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魔道院始末
対抗戦
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魔剣研究会の顧問のアレフザードは、全く悪びれる様子はなかった。
彼もまた、ウィルニア新体制であたらに雇われた講師である。冒険者として、何らかの理由で現役を続けられなくなったとき、それなりに小金を貯めて、店の一つ、田畑の一角でもてに入るものは稀である。
ギルドの職員やこうした冒険者に関連した学校の教師となるのは、ある意味恵まれている。
ジャイロのみたところ、アレフザードは、特に体の動きもよく、まだまだ十分現役で活躍できそうだった。
ミトラの「銀級」冒険者と名乗り、実際その登録カードも持っていたから、その通りなのだろう。
銀級まで行ければそれは、一流冒険者の証であって、後は上には名誉職に近い「黄金級」、よほど伝説となるような手柄を立てねばもらえぬ「英雄級」があるだけだった。
そういった意味では、アレフザードが魔道院に職を求めた理由は、不明であった。
「いや、見事な勝負でした。」
アレフザードは、そんなことを言った。
「失神したザジをあれほどになるまで、殴り続けたのは、少々、決闘の礼には反するかと存じますが、こちらから依頼して、受けていただいた決闘です。今更文句も申しますまい。」
現実に起こったことは、ザジがヤンを痛めつけ、魔道院から追い出すためのいじめだったのだが、意に反して、痛めつけられたのはザジの方だった。
「いじめ」に失敗して反撃をうけた。それを「決闘」という対等な立場での闘争に言い換えるのは、なかなか強かである。
「ふざけるな! ヤンは決闘などするタイプではない。そちらが言いがかりをつけて暴力を振るおうとしたのだろう?」
シライシが目をひん剥いて怒鳴った。
アレフザードはカエルのツラになんとか、である。
「ですから、決闘はこちらから申し入れました。
そのことは、わたしの申し上げてた通りです。それを喜んで受け入れたか、仕方なく受け入れたかまでは、わたしはヤンくんと話をしていないのでわかりません。
しかし、少なくともヤンくんは、戦いを受け入れ、そして勝利した。
つまり、ザジとの決闘に勝利したのです。実に見事。」
アレフザードはニヤニヤと笑った。
「臨時講師とはいえ、魔法拳法研究会のジウル先生、シホウ先生の見事な手腕に感服致すばかりです。」
「確かに、入部してほんの数日のヤンに、そちらの部員が負けたのだ。」
ここぞとばかりにシライシは言い立てた。
「魔道の実践運用における研究を目的とした『魔剣研究会』の存在理由が問われるな、アレフザード先生。」
「誠にその通りです。」
アレフザードは頷いてみせた。
「わたしも、両先生に学ぶところは大きいかと存じます。そこで、一つ提案なのですが。」
きたな!
とジャイロは思った。どちらも野心家ではあるのだが、腹黒さ、駆け引きのうまさでは、アレフザードに一日の長がある。
シライシは相手を糾弾したつもりで、流れに乗せられている。
「一戦だけでは、なんともわかりません。そこで、魔剣研究会と魔道拳法研究会で対抗戦を開催したいと思うのですよ。
・・・・五対五でいかがです?」
「おいおい。」
シライシは憤然として言った。
「魔道拳法研究会は、できてまだ日が浅い。部員はヤン一人だ。それをわかって無理難題を言ってきているのか?」
「ですから、そうですね。10日後にいたしましょうか?
わずか数日で、あのヤンをあそこまで鍛え上げた、ジウル、シホウの両先生だ。それだけあれば十分、対抗戦は可能でしょう?」
「しかし、部員を募集するのにも時間が、だな。」
「ならば、こうしましょう。五名のうちにジウル、シホウ両先生も含めて良いことに致しましょう。こちらはわたしも参加致します。
・・・ああ、いっそ、それぞれ一名を除けば、魔道学院外部から人を募っても良いことに致しましょうか?
それでしたら、問題ありませんよね。
ここまで譲歩しても、お逃げになるのですかね、魔道拳法研究会は。」
対抗戦にかこつけて、魔道拳法研究会を潰すつもりだ!!
ここまできて、やっとアレフザードの意図に気がついたシライシは、青ざめた顔でジャイロを振り返った。
さて。
ジャイロは、心の中で爆笑していたが、それを全く顔に表す事なく、頷いた。
“ボルテック卿はこういうの大好きだったな”
と思いつつ。
「わかった。ジウル先生たちにはわたしから話をしておこう。」
彼もまた、ウィルニア新体制であたらに雇われた講師である。冒険者として、何らかの理由で現役を続けられなくなったとき、それなりに小金を貯めて、店の一つ、田畑の一角でもてに入るものは稀である。
ギルドの職員やこうした冒険者に関連した学校の教師となるのは、ある意味恵まれている。
ジャイロのみたところ、アレフザードは、特に体の動きもよく、まだまだ十分現役で活躍できそうだった。
ミトラの「銀級」冒険者と名乗り、実際その登録カードも持っていたから、その通りなのだろう。
銀級まで行ければそれは、一流冒険者の証であって、後は上には名誉職に近い「黄金級」、よほど伝説となるような手柄を立てねばもらえぬ「英雄級」があるだけだった。
そういった意味では、アレフザードが魔道院に職を求めた理由は、不明であった。
「いや、見事な勝負でした。」
アレフザードは、そんなことを言った。
「失神したザジをあれほどになるまで、殴り続けたのは、少々、決闘の礼には反するかと存じますが、こちらから依頼して、受けていただいた決闘です。今更文句も申しますまい。」
現実に起こったことは、ザジがヤンを痛めつけ、魔道院から追い出すためのいじめだったのだが、意に反して、痛めつけられたのはザジの方だった。
「いじめ」に失敗して反撃をうけた。それを「決闘」という対等な立場での闘争に言い換えるのは、なかなか強かである。
「ふざけるな! ヤンは決闘などするタイプではない。そちらが言いがかりをつけて暴力を振るおうとしたのだろう?」
シライシが目をひん剥いて怒鳴った。
アレフザードはカエルのツラになんとか、である。
「ですから、決闘はこちらから申し入れました。
そのことは、わたしの申し上げてた通りです。それを喜んで受け入れたか、仕方なく受け入れたかまでは、わたしはヤンくんと話をしていないのでわかりません。
しかし、少なくともヤンくんは、戦いを受け入れ、そして勝利した。
つまり、ザジとの決闘に勝利したのです。実に見事。」
アレフザードはニヤニヤと笑った。
「臨時講師とはいえ、魔法拳法研究会のジウル先生、シホウ先生の見事な手腕に感服致すばかりです。」
「確かに、入部してほんの数日のヤンに、そちらの部員が負けたのだ。」
ここぞとばかりにシライシは言い立てた。
「魔道の実践運用における研究を目的とした『魔剣研究会』の存在理由が問われるな、アレフザード先生。」
「誠にその通りです。」
アレフザードは頷いてみせた。
「わたしも、両先生に学ぶところは大きいかと存じます。そこで、一つ提案なのですが。」
きたな!
とジャイロは思った。どちらも野心家ではあるのだが、腹黒さ、駆け引きのうまさでは、アレフザードに一日の長がある。
シライシは相手を糾弾したつもりで、流れに乗せられている。
「一戦だけでは、なんともわかりません。そこで、魔剣研究会と魔道拳法研究会で対抗戦を開催したいと思うのですよ。
・・・・五対五でいかがです?」
「おいおい。」
シライシは憤然として言った。
「魔道拳法研究会は、できてまだ日が浅い。部員はヤン一人だ。それをわかって無理難題を言ってきているのか?」
「ですから、そうですね。10日後にいたしましょうか?
わずか数日で、あのヤンをあそこまで鍛え上げた、ジウル、シホウの両先生だ。それだけあれば十分、対抗戦は可能でしょう?」
「しかし、部員を募集するのにも時間が、だな。」
「ならば、こうしましょう。五名のうちにジウル、シホウ両先生も含めて良いことに致しましょう。こちらはわたしも参加致します。
・・・ああ、いっそ、それぞれ一名を除けば、魔道学院外部から人を募っても良いことに致しましょうか?
それでしたら、問題ありませんよね。
ここまで譲歩しても、お逃げになるのですかね、魔道拳法研究会は。」
対抗戦にかこつけて、魔道拳法研究会を潰すつもりだ!!
ここまできて、やっとアレフザードの意図に気がついたシライシは、青ざめた顔でジャイロを振り返った。
さて。
ジャイロは、心の中で爆笑していたが、それを全く顔に表す事なく、頷いた。
“ボルテック卿はこういうの大好きだったな”
と思いつつ。
「わかった。ジウル先生たちにはわたしから話をしておこう。」
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