婚約破棄で終わらない! 策謀家王子と腕力家公爵令嬢 チートな二人のそれからはじまる物語り

此寺 美津己

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第138話 史上最強のパーティ

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「自分の息子のはずだが、顔を忘れたのか?」

アウデリアが冷静に言う。

「いや、アウデリア。そういえば母上は、この年頃のオレの顔を知らんのだ。
幼少期に、わけあって、引き離されて以来、再会したのは、オレが成人してから。西方域への侵攻がはじまってからだ。」

「それにしても、面影ってもんがあるだろう?」

アウデリアは不満そうに言った。その対面がおもったより劇的なものにならなかったのが不満らしい。

「母上、わけあって・・・と言うか、例の魔素の過剰流出を抑えるために、体を少年時代にまで戻した。
50年前だ。
結果は、この通り。」

バスズ=リウは手を広げてみせた。

「体内循環と合わせて、魔素の放出はゼロだ。もう迷宮に閉じこもる必要はない。」

ザザリは、メアは理解に苦しむように顔をしかめ、おずおずとリウに手を差し伸べた。

「・・・・おかえり、リウ。」
「・・・・ただいま、母さん。」

2つの影はしばし溶け合い、そのまましばらく離れなかった。

「リウ・・・・しばらく、見ない間にちっちゃくなって・・・」
「あんたまでそれを言うかな。」

むっとしたようにリウは体を離す。

「わたしは・・・あなたをあの穴蔵から出してあげたくて。
信頼できる仲間や愛する伴侶と、寂しくない人生を歩んでほしくて・・・」

「まあ、気持ちはわかるし、感謝もする。
単純に言って、行き違いってやつだ。オレが魔素の軽減に成功したことを告げるまもなく、母上は、転生にはいってしまった。

この転生ってやつはやっかいで、不滅の命を求める魔導師ども間でもけっこう議論がある。

つまり、転生した人間を文字通り前と同じ人格とみなすのか、記憶や能力を引き継いだだけの別人とみなすのか、だ。

だが、これについてはオレに持論がある。」

そう言ってリウはにっこりと笑った。
見るものを溶かすような笑顔だった。

「一回、余分に人生をもらったんだ。前世にしばられることなく、人生を謳歌しろってことだ。」

ザザリは、傷ついたようにうつむいた。

「わたしは・・・あなたのためを思って・・・」

「ありがたいが、その方法だとまずい。
弟が消滅してしまう。」

「お、と、お、と?」

「エルマートだよ。ザザリがオレの母親ならあとから生を受けたエルマートは弟だろう?」

「エルマートが、弟。リウの弟・・・」
その言葉を噛みしめるようにザザリはつぶやいた。
「わたしは・・・・あなたという魂とエルマートという受け皿になる体を一対で考えてた・・・」

「転生酔い、だな。」
リウは、静かに言う。
「記憶の混乱、前世と今世の価値観の相違で正しい判断ができなくなる。
酔いは醒めたか、ザザリ。」


それは、子から母にする問いかけではなく、失敗をしでかした臣下に対するものだったかもしれない。
リウは・・・・

確かに王だった。


ザザリはうなだれた。
「・・・わたしはどうやって、この罪を償えば・・・」

「それについては、ルトがよろしくやっている。

逆にルトがうまく動かなかったら、グランダとクローディア軍が全面戦争だ。
いまごろは、この迷宮を除く全土がクローディア『公国』に占領されている。
当然、血も流れただろうな。何千人かの。」

「なるほど。」
ザザリはルトを見たが、それは必ずしも好意的な視線ではなかった。
「なるほど。メアがいくら抵抗しようがかまわず、あれを殺しておけば・・・」

「そういう考え方もできるな。その場合、オレに呼びかけるために『魔王宮』を解放することになるんだろうが、まあ、七層に到達するまで、おまえの人間としての定命のうちには無理だろう。
まあ、なんどか転生を繰り返しながら、待つのもいいがな。」

リウはうんっ伸びをして、ルトを振り返った。

「こんなところでどうだ?」

「充分だと思います。」

ルトは、歩み出て、ザザリの影に隠れるようにしているグランダ王に近寄った。

「な、な、なんだ? ハルトか! わしはおまえに最強のパーティを作るように命じたはずだ。
それを放り出してこんなところで、なにをしている!」

これまでの会話が耳にはいらなかったのだろうか。いやザザリの精神支配のせいだろう。
これでは、もう「王」を務めるのは無理かもしれない。

「父上。この者たちがわたくしの」
ルトはうやうやしく一礼した。
いつの間にか、ギムリウスやロウ、リアモンドも集まっていた。リウもふくめ、わざとらしく礼をする。
「最強のパーティです。」

そんなものはわしは認めんっ!
英雄級の冒険者はいるのか? せめて黄金級は?
どこの馬の骨ともしらんやつらをかき集めたところで、わしは絶対に認めんぞっ。

グランダがわめいている。

ザザリはそっと、精神支配の方向を変えた。
認めないのは勝手だが、それはグランダという国が世界から消滅しかねない。
憑き物がおちたように、グランダ王が静かになる。

「い、いやしかし、その」
グランダ王は困ったようにまわりを見回した。
「『魔王宮』をどの程度、攻略したのだ?」

「まあ、陛下。」
ザザリはメアの表情でやさしい王の顔をなぜた。
「かれらは『魔王宮』そのものです。」
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