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クエスト 披露宴に出席せよ
バトルロイヤル
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グランダとランゴバルトを行ったり来たりのギムリウスは、この時期、一番働いていたかもしれない。
彼、または彼女、または「それ」はもともと従属種として創られたので、誰かのために働くのは嫌いではなかった。
まして、大好きなルトたちのためならば!
ギムリウスは嬉々として、招待状を渡して回ったのだった。
それが。
「理解不能です。」
ギムリウスの目の中で七つに分烈した目玉がぐるぐると回っている。「目が回る」という状況なのだが、 実際の心情もそれに近い。
ギムリウスとしては、招待する客は厳選して、招待状を配っていた。別に秘密裏に配っていた訳ではないが、大っぴらに喧伝していたわけでもない。
それがなぜ。
横には、階層主たちが座っていた。
場所は、魔王宮第一層、通称「舞踏会場」と呼ばれる広間である。
目の前に集まった腕利きどもは、ざっと100人。
これから、この人数が、結婚式の出場権をかけて争うらしい。
「なんてこんなことに。」
と、ギムリウスは嘆いた。招かれもしない結婚式に、参列したがるものがこれほど居るとは!
グランダ中の冒険者にギルドの腕利きたち、西域の冒険者も多いのは、魔王宮攻略のためである。
魔王宮、とくに2層より先に進めるだけの実力とあるものは、グランダには少なかったのだ。
「ウロボロス鬼兵団」の紋章がついた肩当ての大男が、雄叫びをあげた。もともとは冒険者というよりも傭兵に近い。得意なのは集団戦であるが、個々の戦闘力も決して侮れない。
西域の銀級冒険者だった。
それを冷笑でむかえたのは、長剣を携え、軽装鎧の伊達男だった。グランダの冒険者ギルド「不死鳥の冠」に所属する冒険者ゾルであった。
貴族の御曹司のような気品のある彼が、得意とするのは、腰の魔剣による攻撃。その技前は、ギムリウスの創った変異種を退けたこともある。
指先で紅い輪をくるくると回しているのは、吸血鬼ハンターとしても名高い冒険者“緋”のドルバーザ。魔道によるものか、それともなにかの伝説級の武具なのか、無数の光輪をもって戦う戦士である。
となりには、グランダ最高の剣士であるミア=イアがいる。
以前は「桜蘭」というパーティのリーダだったが、ギムリウスの変異種の前に敗退。以降はドルバーザと行動を共にしている。
騒ぎ立てる冒険者共から一歩、退いて周りを睥睨するのは、クローディア大公国白狼騎士団副長のアイペルだ。
クローディア大公と縁続きの彼は、もしフィオリナになにかあれば大公国を継ぐことになるのだろう。
そのなかでひときわ、異彩を放つのは、身に寸鉄も帯びぬ美女だった。まだ少女と言ってもよい年齢で、可愛らしい顔立ちではあるのだが、その顔も体も、びっしりと刺青で覆い尽くされている。
そして、それがはっきりわかる程度の薄物しか、身につけていない。
銀級パーティ「燭乱天使」のリヨンである。
全員の目は、壇上のギムリウスに集中した。
ギムリウスは、諦めた。
なんでこいつらが、結婚式に出たいのかわからない。わからないけれど、それを腕っ節できめたいならば、べつに反対はしない。
ギムリウスは、魔道拡声器を手に取った。
「えーー~―、きみたちにはこれからころしあいをしてもらいます。」
おおおっ!
いまさら、死を恐れるものはいないようだった。
会場がいっきにヒートアップする!
隣の席のラウル=リンドが、あわてて、ギムリウスの袖を引っ張った。
「いや、べつに死なせなくてもいいでしょ。」
「いや、こういうときは、こう言うもんだと。」
「だ、だれがそんなとこを」
「アキルです。」
ロウと記憶のリンクができるラウル=リンドはその意味を、理解し、うめいた。
「たかが結婚式の出席権をめぐって殺し合いか。さぞ、殺伐とした恐ろしい異世界からきたのだな。アキルとやらは。」
その正体が死霊である第五階層主オロアは、泰然と、あらゆる治癒魔法を展開しつつ、万が一のために魂を吸収できるヒトガタを用意していた。
その実体が不定形のスライムであるところの、第四階層主のミュランは、背後の収納空間にたっぷりと、治癒用のスライムを待機させた。
「そもそも、ルトさまたちの結婚式の参加云々よりももうただの腕試しになっております、ギムリウスさま。」
一歩後ろに控えたギムリウスのユニーク、ヤイバがそうささやいた。
脚部がすべて鋭い刃物になった変異種は、進化により人に近い身体を手に入れている。
刃物になった脚はそのまま、剣と化し、腰の周りを腰みののように、揺れていた。
かく言う彼も、この試合に参加するつもりだったのだが、ギムリウスの眷族が参加するともうなにがなんだかわからなくなる、という理由です止められたのだ。
「人間というのは、その不合理性もふくめ、かくも奥深いものなのだ。」
ギムリウスは知ったかを言ってから(お気に入りのユニークにかつこいいところを見せたかったので)叫んだ。
「バトルロイヤル!はじめ!」
彼、または彼女、または「それ」はもともと従属種として創られたので、誰かのために働くのは嫌いではなかった。
まして、大好きなルトたちのためならば!
ギムリウスは嬉々として、招待状を渡して回ったのだった。
それが。
「理解不能です。」
ギムリウスの目の中で七つに分烈した目玉がぐるぐると回っている。「目が回る」という状況なのだが、 実際の心情もそれに近い。
ギムリウスとしては、招待する客は厳選して、招待状を配っていた。別に秘密裏に配っていた訳ではないが、大っぴらに喧伝していたわけでもない。
それがなぜ。
横には、階層主たちが座っていた。
場所は、魔王宮第一層、通称「舞踏会場」と呼ばれる広間である。
目の前に集まった腕利きどもは、ざっと100人。
これから、この人数が、結婚式の出場権をかけて争うらしい。
「なんてこんなことに。」
と、ギムリウスは嘆いた。招かれもしない結婚式に、参列したがるものがこれほど居るとは!
グランダ中の冒険者にギルドの腕利きたち、西域の冒険者も多いのは、魔王宮攻略のためである。
魔王宮、とくに2層より先に進めるだけの実力とあるものは、グランダには少なかったのだ。
「ウロボロス鬼兵団」の紋章がついた肩当ての大男が、雄叫びをあげた。もともとは冒険者というよりも傭兵に近い。得意なのは集団戦であるが、個々の戦闘力も決して侮れない。
西域の銀級冒険者だった。
それを冷笑でむかえたのは、長剣を携え、軽装鎧の伊達男だった。グランダの冒険者ギルド「不死鳥の冠」に所属する冒険者ゾルであった。
貴族の御曹司のような気品のある彼が、得意とするのは、腰の魔剣による攻撃。その技前は、ギムリウスの創った変異種を退けたこともある。
指先で紅い輪をくるくると回しているのは、吸血鬼ハンターとしても名高い冒険者“緋”のドルバーザ。魔道によるものか、それともなにかの伝説級の武具なのか、無数の光輪をもって戦う戦士である。
となりには、グランダ最高の剣士であるミア=イアがいる。
以前は「桜蘭」というパーティのリーダだったが、ギムリウスの変異種の前に敗退。以降はドルバーザと行動を共にしている。
騒ぎ立てる冒険者共から一歩、退いて周りを睥睨するのは、クローディア大公国白狼騎士団副長のアイペルだ。
クローディア大公と縁続きの彼は、もしフィオリナになにかあれば大公国を継ぐことになるのだろう。
そのなかでひときわ、異彩を放つのは、身に寸鉄も帯びぬ美女だった。まだ少女と言ってもよい年齢で、可愛らしい顔立ちではあるのだが、その顔も体も、びっしりと刺青で覆い尽くされている。
そして、それがはっきりわかる程度の薄物しか、身につけていない。
銀級パーティ「燭乱天使」のリヨンである。
全員の目は、壇上のギムリウスに集中した。
ギムリウスは、諦めた。
なんでこいつらが、結婚式に出たいのかわからない。わからないけれど、それを腕っ節できめたいならば、べつに反対はしない。
ギムリウスは、魔道拡声器を手に取った。
「えーー~―、きみたちにはこれからころしあいをしてもらいます。」
おおおっ!
いまさら、死を恐れるものはいないようだった。
会場がいっきにヒートアップする!
隣の席のラウル=リンドが、あわてて、ギムリウスの袖を引っ張った。
「いや、べつに死なせなくてもいいでしょ。」
「いや、こういうときは、こう言うもんだと。」
「だ、だれがそんなとこを」
「アキルです。」
ロウと記憶のリンクができるラウル=リンドはその意味を、理解し、うめいた。
「たかが結婚式の出席権をめぐって殺し合いか。さぞ、殺伐とした恐ろしい異世界からきたのだな。アキルとやらは。」
その正体が死霊である第五階層主オロアは、泰然と、あらゆる治癒魔法を展開しつつ、万が一のために魂を吸収できるヒトガタを用意していた。
その実体が不定形のスライムであるところの、第四階層主のミュランは、背後の収納空間にたっぷりと、治癒用のスライムを待機させた。
「そもそも、ルトさまたちの結婚式の参加云々よりももうただの腕試しになっております、ギムリウスさま。」
一歩後ろに控えたギムリウスのユニーク、ヤイバがそうささやいた。
脚部がすべて鋭い刃物になった変異種は、進化により人に近い身体を手に入れている。
刃物になった脚はそのまま、剣と化し、腰の周りを腰みののように、揺れていた。
かく言う彼も、この試合に参加するつもりだったのだが、ギムリウスの眷族が参加するともうなにがなんだかわからなくなる、という理由です止められたのだ。
「人間というのは、その不合理性もふくめ、かくも奥深いものなのだ。」
ギムリウスは知ったかを言ってから(お気に入りのユニークにかつこいいところを見せたかったので)叫んだ。
「バトルロイヤル!はじめ!」
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