197 / 248
魔道院始末
魔剣研究会
しおりを挟む
「魔剣研究会?」
シホウがジウルを振り向いた。なんのことか説明しろ、とい顔に、さてどこから説明したものかな、とジウルは考えた。
「魔剣研究会は、俺たちの魔法拳法研究会と、同じような学生のサークル活動だ。サークル活動というのは、学生が主に課外時間にだな」
「それはわかる。こっちを魔王宮の人外のものと一緒にするな。」
「魔剣研究会は幾つもあるサークルの中でも、歴史のあるサークルだ。
魔法においては、アイテムへの付与魔法が、一つのジャンルとして存在しているが、それを武器にかけることは、古来より行われており」
「あのなあ、ジウル。」
シホウは若干、イライラと言った。
「俺は、元冒険者だ。ランゴバルドと、この北のグランダでは細かい習慣はそりゃあ、違うだろうが、学校とかサークルとか付与魔法のこととかは、一般常識としてわかる。」
シホウは太い指をザジと名乗る青年に突きつけた。
「俺が聞きたいのは、あの若僧がなんで俺たちに喧嘩を売ろうとしているか、だ。」
「なあ、おっさん方。」
ザジは、不毛な会話を続けるシホウと、ジウルに寄ってきた。魔道院には一応制服のようなものはあるが、着用は自由である。基本的には、基礎教育を終えた16歳以上(グランダでは成人したとみなされるもの)のものが入校してくるので、今更、服装がどうのと指摘する教官もいなければ、監視機構もない。
それにしても、ものザジと名乗った生徒の、着こなしのだらしのなさと言ったらなかった。
ヘラヘラと笑いながらザジは続けた。
「妙なサークルを、ジャイロが立ち上げたって聞いたんだけど、何よ、これ。
てんで話にならんじゃねえの?」
ザジは、ヤンを睨んだ。それだけでヤンは震え上がる。もともと、戦う術を習ってみようと思っただけでも一念発起だったのだ。魔法の実践応用には、サークルも幾つもあった。
目の前にいるザジのいる、魔剣研究会などはその際たるものだったのだが、正直なところ、レベルについていけないと危惧して、できたばかりの魔法拳法研究会を選んだのである。
そうでなくても、魔剣研究会はけっこう「怖い」サークルだともっぱらの評判では、あったのだ。
ジウル・ボルテックは、そこまでは知らない。
というか、ガキども背比べなど、最初から全く興味がなかった。
「そこまで行くと、まあ、こいつに直接聞くしかねえんじゃないか?」
拳を握って、前に出ようとするので、シホウは慌てて止めた。
少なくともこの部員一名の「魔法拳法研究会」の顧問として、ここにおいて貰っているのだ。
学生と、暴力事件など起こして言い訳があるまい。
「面白いね、おっさん。」
ザジは怯むことなく、間合いを図るようにすり足で、僅かに後退しながら、剣に手をかけた。
「ちょいと遊んでみるかい?」
「撫でてやるよ、ガキ!」
「またなんかジウル! 我々はサークル顧問の臨時教師だぞ。こいつをぶちのめしてもなんの特にもならん。壁の絵一枚、破損させても、テーブル一つ倒しても全部責任はこっちだ。
ろくなことにならん。やめておけ。」
「大丈夫だぞ、シホウ。」
ジウルは、笑った。
「この坊やは、けっこう出来る。叩きのめしても母親に泣きつくような真似はせんだろう。」
「あのお・・・・」
ヤンが恐る恐る口を出した。
「魔剣研究会は、けっこうその、ヤバめなところなので。グランダ王都の裏社会と繋がってるって噂もありますので、その、揉めるようなら、ぼくは退部させていただきたく・・・・」
「てめえは、治癒魔法を専攻してるヤンとか言ったな。」
ザジがせせら笑った。
「随分と酷えことを言ってくれるじゃねえか? 名前と顔は覚えたぜ。
殺されたくなければ、今日中に荷物をまとめて退学しな。」
バチン!
ザジの顔がのけぞった。
そのまま、よろよろと後退し、それでも踏みとどまったその顔は、鼻が潰れて血をふいていた。
指を弾いた衝撃波だけで、その効果を生んだシホウは、ゆっくりと前に出た。
「なんだ? デブ。てめえがやるのか・・・」
ザジは喚いた。
「妙な技を使いやがるが、2度めはねえ。」
「ジウルよ。どうも魔道院は、随分と荒んだところのようだなあ。」
「実力主義なものでね。」
ジウルは、首をすくめた。
なにしろ、無抵抗のルト、当時は王太子だったハルトに一方的に戦闘を仕掛けること九十数回。相手がルトでなければ、命が九十数個あっても足りなかった
ボルテックはそんな男であり、若返ったことで、本人は自覚せずとも、すっかりイケイケになっている。
「おうおう? 教師が生徒に暴力とか、こりゃあ見過ごせねえなあ。」
明らかにトラブルに発展するのを待っていたかのように、帯剣した集団が、ゾロゾロと現れた。
シホウがジウルを振り向いた。なんのことか説明しろ、とい顔に、さてどこから説明したものかな、とジウルは考えた。
「魔剣研究会は、俺たちの魔法拳法研究会と、同じような学生のサークル活動だ。サークル活動というのは、学生が主に課外時間にだな」
「それはわかる。こっちを魔王宮の人外のものと一緒にするな。」
「魔剣研究会は幾つもあるサークルの中でも、歴史のあるサークルだ。
魔法においては、アイテムへの付与魔法が、一つのジャンルとして存在しているが、それを武器にかけることは、古来より行われており」
「あのなあ、ジウル。」
シホウは若干、イライラと言った。
「俺は、元冒険者だ。ランゴバルドと、この北のグランダでは細かい習慣はそりゃあ、違うだろうが、学校とかサークルとか付与魔法のこととかは、一般常識としてわかる。」
シホウは太い指をザジと名乗る青年に突きつけた。
「俺が聞きたいのは、あの若僧がなんで俺たちに喧嘩を売ろうとしているか、だ。」
「なあ、おっさん方。」
ザジは、不毛な会話を続けるシホウと、ジウルに寄ってきた。魔道院には一応制服のようなものはあるが、着用は自由である。基本的には、基礎教育を終えた16歳以上(グランダでは成人したとみなされるもの)のものが入校してくるので、今更、服装がどうのと指摘する教官もいなければ、監視機構もない。
それにしても、ものザジと名乗った生徒の、着こなしのだらしのなさと言ったらなかった。
ヘラヘラと笑いながらザジは続けた。
「妙なサークルを、ジャイロが立ち上げたって聞いたんだけど、何よ、これ。
てんで話にならんじゃねえの?」
ザジは、ヤンを睨んだ。それだけでヤンは震え上がる。もともと、戦う術を習ってみようと思っただけでも一念発起だったのだ。魔法の実践応用には、サークルも幾つもあった。
目の前にいるザジのいる、魔剣研究会などはその際たるものだったのだが、正直なところ、レベルについていけないと危惧して、できたばかりの魔法拳法研究会を選んだのである。
そうでなくても、魔剣研究会はけっこう「怖い」サークルだともっぱらの評判では、あったのだ。
ジウル・ボルテックは、そこまでは知らない。
というか、ガキども背比べなど、最初から全く興味がなかった。
「そこまで行くと、まあ、こいつに直接聞くしかねえんじゃないか?」
拳を握って、前に出ようとするので、シホウは慌てて止めた。
少なくともこの部員一名の「魔法拳法研究会」の顧問として、ここにおいて貰っているのだ。
学生と、暴力事件など起こして言い訳があるまい。
「面白いね、おっさん。」
ザジは怯むことなく、間合いを図るようにすり足で、僅かに後退しながら、剣に手をかけた。
「ちょいと遊んでみるかい?」
「撫でてやるよ、ガキ!」
「またなんかジウル! 我々はサークル顧問の臨時教師だぞ。こいつをぶちのめしてもなんの特にもならん。壁の絵一枚、破損させても、テーブル一つ倒しても全部責任はこっちだ。
ろくなことにならん。やめておけ。」
「大丈夫だぞ、シホウ。」
ジウルは、笑った。
「この坊やは、けっこう出来る。叩きのめしても母親に泣きつくような真似はせんだろう。」
「あのお・・・・」
ヤンが恐る恐る口を出した。
「魔剣研究会は、けっこうその、ヤバめなところなので。グランダ王都の裏社会と繋がってるって噂もありますので、その、揉めるようなら、ぼくは退部させていただきたく・・・・」
「てめえは、治癒魔法を専攻してるヤンとか言ったな。」
ザジがせせら笑った。
「随分と酷えことを言ってくれるじゃねえか? 名前と顔は覚えたぜ。
殺されたくなければ、今日中に荷物をまとめて退学しな。」
バチン!
ザジの顔がのけぞった。
そのまま、よろよろと後退し、それでも踏みとどまったその顔は、鼻が潰れて血をふいていた。
指を弾いた衝撃波だけで、その効果を生んだシホウは、ゆっくりと前に出た。
「なんだ? デブ。てめえがやるのか・・・」
ザジは喚いた。
「妙な技を使いやがるが、2度めはねえ。」
「ジウルよ。どうも魔道院は、随分と荒んだところのようだなあ。」
「実力主義なものでね。」
ジウルは、首をすくめた。
なにしろ、無抵抗のルト、当時は王太子だったハルトに一方的に戦闘を仕掛けること九十数回。相手がルトでなければ、命が九十数個あっても足りなかった
ボルテックはそんな男であり、若返ったことで、本人は自覚せずとも、すっかりイケイケになっている。
「おうおう? 教師が生徒に暴力とか、こりゃあ見過ごせねえなあ。」
明らかにトラブルに発展するのを待っていたかのように、帯剣した集団が、ゾロゾロと現れた。
0
ご覧いただきありがとうございます。なんとか完結しました。彼らの物語はまだ続きます。後日談https://www.alphapolis.co.jp/novel/807186218/844632510
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる