ができるものは。
これはもう動機、アリバイあらゆる考察を吹っ飛ばして、ギムリウスだった。能力的に、ほかに出来るものはいない。
ジウルは転移先を、湖水のなかから、空を見上げるように認識している。これも彼が普段使うエフェクトでなかった。
場所がかわっていないこと。
致死性のガスや、もっと悪ぃほかの金属でうめつくされたいないことは、こちらからも確認できる。
意を決して、ジウルは飛び出した。
目の前には、貴族家の侍女の制服をまとった清楚な美女が佇んでいた。
はあ?
ふたりの視線がからみ、また離れた。
「ドロシー、なぜここに、」
「だ」
ドロシーの顔が歪んだ。
「騙されるかあぁっ!」
指先に紫電がともり、不規則な弾道を描いて駆け回る。
コントロールはきかないし、一撃必殺の魔法では無いが、閉鎖された地下室では避けにくい。
ジウルは、魔力による身体強化で「耐える」ことを選んだ。
バチバチ。ジウルの肌で火花が弾けた。一撃必殺はないにせよ、一撃で悶絶はありうる。
痛みに耐えるのも拳法家の宿命である。
「ドロシー、俺だっ!」
「ジウルは、別れたオンナのもとに未練がましく姿を現す男ではない!」
そういう見方もあるのか。
ジウルは内心臍を噛んだ。
彼としては、対抗戦のメンバーを、当然のように、ドロシーとヨウィスあたりに依頼するつもりでいた。
ドロシーは、そろそろ最初に約束した交換留学の期間は、そろそろだが、魔道院の学生と言い張れば通るだろう。
ヨウィスなどは、これ以上ないくらに見事な魔道院の学生だった。ついでに冒険者と院長秘書を兼任はしていたが。
その当然のことを依頼するために、転移でミトラを訪れた。
帰りはぎりぎりで10日かかるが、竜による輸送をたのめれば、すこし短縮もできるだろう。説得については、ジウルはまったく心配していなかったのだ。
いまのいままで。
ドロシーの踏み込みながらのひじが鳩尾につきささった。
電撃の痛みをこらえることも、計算されている。
ドロシーはそういう闘者だった。
「すまん。用があれば平気で、前の女のもとに姿をあらわす男だったようだ。」
この。
連撃の肘に今度は、鋭利な氷の刃が生えていた。
最初の一撃のように「耐えて」やりすごそうと思えば、骨まで裂かれる。
ジウルは、ぎりぎりで「受けた」。
頬が裂け、鮮血が飛んだ。ドロシーの頬に、唇にかかる。
「この。」
接近した距離からの蹴り。鍛え上げた筋肉にくわえ、柔軟性もいる。あごが跳ね上がった。
「この、この、この」
炎を、岩塊を、氷をまとった攻撃だけを避ける。それ以外は全部受けた。
どうにも。
ジウルは、頬から鼻から額から血を流しながら、苦笑いをうかべた。
「俺は、おまえには弱いようだぞ。ドロシー」
はあ、はあ、はあ。
息をつきながら、ドロシーはうるんだ目でジウルを見上げた。
「ジウル・・・大好き。」
唇が、ふれあいドロシーの舌が、ジウル・ボルテックの口腔内をねぶった。
電撃がふたりを包んだ。
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