40 / 55
魔王になんかなりたくない!
朝食会
しおりを挟む
慣れるまでは一緒に行動しろ。
と、言われて、ルルベルーナは、アキルやオルガ、ルトと一緒に朝食をとった。
朝は時間が押していることも多く、みな、慌ただしい。けっこうな率の学生が、備え付けのコッパンを割ってそこに、ハムやチーズ、野菜炒めを突っ込んで、口に食わえたまま、走るように学食を離れていく。
「すごい勢いですねえ。」
と、ルルベルーナは言った。
少なくとも冒険者学校に入ってからは、ちゃんとした食事をとっいるせいか、顔色はよくなっている。
「食べるまでのお祈りはしないのですか?」
「魔法には、単語に複数の意味を持たせて、全体の詠唱を短くする短縮魔法とか、すべて頭の中だけですませる詠唱破棄とかいろいろあるんだ。」
ルトは、クッキーのうえにポテトサラダをのせたものをつまんでいる。
「神さまへのお祈りもおなじようなものなんだろ?」
「それは、どうでしょう?
王様に対する礼儀を短縮や破棄したらそれは、単なる無礼なのでは?」
「了見の狭い王侯貴族と違って、神さまはおおらかなのさ。どう思う、アキル。」
「どうって、言われてもねえ。」
黒目黒髪の少女は、困ったように言った。
「信仰のしかたなんて、神様によりけりでしよ。正解はないよ。」
そういうものですか。
と、田舎育ちの純朴な少女は、パンを加えた少年が、ちょうど角を曲がってきた少女にぶつかるのを興味深げに見守った。
「なにかいま、『運命』が動いた音がしました。」
「そうだね。そういう小さな運命の分岐点のことを、ふらぐ、というんだ。」
「それは、ランゴバルド特有のいいまわしですか?」
「いいや。」アキルは、首を横に振った。「もと、わたしのいたとこ。」
「それにしても慌ただしいのですね。」
今度は男子生徒同士がぶつかったが、運命の揺らぐ音はしなかった。てめえ、どこに目ェつけてやがんだああっやるのかてまえやんのかおもしれじゃねえかおもしれえやんのかやんのかこらおらおら。
「それは、たぶんあと10分でホームルームが始まるからだよ。ホームルームっていうのは、みんなで集まってする打ち合わせで、けっこう重要。」
ルトが丁寧に教えてくれた。
「食堂はそれぞれの教室のほぼ、真ん中に位置しているのだけれど、まあ、この学校はやたらひろいし、なかなか10分じゃあ、教室までの移動は難しいんだよ。」
「そ、それなら!」
ルルベルーナは、立ち上がった。
「わたしたちも、急がないと!」
「たしかに、ホームルームへの出席というのは、それ自体が成績にカウントされるらしい。ほかはまあ、実力重視で、剣の授業にでなくても一定レベル使えるようになったとみなされればごうかくだし。」
ルトはゆっくりと言った。
「そして、成績が悪いといつまでたっても卒業できない。」
「そ、それは、まずいのではないですか!?」
「でも、考えて見てほしい。冒険者学校を卒業したいのは、卒業すると冒険者の資格がもらえるからだ。
ところが、ぼくら『踊る道化師』はすでに銀級冒険者になっている。」
「・・・それってつまり。」
「卒業なんてしてもしなくてもいい。途中で退学してもまったく問題ない。ぼくたちがここに、在籍してるのは単純にルールス先生の『依頼』があって雇われてるからだ。」
ルトは、お茶を飲み干すと立ち上がった。
「オルガさん、ルルベルーナさんに校内を案内してあげてくれますか?
ホームルームは、午後の部に参加。そこならネイア先生も来てるはずです。もし、可能ならルールス先生も連れてきてください。」
「朝のホームルームでなくていいのか?
いまならぎりぎりで間に合わせるが。」
「今朝のホームルームは、副担任のヤホウ先生です。いかなり、あれはキツい。」
「承知した、が。」
オルガも優雅に立ち上がった。制服を着崩している生徒は多いが、オルガの場合、最初から制服を着る気がまったくない。
いかにも冒険者風の、というか冒険者なのだが、革の鎧にマントを羽織っている。
そして極めつけは、布で幾重にも巻い長い棒状の武器だった。
どこからどう見ても若くして経験をつんだ凄腕の冒険者以外の何物でもない。
街なかにいようが、街道にいようが、目立ってしょうがないのだが、ここはランゴバルド「冒険者」学校だ。
周りの生徒達から、畏敬の念こそあれ、奇異の目で見るものはまずいない。
「おまえはどうする。」
「このところ、朝食にも出てこないメンバーのところに見舞いに行ってきます。
アキルを借りてもいいですか。」
「おまえと一緒ならかまわないが。アキルまで連れていくのに意味があるのか?」
「どうしもしません。一種のいやがらせですよ。」
と、言われて、ルルベルーナは、アキルやオルガ、ルトと一緒に朝食をとった。
朝は時間が押していることも多く、みな、慌ただしい。けっこうな率の学生が、備え付けのコッパンを割ってそこに、ハムやチーズ、野菜炒めを突っ込んで、口に食わえたまま、走るように学食を離れていく。
「すごい勢いですねえ。」
と、ルルベルーナは言った。
少なくとも冒険者学校に入ってからは、ちゃんとした食事をとっいるせいか、顔色はよくなっている。
「食べるまでのお祈りはしないのですか?」
「魔法には、単語に複数の意味を持たせて、全体の詠唱を短くする短縮魔法とか、すべて頭の中だけですませる詠唱破棄とかいろいろあるんだ。」
ルトは、クッキーのうえにポテトサラダをのせたものをつまんでいる。
「神さまへのお祈りもおなじようなものなんだろ?」
「それは、どうでしょう?
王様に対する礼儀を短縮や破棄したらそれは、単なる無礼なのでは?」
「了見の狭い王侯貴族と違って、神さまはおおらかなのさ。どう思う、アキル。」
「どうって、言われてもねえ。」
黒目黒髪の少女は、困ったように言った。
「信仰のしかたなんて、神様によりけりでしよ。正解はないよ。」
そういうものですか。
と、田舎育ちの純朴な少女は、パンを加えた少年が、ちょうど角を曲がってきた少女にぶつかるのを興味深げに見守った。
「なにかいま、『運命』が動いた音がしました。」
「そうだね。そういう小さな運命の分岐点のことを、ふらぐ、というんだ。」
「それは、ランゴバルド特有のいいまわしですか?」
「いいや。」アキルは、首を横に振った。「もと、わたしのいたとこ。」
「それにしても慌ただしいのですね。」
今度は男子生徒同士がぶつかったが、運命の揺らぐ音はしなかった。てめえ、どこに目ェつけてやがんだああっやるのかてまえやんのかおもしれじゃねえかおもしれえやんのかやんのかこらおらおら。
「それは、たぶんあと10分でホームルームが始まるからだよ。ホームルームっていうのは、みんなで集まってする打ち合わせで、けっこう重要。」
ルトが丁寧に教えてくれた。
「食堂はそれぞれの教室のほぼ、真ん中に位置しているのだけれど、まあ、この学校はやたらひろいし、なかなか10分じゃあ、教室までの移動は難しいんだよ。」
「そ、それなら!」
ルルベルーナは、立ち上がった。
「わたしたちも、急がないと!」
「たしかに、ホームルームへの出席というのは、それ自体が成績にカウントされるらしい。ほかはまあ、実力重視で、剣の授業にでなくても一定レベル使えるようになったとみなされればごうかくだし。」
ルトはゆっくりと言った。
「そして、成績が悪いといつまでたっても卒業できない。」
「そ、それは、まずいのではないですか!?」
「でも、考えて見てほしい。冒険者学校を卒業したいのは、卒業すると冒険者の資格がもらえるからだ。
ところが、ぼくら『踊る道化師』はすでに銀級冒険者になっている。」
「・・・それってつまり。」
「卒業なんてしてもしなくてもいい。途中で退学してもまったく問題ない。ぼくたちがここに、在籍してるのは単純にルールス先生の『依頼』があって雇われてるからだ。」
ルトは、お茶を飲み干すと立ち上がった。
「オルガさん、ルルベルーナさんに校内を案内してあげてくれますか?
ホームルームは、午後の部に参加。そこならネイア先生も来てるはずです。もし、可能ならルールス先生も連れてきてください。」
「朝のホームルームでなくていいのか?
いまならぎりぎりで間に合わせるが。」
「今朝のホームルームは、副担任のヤホウ先生です。いかなり、あれはキツい。」
「承知した、が。」
オルガも優雅に立ち上がった。制服を着崩している生徒は多いが、オルガの場合、最初から制服を着る気がまったくない。
いかにも冒険者風の、というか冒険者なのだが、革の鎧にマントを羽織っている。
そして極めつけは、布で幾重にも巻い長い棒状の武器だった。
どこからどう見ても若くして経験をつんだ凄腕の冒険者以外の何物でもない。
街なかにいようが、街道にいようが、目立ってしょうがないのだが、ここはランゴバルド「冒険者」学校だ。
周りの生徒達から、畏敬の念こそあれ、奇異の目で見るものはまずいない。
「おまえはどうする。」
「このところ、朝食にも出てこないメンバーのところに見舞いに行ってきます。
アキルを借りてもいいですか。」
「おまえと一緒ならかまわないが。アキルまで連れていくのに意味があるのか?」
「どうしもしません。一種のいやがらせですよ。」
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。


貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる