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宴の後始末 魔道院の後継者
4、再集結! 愚者の盾
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ボルテック卿は、老獪な人物である。
リアモンドとぶん殴り合いをするために、若返った今でもその知識、用意周到さは変わっていない。
彼は、若返ったのをいいことに、諸国漫遊、武者修行の旅に出ようと計画している。そして、そのために空席になる、魔道院の責任者に、賢者ウィルニアを持ってこようと画策した。
ウィルニアは・・・・1000年ばかり前の人物である。
この時点で、ボルテックは正気を疑われても仕方なかったのであるが、実際に彼は、魔王宮でウィルニアに会っている。言葉もかわした。
リアモンドや吸血鬼ロウ=リンド伯爵とは異なり、迷宮から出ることは拒んだが、生きていることは確認できた。
ならば。
実力、ネームバリューどれをとっても魔道院の長にふさわしい。
(リウやルトに相談すれば「人格は?」と言うもっともな質問が返ってきただろうが、残念ながら彼らはそれぞれに忙しくこのときはボルッテクの身近にはいなかった。)
さて、現実的なボルテックは、この「ウィルニアを説得する。」と言うことを一つのクエストとして捉え、これを攻略するためのパーティを集めた。
彼の知る限り、最強のパーティである「愚者の盾」だ。
彼自身をはじめ、斧神の化身アウデリア、勇者クロノ、糸使いのヨウィス、である。
これを超えるパーティがあるとすれば、ハルト王子が迷宮から連れ帰った「魔王と神竜と神獣と真祖」のパーティしかありえない。
もっとも、慎重な判断からフィオリナは、外している。
おそらくクエストが「説得」と言うものに比重が置かれる以上、彼女はふさわしくない、とボルテックは判断したのだ。
これは、話を聞いたフィオリナの実母であるアウデリアも苦笑しつつ、認めた。
ボルテックの誤算があるとすれば、ヨウィスである。
もともと魔道院の学生でもあり、住んでいるのは学内の寮だ。
呼び出すのも簡単であったし、まさか断られることはあるまいと、ボルテックはたかをくくり・・・実際に断りはしなかったのである・・・・が。
いちばん遅れて集合場所に登場したヨウィスは、腕にしっかりと人形を抱き抱えていた。
いや、人形ではない。
頭と肩と胸の一部しかないが、人間だ。
まるで奇怪なオブジェのような人間の残骸をしっかりと、ヨウィスは抱いていた。
いやいやいや。
残骸、ではない。それはちゃんと生きている。
生きて、笑って、しかもしゃべった。
「どうも、みなさん。
聖竜師団以来だねえ。」
生き人形・・・・リヨンは、朗らかに笑っている。
「さすがに、神の降臨に受肉に使われた体は再生しにくいや。
それでもほら。」
リヨンは胸を反らせた。
「もうちょっとでおっぱいができる」
受肉に使われたものがなぜ、その後も生きているのかが、そもそもあり得ないのだが、そのことについての知的な興味はさておき。
「連れて行くのか? これを。ヨウィス。」
「もちろん!」
ヨウィスは、(ヨウィスにしては)力強く答えた。
「一人にしてはおけない。やっと口からものが食べれるようになったんだ。わたしが面倒を見てやらないと。」
「しかし、両手が塞がってしまっていては、糸繰りも使えないだろう?」
「うん、そんときはクロノ、ちょっと預かってて。」
自分が鋼糸を使うため、勇者にリヨンを抱っこさせようと言う判断は・・・・
まあ、アリかな。
クロノも含めた全員が納得したのである。
「俺が、ウィルニアを説得する。」
ボルテックは、一同に宣言した。
「その間、奴がけしかけてくる召喚獣を倒し続けてて欲しい。」
「説得なら昔馴染みのぼくの方が良くないか?」
と、言ったのはクロノ。
初代勇者の転生である彼は、当然、初代勇者パーティのウェルニアとは旧知の間柄である。
「クロノでは、給与その他条件面の話ができまい。」
ボルテックはもっともなことを言ったが、そうすると、あれか、給与とか労働時間、福利厚生などの条件をボルテックが説明している間、ずっとウィルニアが召喚するであろう神話クラスの召喚獣やアンデットと戦わなければならないわけか。
「とりあえず、魔道院の総支配人を受けてくれる気があれば、その時点で攻撃は止めるはずだから」
とボルテックは言った。
それが一番、難しいんじゃないか。
と、ボルテック以外の全員がが思った。
リアモンドとぶん殴り合いをするために、若返った今でもその知識、用意周到さは変わっていない。
彼は、若返ったのをいいことに、諸国漫遊、武者修行の旅に出ようと計画している。そして、そのために空席になる、魔道院の責任者に、賢者ウィルニアを持ってこようと画策した。
ウィルニアは・・・・1000年ばかり前の人物である。
この時点で、ボルテックは正気を疑われても仕方なかったのであるが、実際に彼は、魔王宮でウィルニアに会っている。言葉もかわした。
リアモンドや吸血鬼ロウ=リンド伯爵とは異なり、迷宮から出ることは拒んだが、生きていることは確認できた。
ならば。
実力、ネームバリューどれをとっても魔道院の長にふさわしい。
(リウやルトに相談すれば「人格は?」と言うもっともな質問が返ってきただろうが、残念ながら彼らはそれぞれに忙しくこのときはボルッテクの身近にはいなかった。)
さて、現実的なボルテックは、この「ウィルニアを説得する。」と言うことを一つのクエストとして捉え、これを攻略するためのパーティを集めた。
彼の知る限り、最強のパーティである「愚者の盾」だ。
彼自身をはじめ、斧神の化身アウデリア、勇者クロノ、糸使いのヨウィス、である。
これを超えるパーティがあるとすれば、ハルト王子が迷宮から連れ帰った「魔王と神竜と神獣と真祖」のパーティしかありえない。
もっとも、慎重な判断からフィオリナは、外している。
おそらくクエストが「説得」と言うものに比重が置かれる以上、彼女はふさわしくない、とボルテックは判断したのだ。
これは、話を聞いたフィオリナの実母であるアウデリアも苦笑しつつ、認めた。
ボルテックの誤算があるとすれば、ヨウィスである。
もともと魔道院の学生でもあり、住んでいるのは学内の寮だ。
呼び出すのも簡単であったし、まさか断られることはあるまいと、ボルテックはたかをくくり・・・実際に断りはしなかったのである・・・・が。
いちばん遅れて集合場所に登場したヨウィスは、腕にしっかりと人形を抱き抱えていた。
いや、人形ではない。
頭と肩と胸の一部しかないが、人間だ。
まるで奇怪なオブジェのような人間の残骸をしっかりと、ヨウィスは抱いていた。
いやいやいや。
残骸、ではない。それはちゃんと生きている。
生きて、笑って、しかもしゃべった。
「どうも、みなさん。
聖竜師団以来だねえ。」
生き人形・・・・リヨンは、朗らかに笑っている。
「さすがに、神の降臨に受肉に使われた体は再生しにくいや。
それでもほら。」
リヨンは胸を反らせた。
「もうちょっとでおっぱいができる」
受肉に使われたものがなぜ、その後も生きているのかが、そもそもあり得ないのだが、そのことについての知的な興味はさておき。
「連れて行くのか? これを。ヨウィス。」
「もちろん!」
ヨウィスは、(ヨウィスにしては)力強く答えた。
「一人にしてはおけない。やっと口からものが食べれるようになったんだ。わたしが面倒を見てやらないと。」
「しかし、両手が塞がってしまっていては、糸繰りも使えないだろう?」
「うん、そんときはクロノ、ちょっと預かってて。」
自分が鋼糸を使うため、勇者にリヨンを抱っこさせようと言う判断は・・・・
まあ、アリかな。
クロノも含めた全員が納得したのである。
「俺が、ウィルニアを説得する。」
ボルテックは、一同に宣言した。
「その間、奴がけしかけてくる召喚獣を倒し続けてて欲しい。」
「説得なら昔馴染みのぼくの方が良くないか?」
と、言ったのはクロノ。
初代勇者の転生である彼は、当然、初代勇者パーティのウェルニアとは旧知の間柄である。
「クロノでは、給与その他条件面の話ができまい。」
ボルテックはもっともなことを言ったが、そうすると、あれか、給与とか労働時間、福利厚生などの条件をボルテックが説明している間、ずっとウィルニアが召喚するであろう神話クラスの召喚獣やアンデットと戦わなければならないわけか。
「とりあえず、魔道院の総支配人を受けてくれる気があれば、その時点で攻撃は止めるはずだから」
とボルテックは言った。
それが一番、難しいんじゃないか。
と、ボルテック以外の全員がが思った。
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ご覧いただきありがとうございます。なんとか完結しました。彼らの物語はまだ続きます。後日談https://www.alphapolis.co.jp/novel/807186218/844632510
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