婚約破棄で終わらない! 策謀家王子と腕力家公爵令嬢 チートな二人のそれからはじまる物語り

此寺 美津己

文字の大きさ
上 下
166 / 248
宴の後始末 魔道院の後継者

4、再集結! 愚者の盾

しおりを挟む
ボルテック卿は、老獪な人物である。

リアモンドとぶん殴り合いをするために、若返った今でもその知識、用意周到さは変わっていない。

彼は、若返ったのをいいことに、諸国漫遊、武者修行の旅に出ようと計画している。そして、そのために空席になる、魔道院の責任者に、賢者ウィルニアを持ってこようと画策した。

ウィルニアは・・・・1000年ばかり前の人物である。
この時点で、ボルテックは正気を疑われても仕方なかったのであるが、実際に彼は、魔王宮でウィルニアに会っている。言葉もかわした。

リアモンドや吸血鬼ロウ=リンド伯爵とは異なり、迷宮から出ることは拒んだが、生きていることは確認できた。
ならば。

実力、ネームバリューどれをとっても魔道院の長にふさわしい。

(リウやルトに相談すれば「人格は?」と言うもっともな質問が返ってきただろうが、残念ながら彼らはそれぞれに忙しくこのときはボルッテクの身近にはいなかった。)

さて、現実的なボルテックは、この「ウィルニアを説得する。」と言うことを一つのクエストとして捉え、これを攻略するためのパーティを集めた。
彼の知る限り、最強のパーティである「愚者の盾」だ。

彼自身をはじめ、斧神の化身アウデリア、勇者クロノ、糸使いのヨウィス、である。
これを超えるパーティがあるとすれば、ハルト王子が迷宮から連れ帰った「魔王と神竜と神獣と真祖」のパーティしかありえない。

もっとも、慎重な判断からフィオリナは、外している。
おそらくクエストが「説得」と言うものに比重が置かれる以上、彼女はふさわしくない、とボルテックは判断したのだ。

これは、話を聞いたフィオリナの実母であるアウデリアも苦笑しつつ、認めた。

ボルテックの誤算があるとすれば、ヨウィスである。
もともと魔道院の学生でもあり、住んでいるのは学内の寮だ。

呼び出すのも簡単であったし、まさか断られることはあるまいと、ボルテックはたかをくくり・・・実際に断りはしなかったのである・・・・が。

いちばん遅れて集合場所に登場したヨウィスは、腕にしっかりと人形を抱き抱えていた。

いや、人形ではない。
頭と肩と胸の一部しかないが、人間だ。

まるで奇怪なオブジェのような人間の残骸をしっかりと、ヨウィスは抱いていた。

いやいやいや。
残骸、ではない。それはちゃんと生きている。

生きて、笑って、しかもしゃべった。


「どうも、みなさん。
聖竜師団以来だねえ。」

生き人形・・・・リヨンは、朗らかに笑っている。

「さすがに、神の降臨に受肉に使われた体は再生しにくいや。
それでもほら。」

リヨンは胸を反らせた。

「もうちょっとでおっぱいができる」

受肉に使われたものがなぜ、その後も生きているのかが、そもそもあり得ないのだが、そのことについての知的な興味はさておき。

「連れて行くのか? これを。ヨウィス。」

「もちろん!」

ヨウィスは、(ヨウィスにしては)力強く答えた。

「一人にしてはおけない。やっと口からものが食べれるようになったんだ。わたしが面倒を見てやらないと。」

「しかし、両手が塞がってしまっていては、糸繰りも使えないだろう?」

「うん、そんときはクロノ、ちょっと預かってて。」

自分が鋼糸を使うため、勇者にリヨンを抱っこさせようと言う判断は・・・・



まあ、アリかな。

クロノも含めた全員が納得したのである。

「俺が、ウィルニアを説得する。」
ボルテックは、一同に宣言した。
「その間、奴がけしかけてくる召喚獣を倒し続けてて欲しい。」

「説得なら昔馴染みのぼくの方が良くないか?」
と、言ったのはクロノ。
初代勇者の転生である彼は、当然、初代勇者パーティのウェルニアとは旧知の間柄である。

「クロノでは、給与その他条件面の話ができまい。」
ボルテックはもっともなことを言ったが、そうすると、あれか、給与とか労働時間、福利厚生などの条件をボルテックが説明している間、ずっとウィルニアが召喚するであろう神話クラスの召喚獣やアンデットと戦わなければならないわけか。

「とりあえず、魔道院の総支配人を受けてくれる気があれば、その時点で攻撃は止めるはずだから」

とボルテックは言った。

それが一番、難しいんじゃないか。

と、ボルテック以外の全員がが思った。
しおりを挟む
ご覧いただきありがとうございます。なんとか完結しました。彼らの物語はまだ続きます。後日談https://www.alphapolis.co.jp/novel/807186218/844632510
感想 3

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...