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魔道院始末
魔剣研究会
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「魔剣研究会?」
シホウがジウルを振り向いた。なんのことか説明しろ、とい顔に、さてどこから説明したものかな、とジウルは考えた。
「魔剣研究会は、俺たちの魔法拳法研究会と、同じような学生のサークル活動だ。サークル活動というのは、学生が主に課外時間にだな」
「それはわかる。こっちを魔王宮の人外のものと一緒にするな。」
「魔剣研究会は幾つもあるサークルの中でも、歴史のあるサークルだ。
魔法においては、アイテムへの付与魔法が、一つのジャンルとして存在しているが、それを武器にかけることは、古来より行われており」
「あのなあ、ジウル。」
シホウは若干、イライラと言った。
「俺は、元冒険者だ。ランゴバルドと、この北のグランダでは細かい習慣はそりゃあ、違うだろうが、学校とかサークルとか付与魔法のこととかは、一般常識としてわかる。」
シホウは太い指をザジと名乗る青年に突きつけた。
「俺が聞きたいのは、あの若僧がなんで俺たちに喧嘩を売ろうとしているか、だ。」
「なあ、おっさん方。」
ザジは、不毛な会話を続けるシホウと、ジウルに寄ってきた。魔道院には一応制服のようなものはあるが、着用は自由である。基本的には、基礎教育を終えた16歳以上(グランダでは成人したとみなされるもの)のものが入校してくるので、今更、服装がどうのと指摘する教官もいなければ、監視機構もない。
それにしても、ものザジと名乗った生徒の、着こなしのだらしのなさと言ったらなかった。
ヘラヘラと笑いながらザジは続けた。
「妙なサークルを、ジャイロが立ち上げたって聞いたんだけど、何よ、これ。
てんで話にならんじゃねえの?」
ザジは、ヤンを睨んだ。それだけでヤンは震え上がる。もともと、戦う術を習ってみようと思っただけでも一念発起だったのだ。魔法の実践応用には、サークルも幾つもあった。
目の前にいるザジのいる、魔剣研究会などはその際たるものだったのだが、正直なところ、レベルについていけないと危惧して、できたばかりの魔法拳法研究会を選んだのである。
そうでなくても、魔剣研究会はけっこう「怖い」サークルだともっぱらの評判では、あったのだ。
ジウル・ボルテックは、そこまでは知らない。
というか、ガキども背比べなど、最初から全く興味がなかった。
「そこまで行くと、まあ、こいつに直接聞くしかねえんじゃないか?」
拳を握って、前に出ようとするので、シホウは慌てて止めた。
少なくともこの部員一名の「魔法拳法研究会」の顧問として、ここにおいて貰っているのだ。
学生と、暴力事件など起こして言い訳があるまい。
「面白いね、おっさん。」
ザジは怯むことなく、間合いを図るようにすり足で、僅かに後退しながら、剣に手をかけた。
「ちょいと遊んでみるかい?」
「撫でてやるよ、ガキ!」
「またなんかジウル! 我々はサークル顧問の臨時教師だぞ。こいつをぶちのめしてもなんの特にもならん。壁の絵一枚、破損させても、テーブル一つ倒しても全部責任はこっちだ。
ろくなことにならん。やめておけ。」
「大丈夫だぞ、シホウ。」
ジウルは、笑った。
「この坊やは、けっこう出来る。叩きのめしても母親に泣きつくような真似はせんだろう。」
「あのお・・・・」
ヤンが恐る恐る口を出した。
「魔剣研究会は、けっこうその、ヤバめなところなので。グランダ王都の裏社会と繋がってるって噂もありますので、その、揉めるようなら、ぼくは退部させていただきたく・・・・」
「てめえは、治癒魔法を専攻してるヤンとか言ったな。」
ザジがせせら笑った。
「随分と酷えことを言ってくれるじゃねえか? 名前と顔は覚えたぜ。
殺されたくなければ、今日中に荷物をまとめて退学しな。」
バチン!
ザジの顔がのけぞった。
そのまま、よろよろと後退し、それでも踏みとどまったその顔は、鼻が潰れて血をふいていた。
指を弾いた衝撃波だけで、その効果を生んだシホウは、ゆっくりと前に出た。
「なんだ? デブ。てめえがやるのか・・・」
ザジは喚いた。
「妙な技を使いやがるが、2度めはねえ。」
「ジウルよ。どうも魔道院は、随分と荒んだところのようだなあ。」
「実力主義なものでね。」
ジウルは、首をすくめた。
なにしろ、無抵抗のルト、当時は王太子だったハルトに一方的に戦闘を仕掛けること九十数回。相手がルトでなければ、命が九十数個あっても足りなかった
ボルテックはそんな男であり、若返ったことで、本人は自覚せずとも、すっかりイケイケになっている。
「おうおう? 教師が生徒に暴力とか、こりゃあ見過ごせねえなあ。」
明らかにトラブルに発展するのを待っていたかのように、帯剣した集団が、ゾロゾロと現れた。
シホウがジウルを振り向いた。なんのことか説明しろ、とい顔に、さてどこから説明したものかな、とジウルは考えた。
「魔剣研究会は、俺たちの魔法拳法研究会と、同じような学生のサークル活動だ。サークル活動というのは、学生が主に課外時間にだな」
「それはわかる。こっちを魔王宮の人外のものと一緒にするな。」
「魔剣研究会は幾つもあるサークルの中でも、歴史のあるサークルだ。
魔法においては、アイテムへの付与魔法が、一つのジャンルとして存在しているが、それを武器にかけることは、古来より行われており」
「あのなあ、ジウル。」
シホウは若干、イライラと言った。
「俺は、元冒険者だ。ランゴバルドと、この北のグランダでは細かい習慣はそりゃあ、違うだろうが、学校とかサークルとか付与魔法のこととかは、一般常識としてわかる。」
シホウは太い指をザジと名乗る青年に突きつけた。
「俺が聞きたいのは、あの若僧がなんで俺たちに喧嘩を売ろうとしているか、だ。」
「なあ、おっさん方。」
ザジは、不毛な会話を続けるシホウと、ジウルに寄ってきた。魔道院には一応制服のようなものはあるが、着用は自由である。基本的には、基礎教育を終えた16歳以上(グランダでは成人したとみなされるもの)のものが入校してくるので、今更、服装がどうのと指摘する教官もいなければ、監視機構もない。
それにしても、ものザジと名乗った生徒の、着こなしのだらしのなさと言ったらなかった。
ヘラヘラと笑いながらザジは続けた。
「妙なサークルを、ジャイロが立ち上げたって聞いたんだけど、何よ、これ。
てんで話にならんじゃねえの?」
ザジは、ヤンを睨んだ。それだけでヤンは震え上がる。もともと、戦う術を習ってみようと思っただけでも一念発起だったのだ。魔法の実践応用には、サークルも幾つもあった。
目の前にいるザジのいる、魔剣研究会などはその際たるものだったのだが、正直なところ、レベルについていけないと危惧して、できたばかりの魔法拳法研究会を選んだのである。
そうでなくても、魔剣研究会はけっこう「怖い」サークルだともっぱらの評判では、あったのだ。
ジウル・ボルテックは、そこまでは知らない。
というか、ガキども背比べなど、最初から全く興味がなかった。
「そこまで行くと、まあ、こいつに直接聞くしかねえんじゃないか?」
拳を握って、前に出ようとするので、シホウは慌てて止めた。
少なくともこの部員一名の「魔法拳法研究会」の顧問として、ここにおいて貰っているのだ。
学生と、暴力事件など起こして言い訳があるまい。
「面白いね、おっさん。」
ザジは怯むことなく、間合いを図るようにすり足で、僅かに後退しながら、剣に手をかけた。
「ちょいと遊んでみるかい?」
「撫でてやるよ、ガキ!」
「またなんかジウル! 我々はサークル顧問の臨時教師だぞ。こいつをぶちのめしてもなんの特にもならん。壁の絵一枚、破損させても、テーブル一つ倒しても全部責任はこっちだ。
ろくなことにならん。やめておけ。」
「大丈夫だぞ、シホウ。」
ジウルは、笑った。
「この坊やは、けっこう出来る。叩きのめしても母親に泣きつくような真似はせんだろう。」
「あのお・・・・」
ヤンが恐る恐る口を出した。
「魔剣研究会は、けっこうその、ヤバめなところなので。グランダ王都の裏社会と繋がってるって噂もありますので、その、揉めるようなら、ぼくは退部させていただきたく・・・・」
「てめえは、治癒魔法を専攻してるヤンとか言ったな。」
ザジがせせら笑った。
「随分と酷えことを言ってくれるじゃねえか? 名前と顔は覚えたぜ。
殺されたくなければ、今日中に荷物をまとめて退学しな。」
バチン!
ザジの顔がのけぞった。
そのまま、よろよろと後退し、それでも踏みとどまったその顔は、鼻が潰れて血をふいていた。
指を弾いた衝撃波だけで、その効果を生んだシホウは、ゆっくりと前に出た。
「なんだ? デブ。てめえがやるのか・・・」
ザジは喚いた。
「妙な技を使いやがるが、2度めはねえ。」
「ジウルよ。どうも魔道院は、随分と荒んだところのようだなあ。」
「実力主義なものでね。」
ジウルは、首をすくめた。
なにしろ、無抵抗のルト、当時は王太子だったハルトに一方的に戦闘を仕掛けること九十数回。相手がルトでなければ、命が九十数個あっても足りなかった
ボルテックはそんな男であり、若返ったことで、本人は自覚せずとも、すっかりイケイケになっている。
「おうおう? 教師が生徒に暴力とか、こりゃあ見過ごせねえなあ。」
明らかにトラブルに発展するのを待っていたかのように、帯剣した集団が、ゾロゾロと現れた。
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ご覧いただきありがとうございます。なんとか完結しました。彼らの物語はまだ続きます。後日談https://www.alphapolis.co.jp/novel/807186218/844632510
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