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魔王になんかなりたくない!
竜珠通信
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案の定。
アモンが提供してくれた宝珠の魔力の消費量はとんでもなかった。
もともと映像音声つきで遠距離とリアルタイムに連絡をするこの手のアイテムは、魔力の消費量がとんでもない。そして、これはもともと古竜が自分たちが使うためにつくったいわば、原型に近い。
魔力の消費量の軽減など、まったく考慮されていない。
ぼくの魔力が、がりがり削られていく。
加えてこの。
「会いたかったよおっ! ルト!」
魔力制限のない遠距離通信は、こんなに凄いのか。
画像がフルカラーなのはもちろんチラつきや、揺らぎもない。
それはそれとして。
ぼくは、できれば竜の牙のエライ奴と、喋りたかったんだ。
あの道化師のかっこうをしたやつとか。
「どうしたの、ルト。まさかわたしのこと忘れちゃったとか。」
忘れてない。
確か勘定が昂ると人カがとけてしまう、こまった体質の持ち主で、こともあろうに、ミトラでのパーティの席上で竜に戻りそうなになったのを、ぼくが止めてやったのだ。
どういうものか、それ以来、すっかり「上」のものとして、ぼくを扱うようになったのだ。
古竜に身分なんかないと思うのだが、、要するに「さらに、年長の古竜」を相手にするように、親しみと敬意をこめて、ぼくに接するようになったのだ。
「それで、わたしの“踊る道化師”入りの話はどうなったのかな?」
「そんな話は最初からないです。」
「そ、そんな!」
信じられないほど非常識なことを聞いた、とでも言わんばかりに、目を丸くして古竜の種所は息巻いた。
「古竜のパーティ入を断る冒険者がいるなんて!」
「アモン!」
ぼくは、びしっと、クサナギの前に指をたてた。
「で、でも、古竜だよ? もうひとりくらいいても・・・」
「レクス!」
神鎧竜レクスは、もっぱらギウリークの竜人部隊の顧問としてミトラに滞在している。
伝説の神竜を顧問に迎えたことに一時、歓喜していた教皇庁だったが、そろそろ、レクスが基本的に誰の命令もきかないことに気が付き始めている。
なにか、あら事がおこって、竜人部隊を派遣する段になって、真っ青になるサマがいまから楽しみなのだ。
「そ、そんな伝説級の古竜じゃなくって、もっと身近で親しみやすい古竜を、マスコットがわりに、どうかな?」
「ラウレス!」
「あ、あれは、コックさんであって、正式なパーティメンバーじゃないよね。おためしで、美少女系の古竜はどうかな。いまなら、食費だけで雇えるんだけど・・・」
「ラスティ!」
ラスティは、魔王宮の第三層の古竜だ。
500際に満たぬ年齢で、知性をもつに至った天才児である。
ただ、その魔法は制御がいまいちで、どんな料理もかならず、炭にしてしまう。
「そんなわけで、竜の枠はいっぱいなんだ。
冒険者になりたいんだったら、そこらへんの古竜を誘ってパーティを組めばいいと思う。」
ぐぬぬ。
と、いってクサナギは黙ってしまった。
「まあ、一度、あそびにおいでよ。正式なメンバーはむずかしいけど、一緒にすごしてみて、いやでなかったらしばらく冒険者学校に・・・」
「ランゴバルド冒険者学校は、いったいどういう組織なんだ!」
道化姿の男がわってはいった。
そうそう、あなたが竜の牙のリーダーで、ぼくはあなたとしゃべりたかったんだ。
「ランゴバルドのために、冒険者を育てる学校でしょう。」
「一見、そうみせかけて、その実態は・・・・」
「いや、実際、そうでしょ。多少、例外がいるだけで。」
「よく人の身でそんな軽口がたたけるな。」
アモンがつぶやいた。
「並の魔導師なら、最初の十秒で失神している魔力消費力なのだが。」
「それもそうだ。本題にはいろう。
このところ、アモンを悩ませている相談事だが、ぼくにもきかせてほしい。きっと力になれると思う。」
道化服の古竜は、しばし考え込んだ。
「これは、ごくごく身内で解決したかった問題なのだ、ルト殿。」
「アモンは、出自は竜でももう、ぼくらの身内だよ。アモンが自分勝手にぼくらに事情を説明せずに、竜の牙に声をかけたのをありがたいと思ってほしいくらいだね。」
道化竜リイウーは、助けを求めるように、ぼくの傍らのアモンを見た。
神竜后妃とよばれる古竜は、うなずいた。
「ルト殿・・・・実は、竜王が脱走したのだ。」
それだと、竜王が監禁されてたみたいだけど。
実はそれに、近いのだ。
と、リイウーは言った。
「監禁とまではいかないが、外出を制限させてもらい、外出の際には必ず二人以上の竜の牙が同行した。」
「竜王っていうのは、分別つかずのワガママなの?」
アモンに尋ねると、彼女は大きく頷いた。
「まあ、リウ並にはワガママだと思ってくれていい。」
「それは酷いな。」
ぼくは言った。
「でも、」
「そうだな。王というのはそんなものだ。竜の牙が、過保護なことをしたのは理由がある。」
アモンが苦々しそうに言った。
「脅迫でもされた?」
竜の都で古竜の長をだれが、どうするって?
有り得ないだろう?
「逆だな。力をさずけようと言ってきた。」
「竜王に? 屋上に屋根を建てる勢いだな。
古竜にこれ以上の力を与えてどうするのか。」
「だが、竜の結界を破って・・・しかも破ったことを、感知させずにそいつはやってきた。」
アモンの瞳が一瞬、怒りにもえた。
「あいつは、竜王を魔王にしてやると、言ってきたんだ。」
アモンが提供してくれた宝珠の魔力の消費量はとんでもなかった。
もともと映像音声つきで遠距離とリアルタイムに連絡をするこの手のアイテムは、魔力の消費量がとんでもない。そして、これはもともと古竜が自分たちが使うためにつくったいわば、原型に近い。
魔力の消費量の軽減など、まったく考慮されていない。
ぼくの魔力が、がりがり削られていく。
加えてこの。
「会いたかったよおっ! ルト!」
魔力制限のない遠距離通信は、こんなに凄いのか。
画像がフルカラーなのはもちろんチラつきや、揺らぎもない。
それはそれとして。
ぼくは、できれば竜の牙のエライ奴と、喋りたかったんだ。
あの道化師のかっこうをしたやつとか。
「どうしたの、ルト。まさかわたしのこと忘れちゃったとか。」
忘れてない。
確か勘定が昂ると人カがとけてしまう、こまった体質の持ち主で、こともあろうに、ミトラでのパーティの席上で竜に戻りそうなになったのを、ぼくが止めてやったのだ。
どういうものか、それ以来、すっかり「上」のものとして、ぼくを扱うようになったのだ。
古竜に身分なんかないと思うのだが、、要するに「さらに、年長の古竜」を相手にするように、親しみと敬意をこめて、ぼくに接するようになったのだ。
「それで、わたしの“踊る道化師”入りの話はどうなったのかな?」
「そんな話は最初からないです。」
「そ、そんな!」
信じられないほど非常識なことを聞いた、とでも言わんばかりに、目を丸くして古竜の種所は息巻いた。
「古竜のパーティ入を断る冒険者がいるなんて!」
「アモン!」
ぼくは、びしっと、クサナギの前に指をたてた。
「で、でも、古竜だよ? もうひとりくらいいても・・・」
「レクス!」
神鎧竜レクスは、もっぱらギウリークの竜人部隊の顧問としてミトラに滞在している。
伝説の神竜を顧問に迎えたことに一時、歓喜していた教皇庁だったが、そろそろ、レクスが基本的に誰の命令もきかないことに気が付き始めている。
なにか、あら事がおこって、竜人部隊を派遣する段になって、真っ青になるサマがいまから楽しみなのだ。
「そ、そんな伝説級の古竜じゃなくって、もっと身近で親しみやすい古竜を、マスコットがわりに、どうかな?」
「ラウレス!」
「あ、あれは、コックさんであって、正式なパーティメンバーじゃないよね。おためしで、美少女系の古竜はどうかな。いまなら、食費だけで雇えるんだけど・・・」
「ラスティ!」
ラスティは、魔王宮の第三層の古竜だ。
500際に満たぬ年齢で、知性をもつに至った天才児である。
ただ、その魔法は制御がいまいちで、どんな料理もかならず、炭にしてしまう。
「そんなわけで、竜の枠はいっぱいなんだ。
冒険者になりたいんだったら、そこらへんの古竜を誘ってパーティを組めばいいと思う。」
ぐぬぬ。
と、いってクサナギは黙ってしまった。
「まあ、一度、あそびにおいでよ。正式なメンバーはむずかしいけど、一緒にすごしてみて、いやでなかったらしばらく冒険者学校に・・・」
「ランゴバルド冒険者学校は、いったいどういう組織なんだ!」
道化姿の男がわってはいった。
そうそう、あなたが竜の牙のリーダーで、ぼくはあなたとしゃべりたかったんだ。
「ランゴバルドのために、冒険者を育てる学校でしょう。」
「一見、そうみせかけて、その実態は・・・・」
「いや、実際、そうでしょ。多少、例外がいるだけで。」
「よく人の身でそんな軽口がたたけるな。」
アモンがつぶやいた。
「並の魔導師なら、最初の十秒で失神している魔力消費力なのだが。」
「それもそうだ。本題にはいろう。
このところ、アモンを悩ませている相談事だが、ぼくにもきかせてほしい。きっと力になれると思う。」
道化服の古竜は、しばし考え込んだ。
「これは、ごくごく身内で解決したかった問題なのだ、ルト殿。」
「アモンは、出自は竜でももう、ぼくらの身内だよ。アモンが自分勝手にぼくらに事情を説明せずに、竜の牙に声をかけたのをありがたいと思ってほしいくらいだね。」
道化竜リイウーは、助けを求めるように、ぼくの傍らのアモンを見た。
神竜后妃とよばれる古竜は、うなずいた。
「ルト殿・・・・実は、竜王が脱走したのだ。」
それだと、竜王が監禁されてたみたいだけど。
実はそれに、近いのだ。
と、リイウーは言った。
「監禁とまではいかないが、外出を制限させてもらい、外出の際には必ず二人以上の竜の牙が同行した。」
「竜王っていうのは、分別つかずのワガママなの?」
アモンに尋ねると、彼女は大きく頷いた。
「まあ、リウ並にはワガママだと思ってくれていい。」
「それは酷いな。」
ぼくは言った。
「でも、」
「そうだな。王というのはそんなものだ。竜の牙が、過保護なことをしたのは理由がある。」
アモンが苦々しそうに言った。
「脅迫でもされた?」
竜の都で古竜の長をだれが、どうするって?
有り得ないだろう?
「逆だな。力をさずけようと言ってきた。」
「竜王に? 屋上に屋根を建てる勢いだな。
古竜にこれ以上の力を与えてどうするのか。」
「だが、竜の結界を破って・・・しかも破ったことを、感知させずにそいつはやってきた。」
アモンの瞳が一瞬、怒りにもえた。
「あいつは、竜王を魔王にしてやると、言ってきたんだ。」
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