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宴の後始末
12.竜殺しの男
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ゴルバはもともと寡黙な男である。
元々は西域でもかなりの辺境。狩をもって身を立てる民族の出身だ。
中でも彼の属する部族は「竜狩」と呼ばれていた。勇猛さと高い戦闘力には定評がある。
だが、あまり、羽振りは良くない。
竜などというものはそうそうごろごろといないからだ。
勢い、村のものは傭兵あるいは冒険者として生計を立てる者も多い。
ゴルバも例外ではなかった。
いままでに竜を12頭、古竜を3頭を屠っている。“竜殺”との二つ名もついた。
実際、今回迷宮主に敗れるまでは無敗を誇っていた。
岩を削り出したよう顔面は、表情に乏しく、それなりにつきあいの長いマヌカにもいったい何を考えているのかは、なかなかわからない。
「気を落とすな。」
とマヌカは言ってみたが、ゴルバは首を横に振った。
「別に気を落としてはおらん。」
「いや、負けただろ、おまえ。けっこうな実力差で。」
「上には上がいる。それだけのことだ。」
唇に野太い笑みが浮かんでいる。
マヌカは正直、彼の微笑みなど初めて見た。
「リアモンド…それがやつの真名だというのなら、神話に出てくる竜姫だ。
戦えただけで光栄。命があったのは万に一つの僥倖だ。」
そう言いながらも、7件目の鍛冶屋で、折れた屠竜剣の修復を断られたゴルバは、流石に天を仰いだ。
「負けたことは実力差であきらめもつく。だが、二度と戦えないのは困る。」
「王都といっても所詮は北の田舎町だ。
おまえの屠竜剣のような大業物の修理は、無理だろう。いきなり隠れた名人のたぐいが現れて、『おお、待っていたぞ。竜殺し。おまえにふさわしい剣をぜひわたしにうたせてくれ。』とか言い出す可能性はゼロだ。
ミトラに戻るまで修理は諦めるのだな。
どうせ、クリュークがあの状態では、戦いなど起こるまい。」
「それでは、リアモンド殿と再戦できないではないか。」
大真面目にゴルバは言って、マヌカを呆れされた。
「まだ、やるつもりか?」
「正直、もっと修行をつんでから再会したい。だが、相手は神話の竜姫だ。この機会をのがしたら再戦など望めんだろう・・・・・
いや、すまんな。口数が多くなりすぎた。『竜狩』の一族にとって、目の前に強大な竜がいてそれと戦わずして日々を過ごすことなど考えられぬのだ。」
「それはかなり変わった考え方だな。」
マヌカは自分を棚にあげてそんなことを言った。
「それでも剣ももたずに殴り込みに行こうとしないだけ、ましか。
ならば、新しい剣をもとめてみてはどうだ?
望み薄ではあるが、意外な掘り出し物があるかもしれん。剣を治すよりは、まだ可能性が高いかもしれない。」
ゴルバはしばらく考えて頷いた。
「ならば、今度は武器屋を巡ってみよう。ついてくるか?」
「乗りかかった船だ。付き合おう。質のいい剣さえあれば付与魔法をかけてやれるかもしれん。」
元々は西域でもかなりの辺境。狩をもって身を立てる民族の出身だ。
中でも彼の属する部族は「竜狩」と呼ばれていた。勇猛さと高い戦闘力には定評がある。
だが、あまり、羽振りは良くない。
竜などというものはそうそうごろごろといないからだ。
勢い、村のものは傭兵あるいは冒険者として生計を立てる者も多い。
ゴルバも例外ではなかった。
いままでに竜を12頭、古竜を3頭を屠っている。“竜殺”との二つ名もついた。
実際、今回迷宮主に敗れるまでは無敗を誇っていた。
岩を削り出したよう顔面は、表情に乏しく、それなりにつきあいの長いマヌカにもいったい何を考えているのかは、なかなかわからない。
「気を落とすな。」
とマヌカは言ってみたが、ゴルバは首を横に振った。
「別に気を落としてはおらん。」
「いや、負けただろ、おまえ。けっこうな実力差で。」
「上には上がいる。それだけのことだ。」
唇に野太い笑みが浮かんでいる。
マヌカは正直、彼の微笑みなど初めて見た。
「リアモンド…それがやつの真名だというのなら、神話に出てくる竜姫だ。
戦えただけで光栄。命があったのは万に一つの僥倖だ。」
そう言いながらも、7件目の鍛冶屋で、折れた屠竜剣の修復を断られたゴルバは、流石に天を仰いだ。
「負けたことは実力差であきらめもつく。だが、二度と戦えないのは困る。」
「王都といっても所詮は北の田舎町だ。
おまえの屠竜剣のような大業物の修理は、無理だろう。いきなり隠れた名人のたぐいが現れて、『おお、待っていたぞ。竜殺し。おまえにふさわしい剣をぜひわたしにうたせてくれ。』とか言い出す可能性はゼロだ。
ミトラに戻るまで修理は諦めるのだな。
どうせ、クリュークがあの状態では、戦いなど起こるまい。」
「それでは、リアモンド殿と再戦できないではないか。」
大真面目にゴルバは言って、マヌカを呆れされた。
「まだ、やるつもりか?」
「正直、もっと修行をつんでから再会したい。だが、相手は神話の竜姫だ。この機会をのがしたら再戦など望めんだろう・・・・・
いや、すまんな。口数が多くなりすぎた。『竜狩』の一族にとって、目の前に強大な竜がいてそれと戦わずして日々を過ごすことなど考えられぬのだ。」
「それはかなり変わった考え方だな。」
マヌカは自分を棚にあげてそんなことを言った。
「それでも剣ももたずに殴り込みに行こうとしないだけ、ましか。
ならば、新しい剣をもとめてみてはどうだ?
望み薄ではあるが、意外な掘り出し物があるかもしれん。剣を治すよりは、まだ可能性が高いかもしれない。」
ゴルバはしばらく考えて頷いた。
「ならば、今度は武器屋を巡ってみよう。ついてくるか?」
「乗りかかった船だ。付き合おう。質のいい剣さえあれば付与魔法をかけてやれるかもしれん。」
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