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宴の後始末 魔道院の後継者
1,ボルテック卿はクローディア公に直談判した!
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もともと、ポルテックという人物はひとの都合など顧みない、自己本位のかたまりのような人物だと思われていた。
そこに若さが加わったので、始末が悪い。
この日、ギルド『不死鳥の冠』はまたまたやっかいな客人を迎えていた。
聖光教の総本山ミトラから、この日たどり着いたばかりの、三名である。
1人は聖女と思しき清楚な女性、司祭服の男は三十代だろう。実直そうな顔立ちであったが、服の上からでもわかる筋肉は、説教と祈りだけに使うにははったつしすぎていた。
スズカゼとアムゼリと名乗った。
もう、1人はとらえどころのない小男。
少々薄くなり始めた、頭髪もふくめ、風采のあからないことおびただしい。
「いやあ、あたしなんざぁ、しがない運び屋で。」
と、スカールと名乗ったこの男は、額を叩いて謙遜していたが、いやいや、運び屋がなんで貴族との打ち合わせに同席するものか。
強者を見抜くことに長けたクローディアの目には、ラウレスと同質のものが感じられた。
まさか、人化した竜か!
いわゆる古竜のたぐいを、相手国の了承もなしに送り込めば、もう宣戦布告とかわらない、と戦争についての国際協定に定められている。
実際にそれで、戦争が起こったためしがないのは、古竜というものの個体数の少なさと、それを自国の戦争目的で他国に送り込める国家が、ほとんど存在しなかったことによる。
今回の聖帝国も、元もと、軍事的な威圧では、竜人の一部隊で足りると考えていた。
ラウレスは、まあ、後見のような立場と、あとは竜人たちを「運ぶ」ための足がわりであって、実際に、竜の姿を取って、王都の人々を恐怖のどん底に陥れた挙句に、何もしないまま、ブレスを跳ね返され、翼を切られた墜落し、王都の人々をドン引きされるなどとは、聖帝国も聖光教も全く考えておらず。
黒い古竜がよたよたと、飛びながら南の方に去って行くのは、なかなか哀愁をそそるものが会った。
そのから2日しかたっていない。
ミトラからの使者と名乗るこの3人が、「不死鳥の冠」に現れたのは。
どうもラウレスとは全くの行き違いになっていたらしい。
彼らは、最初、聖光教会のグランダ支部を訪ねたのだが、竜人部隊はそこをすでに引き払っていた。
聖光教会としては、市中にてトラブルを続出させた挙句に、王都を焼き払うと宣言して、何も出来ずに逃げ帰ったヤツの配下など、泊めておいてはどんなトラブルになるやもしれない、とのことで、昨日中に竜人たちを追い出したのだった。
そこで、右往左往したあげく、クローディアの名前とここの場所を聞いて、やってきたのはもう午後をだいぶ回っていた。
三名ともに(当たり前ではあるが)疲れ果てていて機嫌は良くない。
そこへ、ボルテックの襲来である。
クローディアとしても頭を抱えざると得ない。
「ミトラからのご使者の皆さま。こちらは、グランダ魔道院総支配ボルテック卿・・・・・のひ孫にあたる、ジウル=ボルッテクと申される。」
「なるほど、ボルテック殿のお名前はわたしも聞いている。」
アムゼリが頷いた。
「そのお孫殿か。急な話であろうが、まずはこちらを優先してもらおう。しばし、待たれよ。
あるいは、日をあたらめるが良かろうと、思う。」
「ミトラの“破壊神父”アムゼリ殿に、魔法使い殺しの聖女スズカゼ殿。
それにそっちは、疾風竜のスカール殿だな。
俺は、ジウル=ボルテック、かのボルテック卿の、ひいひいひい・・・」
年代の辻褄を合わせるためか、指を降り始めるボルテックを見るクローディアの目が冷ややかな物になるのは、仕方のない話だろう。
その設定くらい最初から考えてきてほしい。
それに初対面の相手をいきなり2つ名で呼ぶな。
「ひい孫の、ジウル=ボルテック、だ。
魔力と拳法を併せ持った命奪咆哮拳を使う。」
あと、拳法の流派もいい加減に決めよう。
「話というのは他でもない。魔道院の後継者の問題だ。」
異名はともあれ、アムゼリはそれなりに礼儀正しく喋ったはずだ。それ無視するのはどんな物だろう。
果たしてアムゼリの額に、青筋が浮かんだ。
「一応、候補者は出揃ったが、どれもこれも小物ばかりでな。しかもレベルが低いところで拮抗しているだけに、誰かに決めれば周りが反発する。
一体どうしたものか。」
「口を挟むようですが。」
聖女スズカゼも不快感を懸命に隠している。
「ボルテック卿は、引退されたのですか? ご高齢なのは存じておりましたが、なぜ急に。」
「それが、その・・・ここにきて魔道の研究に集中したいと言い出して。」
ボルテックは、そんなことを聞かれるとは思っていなかったらしく、目を白黒させながら、答えた。
「俗世を離れて、邪魔の入らないところで魔道の研究を・・・・それこそ『魔王宮』の中で、でも・・・・」
ああっ!!
とボルテックは叫んだ。
自分でしゃべっていて気がついたのだ。
そうだ!
その手があった!!
「どうされた?・・・ボルテ・・・ジウル殿?」
クローディアが尋ねた。
「魔道院の後継者だ。そうだ、あいつがいたじゃあないか。」
「あいつ、とは?」
「ウィルニアだ。あいつに魔道院を任せよう!!」
ミトラの3人は異性物を見る目で、ボルテックを眺めた。
そこに若さが加わったので、始末が悪い。
この日、ギルド『不死鳥の冠』はまたまたやっかいな客人を迎えていた。
聖光教の総本山ミトラから、この日たどり着いたばかりの、三名である。
1人は聖女と思しき清楚な女性、司祭服の男は三十代だろう。実直そうな顔立ちであったが、服の上からでもわかる筋肉は、説教と祈りだけに使うにははったつしすぎていた。
スズカゼとアムゼリと名乗った。
もう、1人はとらえどころのない小男。
少々薄くなり始めた、頭髪もふくめ、風采のあからないことおびただしい。
「いやあ、あたしなんざぁ、しがない運び屋で。」
と、スカールと名乗ったこの男は、額を叩いて謙遜していたが、いやいや、運び屋がなんで貴族との打ち合わせに同席するものか。
強者を見抜くことに長けたクローディアの目には、ラウレスと同質のものが感じられた。
まさか、人化した竜か!
いわゆる古竜のたぐいを、相手国の了承もなしに送り込めば、もう宣戦布告とかわらない、と戦争についての国際協定に定められている。
実際にそれで、戦争が起こったためしがないのは、古竜というものの個体数の少なさと、それを自国の戦争目的で他国に送り込める国家が、ほとんど存在しなかったことによる。
今回の聖帝国も、元もと、軍事的な威圧では、竜人の一部隊で足りると考えていた。
ラウレスは、まあ、後見のような立場と、あとは竜人たちを「運ぶ」ための足がわりであって、実際に、竜の姿を取って、王都の人々を恐怖のどん底に陥れた挙句に、何もしないまま、ブレスを跳ね返され、翼を切られた墜落し、王都の人々をドン引きされるなどとは、聖帝国も聖光教も全く考えておらず。
黒い古竜がよたよたと、飛びながら南の方に去って行くのは、なかなか哀愁をそそるものが会った。
そのから2日しかたっていない。
ミトラからの使者と名乗るこの3人が、「不死鳥の冠」に現れたのは。
どうもラウレスとは全くの行き違いになっていたらしい。
彼らは、最初、聖光教会のグランダ支部を訪ねたのだが、竜人部隊はそこをすでに引き払っていた。
聖光教会としては、市中にてトラブルを続出させた挙句に、王都を焼き払うと宣言して、何も出来ずに逃げ帰ったヤツの配下など、泊めておいてはどんなトラブルになるやもしれない、とのことで、昨日中に竜人たちを追い出したのだった。
そこで、右往左往したあげく、クローディアの名前とここの場所を聞いて、やってきたのはもう午後をだいぶ回っていた。
三名ともに(当たり前ではあるが)疲れ果てていて機嫌は良くない。
そこへ、ボルテックの襲来である。
クローディアとしても頭を抱えざると得ない。
「ミトラからのご使者の皆さま。こちらは、グランダ魔道院総支配ボルテック卿・・・・・のひ孫にあたる、ジウル=ボルッテクと申される。」
「なるほど、ボルテック殿のお名前はわたしも聞いている。」
アムゼリが頷いた。
「そのお孫殿か。急な話であろうが、まずはこちらを優先してもらおう。しばし、待たれよ。
あるいは、日をあたらめるが良かろうと、思う。」
「ミトラの“破壊神父”アムゼリ殿に、魔法使い殺しの聖女スズカゼ殿。
それにそっちは、疾風竜のスカール殿だな。
俺は、ジウル=ボルテック、かのボルテック卿の、ひいひいひい・・・」
年代の辻褄を合わせるためか、指を降り始めるボルテックを見るクローディアの目が冷ややかな物になるのは、仕方のない話だろう。
その設定くらい最初から考えてきてほしい。
それに初対面の相手をいきなり2つ名で呼ぶな。
「ひい孫の、ジウル=ボルテック、だ。
魔力と拳法を併せ持った命奪咆哮拳を使う。」
あと、拳法の流派もいい加減に決めよう。
「話というのは他でもない。魔道院の後継者の問題だ。」
異名はともあれ、アムゼリはそれなりに礼儀正しく喋ったはずだ。それ無視するのはどんな物だろう。
果たしてアムゼリの額に、青筋が浮かんだ。
「一応、候補者は出揃ったが、どれもこれも小物ばかりでな。しかもレベルが低いところで拮抗しているだけに、誰かに決めれば周りが反発する。
一体どうしたものか。」
「口を挟むようですが。」
聖女スズカゼも不快感を懸命に隠している。
「ボルテック卿は、引退されたのですか? ご高齢なのは存じておりましたが、なぜ急に。」
「それが、その・・・ここにきて魔道の研究に集中したいと言い出して。」
ボルテックは、そんなことを聞かれるとは思っていなかったらしく、目を白黒させながら、答えた。
「俗世を離れて、邪魔の入らないところで魔道の研究を・・・・それこそ『魔王宮』の中で、でも・・・・」
ああっ!!
とボルテックは叫んだ。
自分でしゃべっていて気がついたのだ。
そうだ!
その手があった!!
「どうされた?・・・ボルテ・・・ジウル殿?」
クローディアが尋ねた。
「魔道院の後継者だ。そうだ、あいつがいたじゃあないか。」
「あいつ、とは?」
「ウィルニアだ。あいつに魔道院を任せよう!!」
ミトラの3人は異性物を見る目で、ボルテックを眺めた。
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ご覧いただきありがとうございます。なんとか完結しました。彼らの物語はまだ続きます。後日談https://www.alphapolis.co.jp/novel/807186218/844632510
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