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魔王になんかなりたくない!
朝食会
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慣れるまでは一緒に行動しろ。
と、言われて、ルルベルーナは、アキルやオルガ、ルトと一緒に朝食をとった。
朝は時間が押していることも多く、みな、慌ただしい。けっこうな率の学生が、備え付けのコッパンを割ってそこに、ハムやチーズ、野菜炒めを突っ込んで、口に食わえたまま、走るように学食を離れていく。
「すごい勢いですねえ。」
と、ルルベルーナは言った。
少なくとも冒険者学校に入ってからは、ちゃんとした食事をとっいるせいか、顔色はよくなっている。
「食べるまでのお祈りはしないのですか?」
「魔法には、単語に複数の意味を持たせて、全体の詠唱を短くする短縮魔法とか、すべて頭の中だけですませる詠唱破棄とかいろいろあるんだ。」
ルトは、クッキーのうえにポテトサラダをのせたものをつまんでいる。
「神さまへのお祈りもおなじようなものなんだろ?」
「それは、どうでしょう?
王様に対する礼儀を短縮や破棄したらそれは、単なる無礼なのでは?」
「了見の狭い王侯貴族と違って、神さまはおおらかなのさ。どう思う、アキル。」
「どうって、言われてもねえ。」
黒目黒髪の少女は、困ったように言った。
「信仰のしかたなんて、神様によりけりでしよ。正解はないよ。」
そういうものですか。
と、田舎育ちの純朴な少女は、パンを加えた少年が、ちょうど角を曲がってきた少女にぶつかるのを興味深げに見守った。
「なにかいま、『運命』が動いた音がしました。」
「そうだね。そういう小さな運命の分岐点のことを、ふらぐ、というんだ。」
「それは、ランゴバルド特有のいいまわしですか?」
「いいや。」アキルは、首を横に振った。「もと、わたしのいたとこ。」
「それにしても慌ただしいのですね。」
今度は男子生徒同士がぶつかったが、運命の揺らぐ音はしなかった。てめえ、どこに目ェつけてやがんだああっやるのかてまえやんのかおもしれじゃねえかおもしれえやんのかやんのかこらおらおら。
「それは、たぶんあと10分でホームルームが始まるからだよ。ホームルームっていうのは、みんなで集まってする打ち合わせで、けっこう重要。」
ルトが丁寧に教えてくれた。
「食堂はそれぞれの教室のほぼ、真ん中に位置しているのだけれど、まあ、この学校はやたらひろいし、なかなか10分じゃあ、教室までの移動は難しいんだよ。」
「そ、それなら!」
ルルベルーナは、立ち上がった。
「わたしたちも、急がないと!」
「たしかに、ホームルームへの出席というのは、それ自体が成績にカウントされるらしい。ほかはまあ、実力重視で、剣の授業にでなくても一定レベル使えるようになったとみなされればごうかくだし。」
ルトはゆっくりと言った。
「そして、成績が悪いといつまでたっても卒業できない。」
「そ、それは、まずいのではないですか!?」
「でも、考えて見てほしい。冒険者学校を卒業したいのは、卒業すると冒険者の資格がもらえるからだ。
ところが、ぼくら『踊る道化師』はすでに銀級冒険者になっている。」
「・・・それってつまり。」
「卒業なんてしてもしなくてもいい。途中で退学してもまったく問題ない。ぼくたちがここに、在籍してるのは単純にルールス先生の『依頼』があって雇われてるからだ。」
ルトは、お茶を飲み干すと立ち上がった。
「オルガさん、ルルベルーナさんに校内を案内してあげてくれますか?
ホームルームは、午後の部に参加。そこならネイア先生も来てるはずです。もし、可能ならルールス先生も連れてきてください。」
「朝のホームルームでなくていいのか?
いまならぎりぎりで間に合わせるが。」
「今朝のホームルームは、副担任のヤホウ先生です。いかなり、あれはキツい。」
「承知した、が。」
オルガも優雅に立ち上がった。制服を着崩している生徒は多いが、オルガの場合、最初から制服を着る気がまったくない。
いかにも冒険者風の、というか冒険者なのだが、革の鎧にマントを羽織っている。
そして極めつけは、布で幾重にも巻い長い棒状の武器だった。
どこからどう見ても若くして経験をつんだ凄腕の冒険者以外の何物でもない。
街なかにいようが、街道にいようが、目立ってしょうがないのだが、ここはランゴバルド「冒険者」学校だ。
周りの生徒達から、畏敬の念こそあれ、奇異の目で見るものはまずいない。
「おまえはどうする。」
「このところ、朝食にも出てこないメンバーのところに見舞いに行ってきます。
アキルを借りてもいいですか。」
「おまえと一緒ならかまわないが。アキルまで連れていくのに意味があるのか?」
「どうしもしません。一種のいやがらせですよ。」
と、言われて、ルルベルーナは、アキルやオルガ、ルトと一緒に朝食をとった。
朝は時間が押していることも多く、みな、慌ただしい。けっこうな率の学生が、備え付けのコッパンを割ってそこに、ハムやチーズ、野菜炒めを突っ込んで、口に食わえたまま、走るように学食を離れていく。
「すごい勢いですねえ。」
と、ルルベルーナは言った。
少なくとも冒険者学校に入ってからは、ちゃんとした食事をとっいるせいか、顔色はよくなっている。
「食べるまでのお祈りはしないのですか?」
「魔法には、単語に複数の意味を持たせて、全体の詠唱を短くする短縮魔法とか、すべて頭の中だけですませる詠唱破棄とかいろいろあるんだ。」
ルトは、クッキーのうえにポテトサラダをのせたものをつまんでいる。
「神さまへのお祈りもおなじようなものなんだろ?」
「それは、どうでしょう?
王様に対する礼儀を短縮や破棄したらそれは、単なる無礼なのでは?」
「了見の狭い王侯貴族と違って、神さまはおおらかなのさ。どう思う、アキル。」
「どうって、言われてもねえ。」
黒目黒髪の少女は、困ったように言った。
「信仰のしかたなんて、神様によりけりでしよ。正解はないよ。」
そういうものですか。
と、田舎育ちの純朴な少女は、パンを加えた少年が、ちょうど角を曲がってきた少女にぶつかるのを興味深げに見守った。
「なにかいま、『運命』が動いた音がしました。」
「そうだね。そういう小さな運命の分岐点のことを、ふらぐ、というんだ。」
「それは、ランゴバルド特有のいいまわしですか?」
「いいや。」アキルは、首を横に振った。「もと、わたしのいたとこ。」
「それにしても慌ただしいのですね。」
今度は男子生徒同士がぶつかったが、運命の揺らぐ音はしなかった。てめえ、どこに目ェつけてやがんだああっやるのかてまえやんのかおもしれじゃねえかおもしれえやんのかやんのかこらおらおら。
「それは、たぶんあと10分でホームルームが始まるからだよ。ホームルームっていうのは、みんなで集まってする打ち合わせで、けっこう重要。」
ルトが丁寧に教えてくれた。
「食堂はそれぞれの教室のほぼ、真ん中に位置しているのだけれど、まあ、この学校はやたらひろいし、なかなか10分じゃあ、教室までの移動は難しいんだよ。」
「そ、それなら!」
ルルベルーナは、立ち上がった。
「わたしたちも、急がないと!」
「たしかに、ホームルームへの出席というのは、それ自体が成績にカウントされるらしい。ほかはまあ、実力重視で、剣の授業にでなくても一定レベル使えるようになったとみなされればごうかくだし。」
ルトはゆっくりと言った。
「そして、成績が悪いといつまでたっても卒業できない。」
「そ、それは、まずいのではないですか!?」
「でも、考えて見てほしい。冒険者学校を卒業したいのは、卒業すると冒険者の資格がもらえるからだ。
ところが、ぼくら『踊る道化師』はすでに銀級冒険者になっている。」
「・・・それってつまり。」
「卒業なんてしてもしなくてもいい。途中で退学してもまったく問題ない。ぼくたちがここに、在籍してるのは単純にルールス先生の『依頼』があって雇われてるからだ。」
ルトは、お茶を飲み干すと立ち上がった。
「オルガさん、ルルベルーナさんに校内を案内してあげてくれますか?
ホームルームは、午後の部に参加。そこならネイア先生も来てるはずです。もし、可能ならルールス先生も連れてきてください。」
「朝のホームルームでなくていいのか?
いまならぎりぎりで間に合わせるが。」
「今朝のホームルームは、副担任のヤホウ先生です。いかなり、あれはキツい。」
「承知した、が。」
オルガも優雅に立ち上がった。制服を着崩している生徒は多いが、オルガの場合、最初から制服を着る気がまったくない。
いかにも冒険者風の、というか冒険者なのだが、革の鎧にマントを羽織っている。
そして極めつけは、布で幾重にも巻い長い棒状の武器だった。
どこからどう見ても若くして経験をつんだ凄腕の冒険者以外の何物でもない。
街なかにいようが、街道にいようが、目立ってしょうがないのだが、ここはランゴバルド「冒険者」学校だ。
周りの生徒達から、畏敬の念こそあれ、奇異の目で見るものはまずいない。
「おまえはどうする。」
「このところ、朝食にも出てこないメンバーのところに見舞いに行ってきます。
アキルを借りてもいいですか。」
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