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魔道院始末
メンバー選抜
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「対抗戦を行なう。」
と、アレフザードが言った時、魔剣研究会の面々から帰ってきたのは、不満の声だった。
「ザジのことは、正々堂々たる決闘の結果だということで、処分は撤回させた。」
アレフザードはブーイングを無視して続けた。
「試合は十日後。五対五の対抗戦だ。
出られる部員は1名。」
「どういうことですか?」
食ってかかったのは、入部して日の浅いアフラという。
もともとが名門の公爵家の出身なので、なにかと言動は荒っぽく、長上に対する敬意などは皆無である。
「五対五の対抗戦で、選抜されるのが一人とは?」
「むこうが、部員が一人だけだからだよ。」
アレフザードは言った。
みたところ、彼の魔力量はかなりなものだった。
ただ、使い方が悪い。高度な術など実戦ではなかなか役に立たないことが多い。それより、使うスピードとタイミングが重要なのだ。
要は実戦の経験がたりないのだ。このような対抗戦にはまず出したくないタイプだったが。
「おまえが出てみるか?」
みるみるアフラの顔が紅潮した。
「ど、どうしてもでろと言うのならば・・・・」
ツンデレか。
「しかし、ほかのメンバーはどうします?
むこうはメンバーが集まらなければ、あのジウルとかいう総帥のひ孫とシホウとかいうでぶが出てくるつもりでしょう?」
年長のメンバーが言うと、アフラがキッとなった。
「あのジウルとかいうやつがまがい物だ。ボルテックのお祖父様の直径のひ孫はわたしだけだ。」
正確には、ひひひ孫くらいだろう。
どこに子孫がいるのか本人もしらぬのではないか。
アレフザードは、心のなかであざけったが、表情にはみせない。
彼は、なにはともあれ、シャインベルク公爵家の三男である。魔道については十年に一度の天才と言われた人物なのだ。
おおいにおだてて、シャインベルク公爵家の後ろ盾を得られるように、しておかねばならない。
「もし、ジウルとシホウが出てくるようなら。」
アレフザードはにたりと笑った。
「わたしもでようと思う。むこうの思惑にのった形で、魔道院の学生は最低ひとりでいいことにしているが、わたしには冒険者時代のツテがある。」
おおっ、とどよめきが起こった。
アレフザードは、グランダだけで幅をきかせている田舎冒険者ではない。ランゴバルドをはじめとする西域で正式に認められた「銀級」冒険者なのだ。
一応、「引退」したとのことで、魔道院に職をもとめたが、いまだに現役の免許はもっている。
そしてそのツテということは、西域で認められた本物の冒険者がやってくる、ということだ。
魔道院はたしかに研究機関としての一面はあったが、一方で冒険者志願のものが魔法を磨くために門をたたくことも多かった。
実際、ヨウィスのように両方を兼任するものはさすがに少なかったが、魔道院で上級魔導師の資格をもって、西域で冒険者としてデビューするものは少なくなかった。
ルトが苦労したように、グランダでの「踏破級」冒険者の資格と違って、「上級魔導師」または「グランダ魔道院で学んだ」という実績は、西域でもきちんと通用したのである。
ヤンは相変わらず、腰を落として「立つ」練習をしている。
その額からは、汗がしたたり落ちている。
だが、彼なりに先だっての勝利でなにかをつかんだのだろう。
「逃げても無駄だぞ。」
ジウルが笑った。
「俺たちの拳と魔法は、世界のどこにいても届く。」
ただの脅迫だった。
「ヤンと、オレとシホウ殿で三人だ。あとの2人はどうする?」
「むこうは、たぶんコネのある現役冒険者を連れてくるだろう。いまから、部員を募集できるのか?
言っておくが、絶士は無理だぞ。おれたちは互いに連絡をつける方法すら知らん。」
「心配するな。」
ジウルは、にやと笑った。
「ちゃんと現役の魔道院生を連れてくる。
ドロシーとヨウィスだ。」
シホウは困惑したようにいった。
「彼女たちは、まだミトラにいるはず・・・・」
「“わし”は、人類社会最強の魔導師でな。なかでも転移魔術で“わし”を凌ぐのは、ギムリウスくらいだろう?」
と、アレフザードが言った時、魔剣研究会の面々から帰ってきたのは、不満の声だった。
「ザジのことは、正々堂々たる決闘の結果だということで、処分は撤回させた。」
アレフザードはブーイングを無視して続けた。
「試合は十日後。五対五の対抗戦だ。
出られる部員は1名。」
「どういうことですか?」
食ってかかったのは、入部して日の浅いアフラという。
もともとが名門の公爵家の出身なので、なにかと言動は荒っぽく、長上に対する敬意などは皆無である。
「五対五の対抗戦で、選抜されるのが一人とは?」
「むこうが、部員が一人だけだからだよ。」
アレフザードは言った。
みたところ、彼の魔力量はかなりなものだった。
ただ、使い方が悪い。高度な術など実戦ではなかなか役に立たないことが多い。それより、使うスピードとタイミングが重要なのだ。
要は実戦の経験がたりないのだ。このような対抗戦にはまず出したくないタイプだったが。
「おまえが出てみるか?」
みるみるアフラの顔が紅潮した。
「ど、どうしてもでろと言うのならば・・・・」
ツンデレか。
「しかし、ほかのメンバーはどうします?
むこうはメンバーが集まらなければ、あのジウルとかいう総帥のひ孫とシホウとかいうでぶが出てくるつもりでしょう?」
年長のメンバーが言うと、アフラがキッとなった。
「あのジウルとかいうやつがまがい物だ。ボルテックのお祖父様の直径のひ孫はわたしだけだ。」
正確には、ひひひ孫くらいだろう。
どこに子孫がいるのか本人もしらぬのではないか。
アレフザードは、心のなかであざけったが、表情にはみせない。
彼は、なにはともあれ、シャインベルク公爵家の三男である。魔道については十年に一度の天才と言われた人物なのだ。
おおいにおだてて、シャインベルク公爵家の後ろ盾を得られるように、しておかねばならない。
「もし、ジウルとシホウが出てくるようなら。」
アレフザードはにたりと笑った。
「わたしもでようと思う。むこうの思惑にのった形で、魔道院の学生は最低ひとりでいいことにしているが、わたしには冒険者時代のツテがある。」
おおっ、とどよめきが起こった。
アレフザードは、グランダだけで幅をきかせている田舎冒険者ではない。ランゴバルドをはじめとする西域で正式に認められた「銀級」冒険者なのだ。
一応、「引退」したとのことで、魔道院に職をもとめたが、いまだに現役の免許はもっている。
そしてそのツテということは、西域で認められた本物の冒険者がやってくる、ということだ。
魔道院はたしかに研究機関としての一面はあったが、一方で冒険者志願のものが魔法を磨くために門をたたくことも多かった。
実際、ヨウィスのように両方を兼任するものはさすがに少なかったが、魔道院で上級魔導師の資格をもって、西域で冒険者としてデビューするものは少なくなかった。
ルトが苦労したように、グランダでの「踏破級」冒険者の資格と違って、「上級魔導師」または「グランダ魔道院で学んだ」という実績は、西域でもきちんと通用したのである。
ヤンは相変わらず、腰を落として「立つ」練習をしている。
その額からは、汗がしたたり落ちている。
だが、彼なりに先だっての勝利でなにかをつかんだのだろう。
「逃げても無駄だぞ。」
ジウルが笑った。
「俺たちの拳と魔法は、世界のどこにいても届く。」
ただの脅迫だった。
「ヤンと、オレとシホウ殿で三人だ。あとの2人はどうする?」
「むこうは、たぶんコネのある現役冒険者を連れてくるだろう。いまから、部員を募集できるのか?
言っておくが、絶士は無理だぞ。おれたちは互いに連絡をつける方法すら知らん。」
「心配するな。」
ジウルは、にやと笑った。
「ちゃんと現役の魔道院生を連れてくる。
ドロシーとヨウィスだ。」
シホウは困惑したようにいった。
「彼女たちは、まだミトラにいるはず・・・・」
「“わし”は、人類社会最強の魔導師でな。なかでも転移魔術で“わし”を凌ぐのは、ギムリウスくらいだろう?」
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ご覧いただきありがとうございます。なんとか完結しました。彼らの物語はまだ続きます。後日談https://www.alphapolis.co.jp/novel/807186218/844632510
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