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魔道院始末
最弱サークルが最強へのしあがる話
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「グランダの魔道院は、西域にも名高いが」
シホウは、丸い顔に嫌悪感を露わにしながら、言った。
「内情は腐っていたな。このようなやからを学内に蔓延らせているとは。」
先にも、言ったが、そもそもボルテックは武闘派である。しかも常在戦場志向が強い。
食事中だろうが、入浴中だろうが、あるいは、意に沿わない婚約破棄の結果、1人夜道をさ迷っていようが、一切容赦したことはない。
まして、服装がだらしないとか、素行が悪い程度でマイナスの評価にはならないのが、彼の流儀である。
だから、ジウル・ボルテックが怖い顔をしたのは、そこに知った顔を見出したからである。
もともと、彼の出自であるシャインベルク公爵家の三男アフラであった。
もともと折り目だだしい貴公子だった。
尊敬する「曽祖父」ボルテック卿のまえでは、いつも素直で礼儀正しく、またその魔法の才能は群をぬいて優れていた。
不幸は、同期にルトとフィオリナがいたことである。
ルトがフィオリナに婚約破棄をしたときに、その場に居合わせた彼は、
フィオリナを守ろうと、ルトに立ち向かい、そして敗れた。
怪我はたいしたことはなかったが、精神的なショックもあって、卒業までの日々を療養で過ごした、ときいている。
卒業後の魔道院への進学は、体調の事もあって、ジウル・ボルテックの突然の引退後、となった。
この才能あふれる子孫を、彼は可愛がってはいたのだが、それよりも新しい魔道と拳法の融合、さらには歳若い愛人の存在にすっかり浮かれていた彼は、武者修行のつもりで西域に旅立ってしまった。
だから、彼の顔が歪んだのは、かわいいひひひ孫をほったらかしにしてしまったことへの、自責の念によるものであった。
ついで浮かべた笑は、いつもこの孫の前ではそうしていた好々爺のものだったが、さすがのボルテックも、老人として浮かべていた笑みが、現在のふてぶてしいまでの偉丈夫がうかべると、相手を小馬鹿にしたように見えてしまうことなどは、想像していなかった。
「なにがおかしいか、あん?」
自分にその笑みがむけられたことが、わかったアフラは、はやくも腰の佩刀に手をかけている。
髪はオレンジと緑、半々に染め上げられ、頬骨の部分には、クロスされた剣・・・魔剣研究会のシンボルが刺青されたいた。
まことにけっこう!
ジウルは嬉しかった。
もともと才能に溢れながら、線が細く、必要なときに怒れず、とんでもない時にキレる彼のことが、心配だったのだ。
例えば、級友にいきなり、致死魔法をぶっぱなすとか、である。
戦いにはときと、場合、なにより相手によって千差万別あるべきであって、いきなり、それはない。
この荒くれどもに、揉まれれば、すこしはそこいらの見極めもつくようになるだろう。
「まあ、待て、アフラ。」
後方から歩み出たのは、ボルテックも知らない顔である。
年齢からして、生徒とは思えない。
「銀級冒険者のアレフザードだよ。」
男は名乗った。
「魔剣研究会の顧問を仰せつかっていてね。」
「それはどうも」
ボルテックは、文句を言おうとするシホウを押しとどめた。
彼のほうがこの連中のあしらいには慣れている。
そう思っての行動だったが、とんでもない間違いだった。
慣れているのは、魔道院の妖怪ポルテック卿であって、おなじ言動を、若造のジウル・ボルテックが行えは、それは火に油を注ぐだけである。
「俺が顧問になったとたんに、魔道院からサークルの解散を命じられて困ってがたんだ。
理由をきいたら、むやみやたらとサークル増えすぎたんで、その整理のためだそうだ。」
なるほど。
というしかない。サークル活動にも魔道院から補助がある以上無限に数を増やす訳にはいかないのは事実である。
だが、魔剣研究会の乱れた服装や奇抜な髪型をみていると、理由はほかにありそうだった。
「きけば、似たようなサークルが最近できたっていうじゃないか。
そっちをつぶせば、なにも俺たちが解散すべき事由はなにもなくなるんじゃねえか?」
「そういうものか?」
と、ボルテックは、言った。アレフザードと名乗った冒険者は確かに、現役バリバリで腕がたちそうだった。
ここの顧問になるくらいなら、おそらく、自らも魔剣を使うのだろう。
「ただ、俺たちはおまえらに選ばせてやろうと思ってるんだ。」
アレフザードは、いまにも剣を抜こうとするアフラを押しとどめながら言った。
「つまり、とっととサークルをたたんで、魔道院を出ていくか。俺たちに叩きのめされて半死半生に、なって、出ていくか、だ。」
シホウは、丸い顔に嫌悪感を露わにしながら、言った。
「内情は腐っていたな。このようなやからを学内に蔓延らせているとは。」
先にも、言ったが、そもそもボルテックは武闘派である。しかも常在戦場志向が強い。
食事中だろうが、入浴中だろうが、あるいは、意に沿わない婚約破棄の結果、1人夜道をさ迷っていようが、一切容赦したことはない。
まして、服装がだらしないとか、素行が悪い程度でマイナスの評価にはならないのが、彼の流儀である。
だから、ジウル・ボルテックが怖い顔をしたのは、そこに知った顔を見出したからである。
もともと、彼の出自であるシャインベルク公爵家の三男アフラであった。
もともと折り目だだしい貴公子だった。
尊敬する「曽祖父」ボルテック卿のまえでは、いつも素直で礼儀正しく、またその魔法の才能は群をぬいて優れていた。
不幸は、同期にルトとフィオリナがいたことである。
ルトがフィオリナに婚約破棄をしたときに、その場に居合わせた彼は、
フィオリナを守ろうと、ルトに立ち向かい、そして敗れた。
怪我はたいしたことはなかったが、精神的なショックもあって、卒業までの日々を療養で過ごした、ときいている。
卒業後の魔道院への進学は、体調の事もあって、ジウル・ボルテックの突然の引退後、となった。
この才能あふれる子孫を、彼は可愛がってはいたのだが、それよりも新しい魔道と拳法の融合、さらには歳若い愛人の存在にすっかり浮かれていた彼は、武者修行のつもりで西域に旅立ってしまった。
だから、彼の顔が歪んだのは、かわいいひひひ孫をほったらかしにしてしまったことへの、自責の念によるものであった。
ついで浮かべた笑は、いつもこの孫の前ではそうしていた好々爺のものだったが、さすがのボルテックも、老人として浮かべていた笑みが、現在のふてぶてしいまでの偉丈夫がうかべると、相手を小馬鹿にしたように見えてしまうことなどは、想像していなかった。
「なにがおかしいか、あん?」
自分にその笑みがむけられたことが、わかったアフラは、はやくも腰の佩刀に手をかけている。
髪はオレンジと緑、半々に染め上げられ、頬骨の部分には、クロスされた剣・・・魔剣研究会のシンボルが刺青されたいた。
まことにけっこう!
ジウルは嬉しかった。
もともと才能に溢れながら、線が細く、必要なときに怒れず、とんでもない時にキレる彼のことが、心配だったのだ。
例えば、級友にいきなり、致死魔法をぶっぱなすとか、である。
戦いにはときと、場合、なにより相手によって千差万別あるべきであって、いきなり、それはない。
この荒くれどもに、揉まれれば、すこしはそこいらの見極めもつくようになるだろう。
「まあ、待て、アフラ。」
後方から歩み出たのは、ボルテックも知らない顔である。
年齢からして、生徒とは思えない。
「銀級冒険者のアレフザードだよ。」
男は名乗った。
「魔剣研究会の顧問を仰せつかっていてね。」
「それはどうも」
ボルテックは、文句を言おうとするシホウを押しとどめた。
彼のほうがこの連中のあしらいには慣れている。
そう思っての行動だったが、とんでもない間違いだった。
慣れているのは、魔道院の妖怪ポルテック卿であって、おなじ言動を、若造のジウル・ボルテックが行えは、それは火に油を注ぐだけである。
「俺が顧問になったとたんに、魔道院からサークルの解散を命じられて困ってがたんだ。
理由をきいたら、むやみやたらとサークル増えすぎたんで、その整理のためだそうだ。」
なるほど。
というしかない。サークル活動にも魔道院から補助がある以上無限に数を増やす訳にはいかないのは事実である。
だが、魔剣研究会の乱れた服装や奇抜な髪型をみていると、理由はほかにありそうだった。
「きけば、似たようなサークルが最近できたっていうじゃないか。
そっちをつぶせば、なにも俺たちが解散すべき事由はなにもなくなるんじゃねえか?」
「そういうものか?」
と、ボルテックは、言った。アレフザードと名乗った冒険者は確かに、現役バリバリで腕がたちそうだった。
ここの顧問になるくらいなら、おそらく、自らも魔剣を使うのだろう。
「ただ、俺たちはおまえらに選ばせてやろうと思ってるんだ。」
アレフザードは、いまにも剣を抜こうとするアフラを押しとどめながら言った。
「つまり、とっととサークルをたたんで、魔道院を出ていくか。俺たちに叩きのめされて半死半生に、なって、出ていくか、だ。」
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