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第29話 剣聖
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がうっ
リヨンが吠えている。
目の前は、広間が崩れた瓦礫の山が通路を塞いでいる。
叫んだところで、喚いたところで、それが動くわけはない。
あるいは何日経過すれば、迷宮そのものがもつ復元力によって、元通りの姿になるのかもしれないが。
「リヨンさま」
カーラがなおも回復魔法をかける。
内蔵まで深く傷ついたリヨンの体は、早く治療院にみせたい状態だ。
瓦礫の山が出口への通路を塞いだそのむこうでは、とんでもない重量物が暴れまわる振動が伝わってくる。
があああああ。
リヨンは泣いている。
悔しいのか。それとも誰かが心配なのだろうか。
およそ、戦闘以外では性的遊戯を楽しむこと以外に、まわりに関心のうすいこの少女がここまで、誰かを心配するのは、カーラもはじめて見る光景だった。
「リヨンさま。マスター・クリュークがニコル師をお迎えに行っているはずです。我々と入れ違いに王都に到着されているはず。
まず、ここは一刻も早く、戦闘向きの文様に変更を。そのお姿のままでは、階層主相手では分が悪すぎます。」
「ハルト王子が死ぬのは、予定通り。エルマート王子が死んでも、フィオリア嬢が死んでもマスタークリュークにとってはすべて計算の内です。
いまの階層主との戦いが、どう転んでも、我々の不利になることなど、ひとつもありません。」
「そ、」
リヨンは泣きはらした目を、ルークにむけた。
「そうなのかな。」
「はい。」
召喚師は、リヨンを安心させるように笑った。
「ですから、一刻も早く、ここを脱出されてニコル師の元へ。マスタークリュークもあなたの帰りを待っていますよ。」
「でも。わたしの勇者さまの娘が・・・・あのむこうなんだ。」
「だからその方も、マスタークリュークの計画では死んでも生きてても支障のない存在なのですよ。」
「だったら、生きてて欲しい。あいつはわたしのことペイント女って呼ぶんだ。名前をちゃんと呼んでくれない。だから、あいつとハルトを結婚させて、わたしはクローディア公爵と結婚して、やつらにわたしのことお母さまって呼ばせるんだ。いいだろ?」
「すてきな計画だと思いますよ。でもいまはいったん、帰りましょう。ニコル師があなたに絵をかけるのを心待ちにしておられます。」
涙を拭いながら、リヨンは立ち上がった。骨折は治癒したものの、痛みはまだ残っている。
瓦礫の向こうの。
激しい爆発音。
振動音。
“生きて会おうよ、お姫さん。ハルト坊や。リアだかイリア。陰気な糸使い野郎”
だれか忘れてるような気がしたが特に気にせずに、リヨンは迷宮を脱出する。
ジルクは、藁に布を被せただけの粗末な寝台ですすり泣いていた。
傷は治っている。
治癒魔法にもいろいろあって、なかには、傷はもちろん、流れた血や、痛みまで回復してくれるものもあるとか。
だが、ジルクが受けた魔法は、一応、傷口をふさいではくれたものの、痛みはかえってひどくなったよう。
なによりもこれが、このから毎日続くという事実がジルクの心を暗くしている。
彼女が仕えるコーレル伯爵は、どうも王都での地位を失ったらしい。
魔王宮が開かれた翌日、彼の指揮する近衛兵団の解散が発表された。
王都にそれなりの屋敷に住むのは、よほど裕福な貴族でもない限り、維持できないような金がかかる。
いままでは、近衛の最高指揮官ということで、与えられていた屋敷は、没収となり、そうするとロクな産業もない彼の領地からのあがりでは、とてもいままでのような屋敷はまかなえないのだ。
雇われていた使用人は一部を除いて、暇を出された。
ジルクは「内弟子」ということになっており、給金を前払いする形で雇われていたので、そのまま、領地へ同行するよう命ぜられた。
伯爵はとにかく評判が悪く、また実際の人柄も評判をまったく裏切ってはいなかった。
寝屋の相手を命じられたことは初めてではなかったが、「稽古」をつけられたのははじめてだった。
罵倒、殴打、致命傷にならないように「のみ」注意された無数の傷。
相手をそうすることによって、高まるのがコーレルという男だった。
いままで、近衛の若い兵士や学院の生徒に対して行っていたそれらの行為の相手が、いなくなったからだろう。
領地への旅の最初の晩からそれは、はじまったのだ。
最後には目を潰されて、暗闇と傷の苦痛に呻く中、彼女はコーレルを受け入れたのだ。
痛みに寝つかれず、ジルクは寝台から身を起こした。
目のような複雑な組織は、再生したあともしばらくは、見えにくいことも多い。
王都から一日の宿場町では、街灯などという気の利いたものはなく、星あかりのしたで、彼女はぼんやりと宿の看板を眺めていた。
そこだけは魔法灯で照らされている。
逃げようか
ともぼんやり思ったが、逃げれば、すでに前借りの形で給金をもらっている家族に取り立てが行くだろう。
彼女も少々、剣を習っただけで、なんの取り柄があるわけではない。
最悪、野垂れ死にする可能性もあった。大いにあった。
どのくらいたっただろうか。
うずくまって啜り泣く彼女の前に二人の人影がたった。
気配を感じて、顔を上げたジルクだったが、落ちた視力のなか、看板を照らす灯だけでは、その姿はおそらく、コートを羽織った男性だろうということしかわからない。
「クリューク! いいよ、この子はいいよ。この子なら受け入れてくれそうだ。」
まだ若い男の声だった。もうひとり、やや後方に控えたもうひとりに興奮したように囁きかける。
「また、ですか、ニコル。」
後方の影は呆れたように言った。
「あなたの筆を受け入れられるのは、リヨンだけ。彼女一人では満足できませんか?」
「リヨンは別格。あれは特別だ。全能神がわたしのために用意してくれた世界でただ一つのカンバス。」
ニコルと呼ばれた若い男は芝居がかった仕草で、両手を差し伸べた。
「ただ、いつもとは違う。そう、たとえば、常に大作を仕上げるのではない。たまには手近なスケッチブックに野に咲く花を描き留めたい。そんなときもあるだろう?」
「芸術家の考えることは正直言ってわかりませんね。」
「芸術は残念ながら関係ない。たとえば、甘いものが続いた後にしょっぱいものが食べたくなったり、あるいは、絶世の美女を妻にもちながらも浮気をしてみたくなる、そんな下世話な感覚だよ。」
わからない。
ジルクはぼんやりと思った。
よく、わからないけど、こいつらは悪魔だ。悪いやつだ。近づいちゃいけない。
「さあ、お嬢さん。あなたの欲しい能力をひとつわたしが与えましょう。代償は一切いただきません。あなたが満足してくれることだけが、なによりの報酬です。」
そう言って、ひとを不幸にする黒いコートの行商人の物語を幼い頃にきいたことがある。
「…強く」
唇が勝手に言葉を紡いでいた。
「強くなりたいです。コーレル伯爵を殺せるくらいに。」
「おおっ! “剣聖”をですか? それは大きな望みですね。」
「それがそれほど大きな望みでもないのですよ。」
後ろに立った男、クリュークがうんざりしたように言った。
「残念というべきが、好都合に、というべきか、当代の王に忠誠を誓うものにロクな人材はいないのですよ。
剣聖コーレル将軍もそのひとり。
なので、くれぐれも描き過ぎないように注意してください。あと始末もけっこう大変なのですよ。」
「もちろん、もちろんだよ、クリューク。なるほど、剣が強くなればいいんだね。ではお嬢さん、利腕を出して。
そう、袖をめくって、ね。」
懐から取り出した先の尖った棒は、ただの鉛筆のようにもみえた。
ちくり。
と、手首に先端がふれるのを感じたのを最後に、ジルクは闇に落ちた。
「ジルクはいるか?」
少なくとも高位貴族が旅をして、宿場町に泊まるには、町で一番の宿を貸し切り。
それ以外はありえない。
プライドもある。
街道筋の町に金を落としてやる、という経済効果もある。
懐事情が火の車に近い、コーレルにとっても(彼がまだ伯爵位をもっている以上)例外ではなかった。
「部屋におります。相変わらず・・・朝からなにも食べておりません。話しかけても殴っても反応なし、です。」
昨晩は、いつの間にか、宿の外に出て、入口の看板の下で寝ていたジルクである。
逃亡の恐れあり、とのことで、今日は一日、縄を腰に巻かれて歩かされていた。
だがその様子がおかしい。
もともと大人しく、口数も少ない少女であったが、話しかけても何も答えず、まったく食べ物を口にしない。
焦点の合わぬ目でぶつぶつとひとりごとを言っては、また黙り込む。
このときのコーレル伯爵家の執事は、ゴルドという先代から使えた老人であった。
当代、コーレル伯の行動には、批判的であり、ジルクの様子をみて、いたく同情した。
コーレルに無茶をされて精神を壊したものは、彼女が最初ではなかったのである。
近衛の要職を失ったコーレルの昨晩の暴れっぷりは凄まじく、肌がすべて鮮血にまみれても「稽古」を辞めず、さらに視力を奪った状態で、彼女を犯した。
コーレルのそのような癖をかかえている以上、腕のよい治療師は必須であり、実際にこの度にも同行していたのだが・・・・その治療師が、なんとか視力の回復にまでこぎつけたあと、ゴルドを呼び出して、もう辞めさせてくれ、と泣きつかれたときは、ゴルドのほうが泣きたい気分だった。
とはいえ、家の差配をする立場としては、いま、治療師に辞めてもらうことはできない。
給金を上乗せし、領地についたあとの休暇を約束して、なんとか説得に成功した。
同じような理由で、いま、ジルクに壊れてもらうことも死んでもらうこともできない。
ジルクがいなくなれば、コーレルは必ず、ジルクの代わりを要求する。
伯の好みにあるような、細い美形が旅路の宿場町でそう都合よく見つかるか。そして、それが少々傷つけても金で解決がきく相手である可能性は限りなく低い。
「ジルク、稽古の時間だ。」
ゴルドが呼びかけると、それまで、ベッドに座り、壁にむかってなにやらつぶやいていたジルクがすっと立ち上がった。
そのまま、ゴルドの脇を通り抜けて、中庭に向かう。
ゴルドは、背筋に冷たいものが走るのを感じて、あわてて、あとを追った。
もともと、コーレル伯爵家は双剣を操る独自の流派をもって、世に出ており、かれもまた先代の弟子のひとりであったのである。
その彼の直感が告げていた。
いまのジルクの動きは、達人のそれだ。
昨日までのジルクに、いやコーレルにも出来る動きではない。
なにが、ジルクに起きたのか。単に苦痛に耐えかねて心が壊れただけ、ではない。
不吉な予感に、ゴルドは待機していた高弟のひとりに自分の愛剣を持ってくるように命じた。
「ジルク、遅いぞ。」
コーレルは、今宵も酒をしこたま飲んでいた。
深酒に稽古と称するリンチ。
当然、翌朝の出立は遅くなり、行程は長く、路銀も嵩む一方となる。
が、そんなことはコーレルの脳裏に浮かびもしない。
ふらふらと足元が定まらないジルクに剣を渡すように弟子のひとりに伝えると、自らの愛剣ブエンとヨウエンの二振りを抜き放った。
「まずは、二連桜吹雪の極。型を見せるゆえ、見事かわして見せたなら褒美を与えよう。」
それは流派独自の歩法により、相手包むように周囲から斬撃を繰り出す。
もともとは一対多数での戦場で相手を撹乱しながら、離脱または時間を稼いで増援を待つための技だったが、コーレルはもっぱら、好みの弟子を痛ぶるのに使っていた。
全く反応も出来ないジルクの周りを駆け抜けるようにして、その肢体を傷をつける。
肩口、太腿へ浅い切り傷、胸は直接傷は付けずに、肌をさらすように着ている服だけを切り裂いた。
「・・・・?」
痛い、とも言わず、ジルクはただ首をかしげた。
「どうした、まるで反応できぬではないか! 続いては、中伝泥蛇打殺!」
体をひくくした姿勢から、放つ斬撃は、そうかつての夜会でクローディアに放った突き技の真の姿である。
もともとは、突きではなく、斬撃。使うのは双剣。狙いは敵の足、である。
もともとは不利な体勢と思わせての逆襲のための技であったが、コーレルはもっぱら、弟子をいたぶるために愛用していた。
すねを切り裂いた。コーレルが想定したよりも浅かったが血が飛び散る。
「どうしたどうした!まるっきり動けぬのか!いままで、貴様のこの道場で何を学んだのだ! 貴様のような能無しは見たことがないわ!」
ジルクは、まだ首をかしげ、左手に握った剣をのろのろとあげて、焦点の合わぬ目でそれを眺めた。
「続いては・・・・・」
「フム・・・・」
ジルクがつぶやいた。
「ソノワザナラバ、コウスルノガタダシイノデワ?」
コーレルの目前からジルクの姿がかき消えた。
いや。
消えたのではない。
ジルクは、コーレルの背後にいた。
右にもいた。
左にもいた。
斜め後ろにも。
そのすべてのジルクが、剣をふるう。
コーレルはなんの反応もできなかった。
ただ、肩、腿、胸に灼熱の痛みが・・・・・
「おがあああああああっ」
よろめいて、片膝をつく。見えない。ジルクの動きがまったく読めない。
気力を振りしぼって立ち上がる。
周りで見ているのは、領地から連れてきた高弟たちだ。
必ずしもコーレルに心酔しているものばかりではない。
みっともないざまを見せれば、剣士としての彼の人生は終わるだろう。
「ツギワ、コウ」
溶けるように身体を沈めたジルクが、放った二筋の残光が、コーレルの両脛を浅く切り裂いた。
ちょうど、コーレルがジルクを傷つけた、同じ場所、同じ深さで。
コーレルは地面を転げて、距離をとった。これも流派の技のひとつであり、名を「引波」という。
「ソレは、コウ」
ジルクがくるっと回転して、距離をあけた。
コーレルは、呆然として、ジルクを見つめた。
どの技も、確かに彼の放った技も延長線上にあり、すべてが彼よりも上だった。
「…モウ、いい。おまえワよわいのだナ。」
ジルク、または、ジルクであったものは、はじめて表情を浮かべた。がっかりしたような。侮蔑の表情だった。
「おまえに習うものなど何もない。わたしの前から消え去れ。」
絶対的な死への予感。
とっさに繰り出した技は奥義のひとつ、双月天翔。
上段と下段。両方の剣が天地から、目標を両断する。
ジルクが一歩さがってそれを躱す・・・・が、双月天翔にはそのあとがある。
剣と剣。
ともに魔剣と称されるブエンとヨウエンがぶつかる。
生まれたのは巨大な闇の色の刃。
すべてを刈り取る鎌となって、ジルクを襲う。
もともとは、古龍やグレーターデーモン、物理的な斬撃を無効する強大な相手に対する彼の流儀の切り札。
さすがの彼も好みの新弟子をいたぶるために使ったことはなかった。
闇色の鎌は、ジルクの振り下ろした一振りで霧散した。
「あ、あぁぁあああああ」
恐怖。圧倒的な恐怖。
ジルクは一歩進んで、もう一度剣を振り上げた。
コーレルは動けない。動けない。
動いても無駄。防いでも無駄。
それがはっきりわかる。はるかにレベルが違う達人のみが放つことのできる一撃。
ぞっ
ジルクの背後から気配を殺したまま接近したゴルドが放ったのは、神速の踏み込みから放つ、奥義紫電走。
ひたすらに速度のみを追い求めた技は、ジルクの左手を剣ごと切り落とした。
吹き出した血潮をあびて悲鳴をあげたのは、コーレル。
地べたに座り込んだ剣聖は、ジルクの腕から噴出する血を浴びて泣き声をあげていた。
周りは弟子たち、わざわざコーレルが領地から呼び寄せた高弟たちは、それを見た。
もう二度と。
伯爵の地位があってもコレールを師と仰ぐものはいないだろう。
左手を失ったジルクはゆらゆらと揺れて。そのまま倒れた。
「こ、殺せ! こいつを殺せ! 主君に刃を受けた大罪人だ。
即刻首を刎ねるのだ。」
「閣下の手当が先です。」
ゴルドがそう言ったのは、主君を気遣ってのものではない。
コーレルにこの場を立ち去らせて、ジルクを血止めし、できれば治療師に見せられば、と思ったのだ
しかし、間に合わぬだろう。
ジルクの顔は大量の血を失い、すでに死人の蝋色だった。
「そ、そうだ! 傷が痛むぞ。早く治療師を呼べ。あの愚図の飲んだくれはどこにいるのだ。
早く、早くわしを治すのだ。」
治療師は飲んだくれてもおらず、また自分の出番は、ことが一切済んだ後だと把握していたので、自室に待機していたに過ぎない。
慌ただしく全員がその場をさったあと。ジルクはひとり中庭に残された。
賢明な宿屋のものたちは、誰一人中庭には近づこうとせず。
次第に弱くなる呼吸のまま、ジルクは静かにそのときを待つ。
痛みも徐々に遠のいていく。意識はまだある。
自分が何をしたのかも分かっている。
このまま死んでも悔いはなかった。
ただ。
望みが叶うなら。
あの左手に印された紋章の行きつく先が見たかった。
一時的な、ほんのかりそめの力。あと数分でその能力と引き換えに彼女を殺していたはずの力。
残った右手をあげて、声を振り絞る。
だれも聞いていないのは分かっていた。でも話さずにはいられなかった。
「わたし、は、もっと、つよく、な、り、た、い」
力を失う寸前の手を、握りしめた者がいた。
「さて、どうしたものか。」
クリュークであった。
片手でジルクの手を取り、もう片方の手に握った剣のうえでは…
串刺しになったジルクの左腕が暴れていた。
ジルクの体から切り離されてもなんのダメージもなかったのか、それは、剣を握ったまま宿の中に入り込もうとしていたところを、クリュークに発見され、剣を飛ばされた、貫かれ、それでもジタバタと動きを止めようとしなかった。
「ゼッタよ、浄化の炎を」
クリュークがめんどくさそうにつぶやくと、彼の持つ魔剣ゼッタが黄金色の炎をあげた。
だが、その炎のなかで、燃え尽きるまでジルクの左手は暴れ続けていた。
「さて、“後始末”はこれで終了です。あとは、これをどうするか。
クローディア公爵の流儀では、弱いものは常に保護の対象になるようですが。
はたして、なんの価値もない命を救うことになんの意味があるのでしょう。」
クリュークは、ちょっと考え込んだ。
しばらく考えて、パッと明るい表情を浮かべ
「そうでした。この少女はニコルに紋章を描き込まれて生き残った人材ですね。それ自体、希少価値がある。」
クリュークは、ゼッタに治癒魔法の発動を命じると、世にも恐ろしい笑みを浮かべた。
「さて、生き残ったのなら、それなりにわたしの役にも立ってもらいましょう。たぶん、死んだ方がマシだったと思うことになるでしょうが。」
リヨンが吠えている。
目の前は、広間が崩れた瓦礫の山が通路を塞いでいる。
叫んだところで、喚いたところで、それが動くわけはない。
あるいは何日経過すれば、迷宮そのものがもつ復元力によって、元通りの姿になるのかもしれないが。
「リヨンさま」
カーラがなおも回復魔法をかける。
内蔵まで深く傷ついたリヨンの体は、早く治療院にみせたい状態だ。
瓦礫の山が出口への通路を塞いだそのむこうでは、とんでもない重量物が暴れまわる振動が伝わってくる。
があああああ。
リヨンは泣いている。
悔しいのか。それとも誰かが心配なのだろうか。
およそ、戦闘以外では性的遊戯を楽しむこと以外に、まわりに関心のうすいこの少女がここまで、誰かを心配するのは、カーラもはじめて見る光景だった。
「リヨンさま。マスター・クリュークがニコル師をお迎えに行っているはずです。我々と入れ違いに王都に到着されているはず。
まず、ここは一刻も早く、戦闘向きの文様に変更を。そのお姿のままでは、階層主相手では分が悪すぎます。」
「ハルト王子が死ぬのは、予定通り。エルマート王子が死んでも、フィオリア嬢が死んでもマスタークリュークにとってはすべて計算の内です。
いまの階層主との戦いが、どう転んでも、我々の不利になることなど、ひとつもありません。」
「そ、」
リヨンは泣きはらした目を、ルークにむけた。
「そうなのかな。」
「はい。」
召喚師は、リヨンを安心させるように笑った。
「ですから、一刻も早く、ここを脱出されてニコル師の元へ。マスタークリュークもあなたの帰りを待っていますよ。」
「でも。わたしの勇者さまの娘が・・・・あのむこうなんだ。」
「だからその方も、マスタークリュークの計画では死んでも生きてても支障のない存在なのですよ。」
「だったら、生きてて欲しい。あいつはわたしのことペイント女って呼ぶんだ。名前をちゃんと呼んでくれない。だから、あいつとハルトを結婚させて、わたしはクローディア公爵と結婚して、やつらにわたしのことお母さまって呼ばせるんだ。いいだろ?」
「すてきな計画だと思いますよ。でもいまはいったん、帰りましょう。ニコル師があなたに絵をかけるのを心待ちにしておられます。」
涙を拭いながら、リヨンは立ち上がった。骨折は治癒したものの、痛みはまだ残っている。
瓦礫の向こうの。
激しい爆発音。
振動音。
“生きて会おうよ、お姫さん。ハルト坊や。リアだかイリア。陰気な糸使い野郎”
だれか忘れてるような気がしたが特に気にせずに、リヨンは迷宮を脱出する。
ジルクは、藁に布を被せただけの粗末な寝台ですすり泣いていた。
傷は治っている。
治癒魔法にもいろいろあって、なかには、傷はもちろん、流れた血や、痛みまで回復してくれるものもあるとか。
だが、ジルクが受けた魔法は、一応、傷口をふさいではくれたものの、痛みはかえってひどくなったよう。
なによりもこれが、このから毎日続くという事実がジルクの心を暗くしている。
彼女が仕えるコーレル伯爵は、どうも王都での地位を失ったらしい。
魔王宮が開かれた翌日、彼の指揮する近衛兵団の解散が発表された。
王都にそれなりの屋敷に住むのは、よほど裕福な貴族でもない限り、維持できないような金がかかる。
いままでは、近衛の最高指揮官ということで、与えられていた屋敷は、没収となり、そうするとロクな産業もない彼の領地からのあがりでは、とてもいままでのような屋敷はまかなえないのだ。
雇われていた使用人は一部を除いて、暇を出された。
ジルクは「内弟子」ということになっており、給金を前払いする形で雇われていたので、そのまま、領地へ同行するよう命ぜられた。
伯爵はとにかく評判が悪く、また実際の人柄も評判をまったく裏切ってはいなかった。
寝屋の相手を命じられたことは初めてではなかったが、「稽古」をつけられたのははじめてだった。
罵倒、殴打、致命傷にならないように「のみ」注意された無数の傷。
相手をそうすることによって、高まるのがコーレルという男だった。
いままで、近衛の若い兵士や学院の生徒に対して行っていたそれらの行為の相手が、いなくなったからだろう。
領地への旅の最初の晩からそれは、はじまったのだ。
最後には目を潰されて、暗闇と傷の苦痛に呻く中、彼女はコーレルを受け入れたのだ。
痛みに寝つかれず、ジルクは寝台から身を起こした。
目のような複雑な組織は、再生したあともしばらくは、見えにくいことも多い。
王都から一日の宿場町では、街灯などという気の利いたものはなく、星あかりのしたで、彼女はぼんやりと宿の看板を眺めていた。
そこだけは魔法灯で照らされている。
逃げようか
ともぼんやり思ったが、逃げれば、すでに前借りの形で給金をもらっている家族に取り立てが行くだろう。
彼女も少々、剣を習っただけで、なんの取り柄があるわけではない。
最悪、野垂れ死にする可能性もあった。大いにあった。
どのくらいたっただろうか。
うずくまって啜り泣く彼女の前に二人の人影がたった。
気配を感じて、顔を上げたジルクだったが、落ちた視力のなか、看板を照らす灯だけでは、その姿はおそらく、コートを羽織った男性だろうということしかわからない。
「クリューク! いいよ、この子はいいよ。この子なら受け入れてくれそうだ。」
まだ若い男の声だった。もうひとり、やや後方に控えたもうひとりに興奮したように囁きかける。
「また、ですか、ニコル。」
後方の影は呆れたように言った。
「あなたの筆を受け入れられるのは、リヨンだけ。彼女一人では満足できませんか?」
「リヨンは別格。あれは特別だ。全能神がわたしのために用意してくれた世界でただ一つのカンバス。」
ニコルと呼ばれた若い男は芝居がかった仕草で、両手を差し伸べた。
「ただ、いつもとは違う。そう、たとえば、常に大作を仕上げるのではない。たまには手近なスケッチブックに野に咲く花を描き留めたい。そんなときもあるだろう?」
「芸術家の考えることは正直言ってわかりませんね。」
「芸術は残念ながら関係ない。たとえば、甘いものが続いた後にしょっぱいものが食べたくなったり、あるいは、絶世の美女を妻にもちながらも浮気をしてみたくなる、そんな下世話な感覚だよ。」
わからない。
ジルクはぼんやりと思った。
よく、わからないけど、こいつらは悪魔だ。悪いやつだ。近づいちゃいけない。
「さあ、お嬢さん。あなたの欲しい能力をひとつわたしが与えましょう。代償は一切いただきません。あなたが満足してくれることだけが、なによりの報酬です。」
そう言って、ひとを不幸にする黒いコートの行商人の物語を幼い頃にきいたことがある。
「…強く」
唇が勝手に言葉を紡いでいた。
「強くなりたいです。コーレル伯爵を殺せるくらいに。」
「おおっ! “剣聖”をですか? それは大きな望みですね。」
「それがそれほど大きな望みでもないのですよ。」
後ろに立った男、クリュークがうんざりしたように言った。
「残念というべきが、好都合に、というべきか、当代の王に忠誠を誓うものにロクな人材はいないのですよ。
剣聖コーレル将軍もそのひとり。
なので、くれぐれも描き過ぎないように注意してください。あと始末もけっこう大変なのですよ。」
「もちろん、もちろんだよ、クリューク。なるほど、剣が強くなればいいんだね。ではお嬢さん、利腕を出して。
そう、袖をめくって、ね。」
懐から取り出した先の尖った棒は、ただの鉛筆のようにもみえた。
ちくり。
と、手首に先端がふれるのを感じたのを最後に、ジルクは闇に落ちた。
「ジルクはいるか?」
少なくとも高位貴族が旅をして、宿場町に泊まるには、町で一番の宿を貸し切り。
それ以外はありえない。
プライドもある。
街道筋の町に金を落としてやる、という経済効果もある。
懐事情が火の車に近い、コーレルにとっても(彼がまだ伯爵位をもっている以上)例外ではなかった。
「部屋におります。相変わらず・・・朝からなにも食べておりません。話しかけても殴っても反応なし、です。」
昨晩は、いつの間にか、宿の外に出て、入口の看板の下で寝ていたジルクである。
逃亡の恐れあり、とのことで、今日は一日、縄を腰に巻かれて歩かされていた。
だがその様子がおかしい。
もともと大人しく、口数も少ない少女であったが、話しかけても何も答えず、まったく食べ物を口にしない。
焦点の合わぬ目でぶつぶつとひとりごとを言っては、また黙り込む。
このときのコーレル伯爵家の執事は、ゴルドという先代から使えた老人であった。
当代、コーレル伯の行動には、批判的であり、ジルクの様子をみて、いたく同情した。
コーレルに無茶をされて精神を壊したものは、彼女が最初ではなかったのである。
近衛の要職を失ったコーレルの昨晩の暴れっぷりは凄まじく、肌がすべて鮮血にまみれても「稽古」を辞めず、さらに視力を奪った状態で、彼女を犯した。
コーレルのそのような癖をかかえている以上、腕のよい治療師は必須であり、実際にこの度にも同行していたのだが・・・・その治療師が、なんとか視力の回復にまでこぎつけたあと、ゴルドを呼び出して、もう辞めさせてくれ、と泣きつかれたときは、ゴルドのほうが泣きたい気分だった。
とはいえ、家の差配をする立場としては、いま、治療師に辞めてもらうことはできない。
給金を上乗せし、領地についたあとの休暇を約束して、なんとか説得に成功した。
同じような理由で、いま、ジルクに壊れてもらうことも死んでもらうこともできない。
ジルクがいなくなれば、コーレルは必ず、ジルクの代わりを要求する。
伯の好みにあるような、細い美形が旅路の宿場町でそう都合よく見つかるか。そして、それが少々傷つけても金で解決がきく相手である可能性は限りなく低い。
「ジルク、稽古の時間だ。」
ゴルドが呼びかけると、それまで、ベッドに座り、壁にむかってなにやらつぶやいていたジルクがすっと立ち上がった。
そのまま、ゴルドの脇を通り抜けて、中庭に向かう。
ゴルドは、背筋に冷たいものが走るのを感じて、あわてて、あとを追った。
もともと、コーレル伯爵家は双剣を操る独自の流派をもって、世に出ており、かれもまた先代の弟子のひとりであったのである。
その彼の直感が告げていた。
いまのジルクの動きは、達人のそれだ。
昨日までのジルクに、いやコーレルにも出来る動きではない。
なにが、ジルクに起きたのか。単に苦痛に耐えかねて心が壊れただけ、ではない。
不吉な予感に、ゴルドは待機していた高弟のひとりに自分の愛剣を持ってくるように命じた。
「ジルク、遅いぞ。」
コーレルは、今宵も酒をしこたま飲んでいた。
深酒に稽古と称するリンチ。
当然、翌朝の出立は遅くなり、行程は長く、路銀も嵩む一方となる。
が、そんなことはコーレルの脳裏に浮かびもしない。
ふらふらと足元が定まらないジルクに剣を渡すように弟子のひとりに伝えると、自らの愛剣ブエンとヨウエンの二振りを抜き放った。
「まずは、二連桜吹雪の極。型を見せるゆえ、見事かわして見せたなら褒美を与えよう。」
それは流派独自の歩法により、相手包むように周囲から斬撃を繰り出す。
もともとは一対多数での戦場で相手を撹乱しながら、離脱または時間を稼いで増援を待つための技だったが、コーレルはもっぱら、好みの弟子を痛ぶるのに使っていた。
全く反応も出来ないジルクの周りを駆け抜けるようにして、その肢体を傷をつける。
肩口、太腿へ浅い切り傷、胸は直接傷は付けずに、肌をさらすように着ている服だけを切り裂いた。
「・・・・?」
痛い、とも言わず、ジルクはただ首をかしげた。
「どうした、まるで反応できぬではないか! 続いては、中伝泥蛇打殺!」
体をひくくした姿勢から、放つ斬撃は、そうかつての夜会でクローディアに放った突き技の真の姿である。
もともとは、突きではなく、斬撃。使うのは双剣。狙いは敵の足、である。
もともとは不利な体勢と思わせての逆襲のための技であったが、コーレルはもっぱら、弟子をいたぶるために愛用していた。
すねを切り裂いた。コーレルが想定したよりも浅かったが血が飛び散る。
「どうしたどうした!まるっきり動けぬのか!いままで、貴様のこの道場で何を学んだのだ! 貴様のような能無しは見たことがないわ!」
ジルクは、まだ首をかしげ、左手に握った剣をのろのろとあげて、焦点の合わぬ目でそれを眺めた。
「続いては・・・・・」
「フム・・・・」
ジルクがつぶやいた。
「ソノワザナラバ、コウスルノガタダシイノデワ?」
コーレルの目前からジルクの姿がかき消えた。
いや。
消えたのではない。
ジルクは、コーレルの背後にいた。
右にもいた。
左にもいた。
斜め後ろにも。
そのすべてのジルクが、剣をふるう。
コーレルはなんの反応もできなかった。
ただ、肩、腿、胸に灼熱の痛みが・・・・・
「おがあああああああっ」
よろめいて、片膝をつく。見えない。ジルクの動きがまったく読めない。
気力を振りしぼって立ち上がる。
周りで見ているのは、領地から連れてきた高弟たちだ。
必ずしもコーレルに心酔しているものばかりではない。
みっともないざまを見せれば、剣士としての彼の人生は終わるだろう。
「ツギワ、コウ」
溶けるように身体を沈めたジルクが、放った二筋の残光が、コーレルの両脛を浅く切り裂いた。
ちょうど、コーレルがジルクを傷つけた、同じ場所、同じ深さで。
コーレルは地面を転げて、距離をとった。これも流派の技のひとつであり、名を「引波」という。
「ソレは、コウ」
ジルクがくるっと回転して、距離をあけた。
コーレルは、呆然として、ジルクを見つめた。
どの技も、確かに彼の放った技も延長線上にあり、すべてが彼よりも上だった。
「…モウ、いい。おまえワよわいのだナ。」
ジルク、または、ジルクであったものは、はじめて表情を浮かべた。がっかりしたような。侮蔑の表情だった。
「おまえに習うものなど何もない。わたしの前から消え去れ。」
絶対的な死への予感。
とっさに繰り出した技は奥義のひとつ、双月天翔。
上段と下段。両方の剣が天地から、目標を両断する。
ジルクが一歩さがってそれを躱す・・・・が、双月天翔にはそのあとがある。
剣と剣。
ともに魔剣と称されるブエンとヨウエンがぶつかる。
生まれたのは巨大な闇の色の刃。
すべてを刈り取る鎌となって、ジルクを襲う。
もともとは、古龍やグレーターデーモン、物理的な斬撃を無効する強大な相手に対する彼の流儀の切り札。
さすがの彼も好みの新弟子をいたぶるために使ったことはなかった。
闇色の鎌は、ジルクの振り下ろした一振りで霧散した。
「あ、あぁぁあああああ」
恐怖。圧倒的な恐怖。
ジルクは一歩進んで、もう一度剣を振り上げた。
コーレルは動けない。動けない。
動いても無駄。防いでも無駄。
それがはっきりわかる。はるかにレベルが違う達人のみが放つことのできる一撃。
ぞっ
ジルクの背後から気配を殺したまま接近したゴルドが放ったのは、神速の踏み込みから放つ、奥義紫電走。
ひたすらに速度のみを追い求めた技は、ジルクの左手を剣ごと切り落とした。
吹き出した血潮をあびて悲鳴をあげたのは、コーレル。
地べたに座り込んだ剣聖は、ジルクの腕から噴出する血を浴びて泣き声をあげていた。
周りは弟子たち、わざわざコーレルが領地から呼び寄せた高弟たちは、それを見た。
もう二度と。
伯爵の地位があってもコレールを師と仰ぐものはいないだろう。
左手を失ったジルクはゆらゆらと揺れて。そのまま倒れた。
「こ、殺せ! こいつを殺せ! 主君に刃を受けた大罪人だ。
即刻首を刎ねるのだ。」
「閣下の手当が先です。」
ゴルドがそう言ったのは、主君を気遣ってのものではない。
コーレルにこの場を立ち去らせて、ジルクを血止めし、できれば治療師に見せられば、と思ったのだ
しかし、間に合わぬだろう。
ジルクの顔は大量の血を失い、すでに死人の蝋色だった。
「そ、そうだ! 傷が痛むぞ。早く治療師を呼べ。あの愚図の飲んだくれはどこにいるのだ。
早く、早くわしを治すのだ。」
治療師は飲んだくれてもおらず、また自分の出番は、ことが一切済んだ後だと把握していたので、自室に待機していたに過ぎない。
慌ただしく全員がその場をさったあと。ジルクはひとり中庭に残された。
賢明な宿屋のものたちは、誰一人中庭には近づこうとせず。
次第に弱くなる呼吸のまま、ジルクは静かにそのときを待つ。
痛みも徐々に遠のいていく。意識はまだある。
自分が何をしたのかも分かっている。
このまま死んでも悔いはなかった。
ただ。
望みが叶うなら。
あの左手に印された紋章の行きつく先が見たかった。
一時的な、ほんのかりそめの力。あと数分でその能力と引き換えに彼女を殺していたはずの力。
残った右手をあげて、声を振り絞る。
だれも聞いていないのは分かっていた。でも話さずにはいられなかった。
「わたし、は、もっと、つよく、な、り、た、い」
力を失う寸前の手を、握りしめた者がいた。
「さて、どうしたものか。」
クリュークであった。
片手でジルクの手を取り、もう片方の手に握った剣のうえでは…
串刺しになったジルクの左腕が暴れていた。
ジルクの体から切り離されてもなんのダメージもなかったのか、それは、剣を握ったまま宿の中に入り込もうとしていたところを、クリュークに発見され、剣を飛ばされた、貫かれ、それでもジタバタと動きを止めようとしなかった。
「ゼッタよ、浄化の炎を」
クリュークがめんどくさそうにつぶやくと、彼の持つ魔剣ゼッタが黄金色の炎をあげた。
だが、その炎のなかで、燃え尽きるまでジルクの左手は暴れ続けていた。
「さて、“後始末”はこれで終了です。あとは、これをどうするか。
クローディア公爵の流儀では、弱いものは常に保護の対象になるようですが。
はたして、なんの価値もない命を救うことになんの意味があるのでしょう。」
クリュークは、ちょっと考え込んだ。
しばらく考えて、パッと明るい表情を浮かべ
「そうでした。この少女はニコルに紋章を描き込まれて生き残った人材ですね。それ自体、希少価値がある。」
クリュークは、ゼッタに治癒魔法の発動を命じると、世にも恐ろしい笑みを浮かべた。
「さて、生き残ったのなら、それなりにわたしの役にも立ってもらいましょう。たぶん、死んだ方がマシだったと思うことになるでしょうが。」
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ご覧いただきありがとうございます。なんとか完結しました。彼らの物語はまだ続きます。後日談https://www.alphapolis.co.jp/novel/807186218/844632510
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