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第108話 迷宮に棲まうもの
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バズス=リウ、人類から魔王とよばれた男は、おおむね幽閉生活を楽しんでいた、と言って良い。
迷宮は、『外』からは分離されたひとつの世界だった。
安定して存続するようになるまで、数十年の歳月はかかったが。
これは、さすがの天才、大賢者ウィルニアにしても理論の実際には差があったと、いうことなのだろう。
この間、人類圏、のちの世で西域と呼ばれることになる比較的温暖で住みやすい地域から、魔族を撤退させ、北方へ。
さらに、新たに山脈をもって、人類との生存圏を分断し、闇森となる深い森林地帯は、人類の侵攻も、あるいは魔族側からの侵攻をも著しく困難なものとさせた。
勇者が、立ち上げた北の王国は、多くの難民を吸収した。
グランダと呼ばれるこの国は、西方、中原から遠いながらも、周りのいくつかの小国を併呑し、隆盛を極めることとなる。
バズス=リウとウィルニアの迷宮は、そこに魔王を封じこめたという伝説から『魔王宮』と呼ばれ、多くの冒険者たちの狩り場となった。
迷宮は当初は三百層を超えたのだが(これは「いろんな世界をつくってみよう」と調子にのったバズス=リウとウィルニアの悪ふざけである)そのうち迷宮の運営をサポートできる階層主の数だけ、階層があればいい、ということに気づき、最終的には階層は、第7層までになった。
迷宮は快適ではあった。
肉体的にはバスズ=ルウは人間ではあったが、いかなる種族の「試し」にも耐えられるような力を持ち合わせていた。
魔素の濃さなど歯牙にもかけない竜族や、知性をもつスライム、創造主に捨てられた神獣、ウィルニアと旧知の真祖吸血鬼など、階層主を任せることができるような友人たちも増えていった。
彼のもつ魔素で、凶暴化してしまう臣下に囲まれていたバズス=リウにとって、それはこれまでになく快適な時間と空間となった。
第七層は、広大な空間となり、竜姫の一族や、スライムたち、吸血鬼の眷属などが暮らし、必要に応じて、彼らの影を迷宮内に投影して、冒険者たちと戦わせた。
律儀に持ち場である第六層にこもったのは、ウィルニアくらいのもので、これはウィルニアの勤勉さ、というよりは、好き勝手に研究に没頭したいというワガママのためだった。
地上においてきたかつての配下、魔族たちのことは気にはなっていたが、闇森に居を構えたザザリが彼らをうまくコントロールしていた。
外界との連絡は、早期に解決していたので、ザザリが魔族側からの進行計画をなんどか踏み潰したことや、ザザリに弟子入りしようとする妙な人間や魔族の話も大いに楽しんだものだった。
そんな中でも、バスス=リウは己の体質については研究をかさねていた。
魔素の発散を止める、あるいは軽減することはできないのか。
研究は遅々として進まなかった。
(いや、それが可能ならば最初からそうしたのであって、迷宮に自分を閉じ込める、などという非常手段をとったのもそれがあまりに困難をきわめたためだった)
それでも、濃すぎる魔素を放出するのではなく、体内で循環する理論、そして実践を彼は飽きずに進めた。
そして、ある日。
天啓としかいいようのないアイデアに気がついたバズス=リウは。
ウィルニアに相談することもなく、即座にそれを実行した。
いまから約50年ばかり前の話である。
それはこれまでにない成果をもたらし、彼の発する魔素を半分近くまで軽減させたのだが。
それをダンジョンマスターの弱体化、ととらえたグランダの侵攻を招く。
侵攻そのものは、第六層。賢者ウィルニアが阻止したのだが。
怒ったウィルニアは、魔王宮への人類の侵入を全面的に停止させた。
それは、グランダの衰退をもたらすとともに、本当に彼が衰弱したと勘違いした闇森のザザリにある決断をせまることとなった。
迷宮は、『外』からは分離されたひとつの世界だった。
安定して存続するようになるまで、数十年の歳月はかかったが。
これは、さすがの天才、大賢者ウィルニアにしても理論の実際には差があったと、いうことなのだろう。
この間、人類圏、のちの世で西域と呼ばれることになる比較的温暖で住みやすい地域から、魔族を撤退させ、北方へ。
さらに、新たに山脈をもって、人類との生存圏を分断し、闇森となる深い森林地帯は、人類の侵攻も、あるいは魔族側からの侵攻をも著しく困難なものとさせた。
勇者が、立ち上げた北の王国は、多くの難民を吸収した。
グランダと呼ばれるこの国は、西方、中原から遠いながらも、周りのいくつかの小国を併呑し、隆盛を極めることとなる。
バズス=リウとウィルニアの迷宮は、そこに魔王を封じこめたという伝説から『魔王宮』と呼ばれ、多くの冒険者たちの狩り場となった。
迷宮は当初は三百層を超えたのだが(これは「いろんな世界をつくってみよう」と調子にのったバズス=リウとウィルニアの悪ふざけである)そのうち迷宮の運営をサポートできる階層主の数だけ、階層があればいい、ということに気づき、最終的には階層は、第7層までになった。
迷宮は快適ではあった。
肉体的にはバスズ=ルウは人間ではあったが、いかなる種族の「試し」にも耐えられるような力を持ち合わせていた。
魔素の濃さなど歯牙にもかけない竜族や、知性をもつスライム、創造主に捨てられた神獣、ウィルニアと旧知の真祖吸血鬼など、階層主を任せることができるような友人たちも増えていった。
彼のもつ魔素で、凶暴化してしまう臣下に囲まれていたバズス=リウにとって、それはこれまでになく快適な時間と空間となった。
第七層は、広大な空間となり、竜姫の一族や、スライムたち、吸血鬼の眷属などが暮らし、必要に応じて、彼らの影を迷宮内に投影して、冒険者たちと戦わせた。
律儀に持ち場である第六層にこもったのは、ウィルニアくらいのもので、これはウィルニアの勤勉さ、というよりは、好き勝手に研究に没頭したいというワガママのためだった。
地上においてきたかつての配下、魔族たちのことは気にはなっていたが、闇森に居を構えたザザリが彼らをうまくコントロールしていた。
外界との連絡は、早期に解決していたので、ザザリが魔族側からの進行計画をなんどか踏み潰したことや、ザザリに弟子入りしようとする妙な人間や魔族の話も大いに楽しんだものだった。
そんな中でも、バスス=リウは己の体質については研究をかさねていた。
魔素の発散を止める、あるいは軽減することはできないのか。
研究は遅々として進まなかった。
(いや、それが可能ならば最初からそうしたのであって、迷宮に自分を閉じ込める、などという非常手段をとったのもそれがあまりに困難をきわめたためだった)
それでも、濃すぎる魔素を放出するのではなく、体内で循環する理論、そして実践を彼は飽きずに進めた。
そして、ある日。
天啓としかいいようのないアイデアに気がついたバズス=リウは。
ウィルニアに相談することもなく、即座にそれを実行した。
いまから約50年ばかり前の話である。
それはこれまでにない成果をもたらし、彼の発する魔素を半分近くまで軽減させたのだが。
それをダンジョンマスターの弱体化、ととらえたグランダの侵攻を招く。
侵攻そのものは、第六層。賢者ウィルニアが阻止したのだが。
怒ったウィルニアは、魔王宮への人類の侵入を全面的に停止させた。
それは、グランダの衰退をもたらすとともに、本当に彼が衰弱したと勘違いした闇森のザザリにある決断をせまることとなった。
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