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第126話 酔い醒ましの魔法
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「あれが、ザザリか、メアか、だって?」
魔族の槍師の放つ渦巻きと、ギムリウスの怪光線がぶつかり、そこここで爆発が起きる。
それ自体は、互角の威力があって、互いに相殺されてはいるものの、それだけで城塞でも吹き飛ぶほどの衝撃波が発するのは止めることができない。
しっかりと「陣」を組み、「攻撃」と「防御」の付与魔法で強化されたザザリたちはともかく、人の姿をとっているリアモンドは自身を守る障壁を展開せざるを得ない。
竜鱗の防御はともかく、無様に吹き飛ばされるのは気が進まないのだ。
例えば、調子にのって飛んでいた吸血鬼が、制御を失って地面に叩きつけられてるように。
リウもまた。
負傷しているルトを守るために障壁を展開させていた。ザザリの召喚した黒狼の火炎は、片手でさばいていたものの、ひっきりなしの衝撃波はかえって始末が悪い。
「そう言うおまえはどう思うんだ?
あれは、かつてザザリと呼ばれた闇森の魔女か。それともグランダ王妃メア、か。」
「ザザリならばこんなことはしないし、メアだったらこんなことはできない。」
ルトは、軽く手を握ってみたり、肩を回したりして痛みがないのを確認している。
障壁の外は、爆風の嵐だ。巻き上げられた土砂にまじって、岩も飛び交う大惨事である。
生身の体なら、死以前に原型を留めないひき肉になること必至。
「つまり、今の彼女はザザリでもメアでもない。」
「千年前におまえのような部下がいたらな。」
リウはため息をついた。
「ギムリウス! 本気でやれ! いつまでもこんなところに突っ立ってはいられん。」
「本気って」
「安心しろ。蜘蛛軍団や本体を召喚したりはしない。その前段階だ。」
ギムリウムの怪光線が、魔族の槍使いを捕らえた。光の奔流に押し流される彼女を大楯の男がキャッチし、そのまま、彼らの「陣」に連れ帰る。
連携は明らかに向こうが上だった。
「いま、転移を使いましたね、ギムリウス。」
「速度で互角なら転移を使われたら避けようもないだろう?」
「しかし、速度で互角、ですか? 魔王宮の階層主ですよ。」
「魔素によって、強化された魔族がいかにやっかいなものかわかるだろう?
千年前も、およそ、神獣、精霊、神々までが人類側にたっていてさえ、魔族の侵攻を止められなかったんだぞ?」
爆風の中、動きを止めていたザザリの召喚獣、双頭の狼たちが再び動き出した。
半数は、黒い炎を吐き出し、半数は牙をむいて殺到する。
その前に、ロウと、ギムリウスが立ちふさがる。
ロウは、鉄の輝きをもつ爪で。
ギムリウスは、白い呪剣で。
次々と、狼を屠っていった。
「ふむ? この程度の魔獣は時間かせぎくらいにしかならんが?」
リウは、つぶやいた。
「時間を稼いでますね。未だにあの魔術師は付与魔法を次々かけ続けています。
それぞれの魔法が、相乗効果をもたらし、集団としてあのチームの力を限りなく底上げしていく。」
「それは、千年前にはなかった技術だ。」
「『城塞魔法』と呼ばれてます。実際に戦場で使われることは少ない。しかるべき対処をされてしまいますからね。使われるのは10人未満のチーム戦。
相手のスキをついて、気がついたときには・・・って使い方が有効です。」
「今回は? スキをつかれたわけか?」
「いやあ。」
ルトは破顔した。
「このくらいのハンデは与えてやるべきか、と。
そのうえで、圧倒させないと。」
「ふむ?」
「“酔い”は覚めないでしょう。」
魔族の槍師の放つ渦巻きと、ギムリウスの怪光線がぶつかり、そこここで爆発が起きる。
それ自体は、互角の威力があって、互いに相殺されてはいるものの、それだけで城塞でも吹き飛ぶほどの衝撃波が発するのは止めることができない。
しっかりと「陣」を組み、「攻撃」と「防御」の付与魔法で強化されたザザリたちはともかく、人の姿をとっているリアモンドは自身を守る障壁を展開せざるを得ない。
竜鱗の防御はともかく、無様に吹き飛ばされるのは気が進まないのだ。
例えば、調子にのって飛んでいた吸血鬼が、制御を失って地面に叩きつけられてるように。
リウもまた。
負傷しているルトを守るために障壁を展開させていた。ザザリの召喚した黒狼の火炎は、片手でさばいていたものの、ひっきりなしの衝撃波はかえって始末が悪い。
「そう言うおまえはどう思うんだ?
あれは、かつてザザリと呼ばれた闇森の魔女か。それともグランダ王妃メア、か。」
「ザザリならばこんなことはしないし、メアだったらこんなことはできない。」
ルトは、軽く手を握ってみたり、肩を回したりして痛みがないのを確認している。
障壁の外は、爆風の嵐だ。巻き上げられた土砂にまじって、岩も飛び交う大惨事である。
生身の体なら、死以前に原型を留めないひき肉になること必至。
「つまり、今の彼女はザザリでもメアでもない。」
「千年前におまえのような部下がいたらな。」
リウはため息をついた。
「ギムリウス! 本気でやれ! いつまでもこんなところに突っ立ってはいられん。」
「本気って」
「安心しろ。蜘蛛軍団や本体を召喚したりはしない。その前段階だ。」
ギムリウムの怪光線が、魔族の槍使いを捕らえた。光の奔流に押し流される彼女を大楯の男がキャッチし、そのまま、彼らの「陣」に連れ帰る。
連携は明らかに向こうが上だった。
「いま、転移を使いましたね、ギムリウス。」
「速度で互角なら転移を使われたら避けようもないだろう?」
「しかし、速度で互角、ですか? 魔王宮の階層主ですよ。」
「魔素によって、強化された魔族がいかにやっかいなものかわかるだろう?
千年前も、およそ、神獣、精霊、神々までが人類側にたっていてさえ、魔族の侵攻を止められなかったんだぞ?」
爆風の中、動きを止めていたザザリの召喚獣、双頭の狼たちが再び動き出した。
半数は、黒い炎を吐き出し、半数は牙をむいて殺到する。
その前に、ロウと、ギムリウスが立ちふさがる。
ロウは、鉄の輝きをもつ爪で。
ギムリウスは、白い呪剣で。
次々と、狼を屠っていった。
「ふむ? この程度の魔獣は時間かせぎくらいにしかならんが?」
リウは、つぶやいた。
「時間を稼いでますね。未だにあの魔術師は付与魔法を次々かけ続けています。
それぞれの魔法が、相乗効果をもたらし、集団としてあのチームの力を限りなく底上げしていく。」
「それは、千年前にはなかった技術だ。」
「『城塞魔法』と呼ばれてます。実際に戦場で使われることは少ない。しかるべき対処をされてしまいますからね。使われるのは10人未満のチーム戦。
相手のスキをついて、気がついたときには・・・って使い方が有効です。」
「今回は? スキをつかれたわけか?」
「いやあ。」
ルトは破顔した。
「このくらいのハンデは与えてやるべきか、と。
そのうえで、圧倒させないと。」
「ふむ?」
「“酔い”は覚めないでしょう。」
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ご覧いただきありがとうございます。なんとか完結しました。彼らの物語はまだ続きます。後日談https://www.alphapolis.co.jp/novel/807186218/844632510
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