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魔王になんかなりたくない!
邪神さまと語ろう!
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「残念姫さんは?」
と、アキルが言った。
目の前には、飴細工で飾られたフルーツの盛り合わせ。飴細工のお城は冬をイメージしているのだろう。白い雪がかぶっていた。もちろん、アイスクリームである。
ぼくは、アキルとふたりで、ランゴバルドの街ブラの最中だった。
彼女が「神竜の息吹」が出した新しいスイーツカフェに行ってみたいと言うので、日用品の買い出しのあと、そこで一休みしている。
「『神竜騎士団』と組み手稽古会に参加しているよ。」
「姫さんの相手になる人がいるの?」
「そうそう、あそこも捨てたもんじゃない。」
と、ぼくは答えた。
「なにしろ、きみの使徒たちを監視をかねて、押し込んだんだ。そのなかには、12使徒も半分くらいはいる。」
「あれ? 全員じゃなくて。」
「いまでに連絡がとれないやつもいる。ゴウグレみたいにふつうに生徒にまじって生活していても『亜人だから』ですむやつもいる。あとは、冒険者登録をして、冒険者をやったり、町道場をはじめたり。」
「・・・逞しく生きてるねえ・・・」
邪神ヴァルゴールが、生きた人間の「贄」をささげる儀式を、完全に中止して半年以上がたっている。
アキルに体調に変化がないかきいていみたが、かえって調子はいいようだ。
「生贄」の儀式など、ヴァルゴールにとっては、なんのプラスにもならなかったのだ。
邪神がこの世界に降臨して何千年たつのだろか。その間、生贄として散らされた命がいくつあったのか。
そんなものは意味がないからやめろ、と。
誰かがもっと早く言ってやればよかったのだろうが、実際にそれが実現できた可能性。
これは難しい。
殺人を禁忌とする習慣は、はやくからどんな民族にも根付いていたと思う。これは正しいとか正しくないとかの問題ではなくて、そういう文明は長続きしないからだ。
だが、人間が神様に直接話しかける機会など、そうそうあるものではない。
一方で、神様になってしまったヴァルゴールに、人間の道徳などはわからない。
もともとの「命」に対する感覚が、定められた寿命をもつ、人間とはまるで違う。
仮にぼくが、もっと早く誕生していれば?
いや、それも難しい。
ヴァルゴールが、グランダの継承権にからむ争いに首をつっこんだのは、いくつかの偶然だ。
別段、クリュークは、あそこで、ヴァルゴールに呼びかけなくたってよかったのだし、ヴァルゴールも呼びかけに応えなくてもいっこうにかまわなかった。
そうした偶然の連なりを「運命」などと呼んでやる気はさらさら、ない。
しかし、その偶然が重なった結果、ぼくは、フィオリナやドロシー、大公国の親父殿に勝る相談相手を、得ているわけで、それは、ケーキセットくらいで事が足りるなら十分お釣りが来る・・・・
「すいません! おかわりください!」
やっぱり異世界人としては、なんとかチート知識をいかしたドリンクバーの設置を・・・
とぶつぶついうアキルに、ぼくは尋ねた。
「魔法の履修はどう?」
アキルはため息をついた。邪神のわりにはアウトドアな女の子である。
もともといた世界が「魔法」のない世界だったこともあって、この分野はかなり苦戦しているのだ。
補習はほぼ一日おき。
しかも、ほとんどべったりだったロウ=リンドが、吸血鬼に噛まれたファイユたちの救助のため、カザリームに向かってしまったので、愚痴をこぼす相手もいずにグダグダしていたので、経過確認もかねて連れ出したのだ。
「世界の声、のことだけとね。」
アキルは、声をひそめた。
「おおかたのところは、正体がわかった。
いやあ、ルトくんと残念姫とアモンさんが、本気になってやり合わなくて正解だよ。
まかり間違って倒してしまったら、世界の運行に支障が出たかもしれない。」
と、アキルが言った。
目の前には、飴細工で飾られたフルーツの盛り合わせ。飴細工のお城は冬をイメージしているのだろう。白い雪がかぶっていた。もちろん、アイスクリームである。
ぼくは、アキルとふたりで、ランゴバルドの街ブラの最中だった。
彼女が「神竜の息吹」が出した新しいスイーツカフェに行ってみたいと言うので、日用品の買い出しのあと、そこで一休みしている。
「『神竜騎士団』と組み手稽古会に参加しているよ。」
「姫さんの相手になる人がいるの?」
「そうそう、あそこも捨てたもんじゃない。」
と、ぼくは答えた。
「なにしろ、きみの使徒たちを監視をかねて、押し込んだんだ。そのなかには、12使徒も半分くらいはいる。」
「あれ? 全員じゃなくて。」
「いまでに連絡がとれないやつもいる。ゴウグレみたいにふつうに生徒にまじって生活していても『亜人だから』ですむやつもいる。あとは、冒険者登録をして、冒険者をやったり、町道場をはじめたり。」
「・・・逞しく生きてるねえ・・・」
邪神ヴァルゴールが、生きた人間の「贄」をささげる儀式を、完全に中止して半年以上がたっている。
アキルに体調に変化がないかきいていみたが、かえって調子はいいようだ。
「生贄」の儀式など、ヴァルゴールにとっては、なんのプラスにもならなかったのだ。
邪神がこの世界に降臨して何千年たつのだろか。その間、生贄として散らされた命がいくつあったのか。
そんなものは意味がないからやめろ、と。
誰かがもっと早く言ってやればよかったのだろうが、実際にそれが実現できた可能性。
これは難しい。
殺人を禁忌とする習慣は、はやくからどんな民族にも根付いていたと思う。これは正しいとか正しくないとかの問題ではなくて、そういう文明は長続きしないからだ。
だが、人間が神様に直接話しかける機会など、そうそうあるものではない。
一方で、神様になってしまったヴァルゴールに、人間の道徳などはわからない。
もともとの「命」に対する感覚が、定められた寿命をもつ、人間とはまるで違う。
仮にぼくが、もっと早く誕生していれば?
いや、それも難しい。
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別段、クリュークは、あそこで、ヴァルゴールに呼びかけなくたってよかったのだし、ヴァルゴールも呼びかけに応えなくてもいっこうにかまわなかった。
そうした偶然の連なりを「運命」などと呼んでやる気はさらさら、ない。
しかし、その偶然が重なった結果、ぼくは、フィオリナやドロシー、大公国の親父殿に勝る相談相手を、得ているわけで、それは、ケーキセットくらいで事が足りるなら十分お釣りが来る・・・・
「すいません! おかわりください!」
やっぱり異世界人としては、なんとかチート知識をいかしたドリンクバーの設置を・・・
とぶつぶついうアキルに、ぼくは尋ねた。
「魔法の履修はどう?」
アキルはため息をついた。邪神のわりにはアウトドアな女の子である。
もともといた世界が「魔法」のない世界だったこともあって、この分野はかなり苦戦しているのだ。
補習はほぼ一日おき。
しかも、ほとんどべったりだったロウ=リンドが、吸血鬼に噛まれたファイユたちの救助のため、カザリームに向かってしまったので、愚痴をこぼす相手もいずにグダグダしていたので、経過確認もかねて連れ出したのだ。
「世界の声、のことだけとね。」
アキルは、声をひそめた。
「おおかたのところは、正体がわかった。
いやあ、ルトくんと残念姫とアモンさんが、本気になってやり合わなくて正解だよ。
まかり間違って倒してしまったら、世界の運行に支障が出たかもしれない。」
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