53 / 55
魔王になんかなりたくない!
世界の声
しおりを挟む
「肌を露出されることで、そこに視線を引っ張る効果はありそうね。」
本家のフィオリナのほうは、すでに会話に参加する気さえないらしく、盛んに、偽フィオリナの触手のドレスを検討している。
絶対に作らせないそ!と、ルトは思った。
「確かにわたしが作りだすのは、『魔王の卵』。」
気を取り直したように、ドレスのフィオリナは続けた。
「だが真なる魔王もまた、そこから生まれるのだ。」
「本当かなあ。」
ルトの視線は、懐疑に満ち溢れている。
「たぶん、現時点での魔王を倒せば、卵から正当な魔王に昇格できるんだろうけど・・・
カザリームに出現したドゥルノ・アゴンってやつが、どうにも実力不足だったんで、もともと強大な力をもっている竜王や、うちのフィオリナにちょっかいを出したんだろうけど。
もともと持っている力と魔王の力が衝突してしまって、どうしてもうまくいかない・・・。
いまのところ、そんな感じなんだけど、なにか訂正や付け加えがあるかな。」
「・・・・・」
顔色を悪くして黙ってしまったドレスのフィオリナに、聞こえないように、アモンが耳打ちをした。
「おまえが全部しゃべってどうする! こういうことは、悪役が調子にのってついしゃべってしまうものなんだ! 本とか、劇とか・・・観たり、読んだりしたことはないのか?」
「次は、たぶん、フィオリナや竜王などは、ほんの試しに過ぎない。真の魔王候補は、別にいる! とか言い出しますよ。」
「残念だが、わが愛しき『魔王の再来』よ。
カザリームでは、ドゥルノ・アゴンが、おまえたちの仲間を追い詰めつつある。
そして、フィオリナ姫も、竜王も、ドゥルノ・アゴンさえも、我が真の魔王候補者でないと知るがよい。
我が、真なる次世代の魔王の候補者は」
「おまえだーーーーーーっ!!!!!」
ルトの大声に、ドレスのフィオリナがひっくり返った。
前述したように、そのドレスとも言えないドレスは、かなり露出の多いものだったから、ほとんど女性が裸体をみせるショーのダンサーのような格好で、わたわたと地面に手をついた。
「な、なぜわかる!」
「ひとを散々、魔王の再来呼ばわりしておいて、候補者にはいってなければ、かえって驚くわ!」
「魔王の再来よ! 魔王の力が欲しくはないのか。わたしがほしくはないのか?
わたしはおまえを、おまえだけを愛するフィオリナだ。わたしを受け入れるがいい。そして至高なる力を手にするのだ。すべてをおまえの欲望通りにできる力を。」
「どうも、世界の声さんは、相手のもっとも欲する姿で登場するようだけど、フィオリナのときは誰だった?」
「ああ、えーーっと、リウだね。」
「酷いな。」
「わたしは・・・アモンだった。」
聞かれもしないのに、竜王陛下は勝手に答えて勝手に赤くなった。
「話をきいてくれ!」
ドレスのフィオリナは、地団駄を踏んで叫んだ。顔が真っ赤になっている。
感情的に激しいのは、フィオリナを模したのか、生来のものか。
「わたしは、おまえの愛するフィオリナなんだぞ!?」
「え? でも魔王の力を手に入れたぼくは、なにをするんだしたっ?」
「決まっている。邪悪なる魔王リウを倒して、フィオリナを取返す・・・・」
「言ってて、一行でもう矛盾してるじゃないですか。」
ルトは、絶望したように、ドレスのフィオリナ・・・「世界の声」を見つめた。
「神さまなんだから、もうちょっとしっかりしてください。」
「世界の声」は、ウィンクしながら、肩紐(にあたる部分の触手)をずらしてみせた。
「なんという!」
ルールスが絶句した。
「場をわきまえない色仕掛けというのは、こんなにすべるのだな!」
「な、なぜ、わたしが神だとわかった!」
「定命の存在に、魔王の卵を作り出すのは、荷が重すぎますから。あとは、転移陣なしの迷宮外からの転移。
人間では、ボルテックのじい様が辛うじてその域に。まあ、ギムリウスは別格としても、もともとの質量がデカすぎる古竜はあまり転移を好まないし、まあ、消去法で、ね。」
「な、なるほど。」
世界の声は、落ち着きを取り戻した様だった。
「だが、なんの神かは分かるまい。」
「わかるわけが無いよ。だって融合体でしょ?」
フィオリナの姿を借りているのだから、その間抜け面はやめて欲しい、とルトは切に願った。
「悪いけど、わたしの姿をしてるときにその間抜け面はやめてね。」
フィオリナが冷たく言った。
「そ、そこまで分かるのか。だ、だがそこが限界でもあるのだな、魔王の再来よ。」
世界の声は、懸命に、それこそ絞り出すように、言った。
「ん。まあ、でもかなり強力な神様だからね。いま妙なことをしているってだけで容易に調べられるとは思う。」
「ど、どうやって??」
「アキルに聞けば調べてくれるでしょ。あ、そっちに、分かりやすいように言えば、ヴァルゴールだけど。」
世界の声は、無惨にもへたりこんだ。
震える声で、アモンに、すがるように尋ねた。おそらく、神竜であるアモンは、彼らには旧知の存在だったのだろう。
「こ、こいつら、いったいなんなんのだ?」
アモンは、答えた。
「我らは『踊る道化師』。」
その言葉が、誇らしげに聞こえたのは、ルトばかりではなかった。
本家のフィオリナのほうは、すでに会話に参加する気さえないらしく、盛んに、偽フィオリナの触手のドレスを検討している。
絶対に作らせないそ!と、ルトは思った。
「確かにわたしが作りだすのは、『魔王の卵』。」
気を取り直したように、ドレスのフィオリナは続けた。
「だが真なる魔王もまた、そこから生まれるのだ。」
「本当かなあ。」
ルトの視線は、懐疑に満ち溢れている。
「たぶん、現時点での魔王を倒せば、卵から正当な魔王に昇格できるんだろうけど・・・
カザリームに出現したドゥルノ・アゴンってやつが、どうにも実力不足だったんで、もともと強大な力をもっている竜王や、うちのフィオリナにちょっかいを出したんだろうけど。
もともと持っている力と魔王の力が衝突してしまって、どうしてもうまくいかない・・・。
いまのところ、そんな感じなんだけど、なにか訂正や付け加えがあるかな。」
「・・・・・」
顔色を悪くして黙ってしまったドレスのフィオリナに、聞こえないように、アモンが耳打ちをした。
「おまえが全部しゃべってどうする! こういうことは、悪役が調子にのってついしゃべってしまうものなんだ! 本とか、劇とか・・・観たり、読んだりしたことはないのか?」
「次は、たぶん、フィオリナや竜王などは、ほんの試しに過ぎない。真の魔王候補は、別にいる! とか言い出しますよ。」
「残念だが、わが愛しき『魔王の再来』よ。
カザリームでは、ドゥルノ・アゴンが、おまえたちの仲間を追い詰めつつある。
そして、フィオリナ姫も、竜王も、ドゥルノ・アゴンさえも、我が真の魔王候補者でないと知るがよい。
我が、真なる次世代の魔王の候補者は」
「おまえだーーーーーーっ!!!!!」
ルトの大声に、ドレスのフィオリナがひっくり返った。
前述したように、そのドレスとも言えないドレスは、かなり露出の多いものだったから、ほとんど女性が裸体をみせるショーのダンサーのような格好で、わたわたと地面に手をついた。
「な、なぜわかる!」
「ひとを散々、魔王の再来呼ばわりしておいて、候補者にはいってなければ、かえって驚くわ!」
「魔王の再来よ! 魔王の力が欲しくはないのか。わたしがほしくはないのか?
わたしはおまえを、おまえだけを愛するフィオリナだ。わたしを受け入れるがいい。そして至高なる力を手にするのだ。すべてをおまえの欲望通りにできる力を。」
「どうも、世界の声さんは、相手のもっとも欲する姿で登場するようだけど、フィオリナのときは誰だった?」
「ああ、えーーっと、リウだね。」
「酷いな。」
「わたしは・・・アモンだった。」
聞かれもしないのに、竜王陛下は勝手に答えて勝手に赤くなった。
「話をきいてくれ!」
ドレスのフィオリナは、地団駄を踏んで叫んだ。顔が真っ赤になっている。
感情的に激しいのは、フィオリナを模したのか、生来のものか。
「わたしは、おまえの愛するフィオリナなんだぞ!?」
「え? でも魔王の力を手に入れたぼくは、なにをするんだしたっ?」
「決まっている。邪悪なる魔王リウを倒して、フィオリナを取返す・・・・」
「言ってて、一行でもう矛盾してるじゃないですか。」
ルトは、絶望したように、ドレスのフィオリナ・・・「世界の声」を見つめた。
「神さまなんだから、もうちょっとしっかりしてください。」
「世界の声」は、ウィンクしながら、肩紐(にあたる部分の触手)をずらしてみせた。
「なんという!」
ルールスが絶句した。
「場をわきまえない色仕掛けというのは、こんなにすべるのだな!」
「な、なぜ、わたしが神だとわかった!」
「定命の存在に、魔王の卵を作り出すのは、荷が重すぎますから。あとは、転移陣なしの迷宮外からの転移。
人間では、ボルテックのじい様が辛うじてその域に。まあ、ギムリウスは別格としても、もともとの質量がデカすぎる古竜はあまり転移を好まないし、まあ、消去法で、ね。」
「な、なるほど。」
世界の声は、落ち着きを取り戻した様だった。
「だが、なんの神かは分かるまい。」
「わかるわけが無いよ。だって融合体でしょ?」
フィオリナの姿を借りているのだから、その間抜け面はやめて欲しい、とルトは切に願った。
「悪いけど、わたしの姿をしてるときにその間抜け面はやめてね。」
フィオリナが冷たく言った。
「そ、そこまで分かるのか。だ、だがそこが限界でもあるのだな、魔王の再来よ。」
世界の声は、懸命に、それこそ絞り出すように、言った。
「ん。まあ、でもかなり強力な神様だからね。いま妙なことをしているってだけで容易に調べられるとは思う。」
「ど、どうやって??」
「アキルに聞けば調べてくれるでしょ。あ、そっちに、分かりやすいように言えば、ヴァルゴールだけど。」
世界の声は、無惨にもへたりこんだ。
震える声で、アモンに、すがるように尋ねた。おそらく、神竜であるアモンは、彼らには旧知の存在だったのだろう。
「こ、こいつら、いったいなんなんのだ?」
アモンは、答えた。
「我らは『踊る道化師』。」
その言葉が、誇らしげに聞こえたのは、ルトばかりではなかった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる