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魔王の蠢動
神竜騎士団
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荷物はそのままでいいから、一緒に来い、と言われてルルベルーナは躊躇した。
さっき、試験会場にいたのだから、試験官のひとりには、違いないのだろうが、まわりの試験官はもっと年上で、彼だけが明らかに浮いているように見えた。
そう言えば、彼が、ルルベルーナの失格を宣言したとき、まわりの試験官は、なにか困った顔をしていたように思う。
つまりは、このサオウと名乗った男は、まったく得体の知れない人物なのだ。
顔つきも、男らしいといえば言えるのだろうが、
だいたい、神竜騎士団ってなんなのだろう。
「早く来い」
と、促したつもりのサオウだったが、うら若き乙女には脅迫に写ったらしく、ルルベルーナは、体を縮こまらせた。
腕をひっぱってたたせようとした、その鼻先に、槍の穂先が差し込れた。
「なにをしやがるっ!」
飛び下がってサオウは、喚いた。
「なんだてめえは!」
「女性の部屋に侵入し、これを拉致しようとした輩が、それを聞くか?」
短い槍を突き出したイゲル。
さっきの、遠隔攻撃の試験で優秀な成績をあげた、僻地の狩猟民族の少女だった。
「ほうほう、さっき試験会場にいたガキか。」
意外にもサオウは、愉快そうに言った。
「試験はどうだった? いや、合格に決まってるな。どうだ、おまえも来るか?」
「だから、どこへだ?」
イゲルは、サオウの笑みに戸惑った(うに、槍の穂先をサオウの喉元から少し離した。
「だから、神竜騎士団だ。」
「それがわからんから、聞いているのだ。」
「ぼくから、説明しようか?」
部屋の外からかかった少年の声に、全員の視線が集中した。
魔法弓を使う長寿族の少年・・・ガゼルだった。
「サオウ殿も悪気はないようなのだが、どうも人相の悪さと口下手でだいぶ損をしてるようだ。ぼくが説明しよう。」
「そりゃあ、助かる。」
サオウは、あっさり頭を下げた。
見かけほど暴力的な単細胞ではなさそうだった。
「どうせ、おまえもスカウトするつもりでいたんだ。二重に手間がはぶけて助かるぜ。」
邪魔します。
と、声をかけて、少年は、するりと室内に体をすべりこませた。
「ぼくと、イゲルはもちろんだが、近接戦闘試験を受けたものは全員合格した。遠隔攻撃試験で全部の的をはずしたものを含めて、全員だ。」
一同を見回すと、少年はにこりと笑って続けた。
「サオウ殿はどこから、どんな指示をもらったいたんだろうか?」
「ルルベルーナという女を難癖をつけてでも不合格にするように、むろん、出処はジャンガ校長からだ。」
「ほう?
しかし、そんなことをしてはあとあと問題になるのでは?」
「もちろん。本気で不合格にするつもりはない。あれこれと、難癖をつけて寄付金を、もっと積ませようとするジャンガの悪知恵だ。」
ルルベルーナは、内心呆れた。
悪知恵、というか浅すぎる。そんなことが噂でも流れたら、もう誰も冒険者学校に寄付金を払って入学しようという愚か者はいなくなるだろう。もともと公営の学校ではある。収めた寄付金の一部、あるいは全部が、賄賂に流れていることは予想していたが、まさか、おかわりを要求されるとは。
「ずいぶんと図々しい考えだな。」
と、ガゼル少年はつぶやいた。
「その通り。なので、俺たち『神竜騎士団』の権限で、ルルベルーナは入学させることにした。」
「神竜騎士団ってなんです。」
サオウが、口を開きかけた。おそらく、神竜騎士団の輝かしい栄光の歴史を一くさり吟じようとしたのだろうが、ガゼルが無情にもぶった切った。
「冒険者学校の自警団だ。」
「じ、け、いだん?」
「校内の秩序を守ったり、ほかの学校とのトラブルの矢面にたつ連中た。ランゴバルド冒険者学校の自警団は歴史もあり、学校側にも影響力が強い。」
「でもいくらなんでも、入学試験の結果まで左右できるなんて・・・」
「もともと、全員入学が基本的だ。校長が追加の賄賂を要求したのを必要なくしただけだな。」
そう言ってから、サオウは、三人の新入生をぐるりと見回した。
さっき、試験会場にいたのだから、試験官のひとりには、違いないのだろうが、まわりの試験官はもっと年上で、彼だけが明らかに浮いているように見えた。
そう言えば、彼が、ルルベルーナの失格を宣言したとき、まわりの試験官は、なにか困った顔をしていたように思う。
つまりは、このサオウと名乗った男は、まったく得体の知れない人物なのだ。
顔つきも、男らしいといえば言えるのだろうが、
だいたい、神竜騎士団ってなんなのだろう。
「早く来い」
と、促したつもりのサオウだったが、うら若き乙女には脅迫に写ったらしく、ルルベルーナは、体を縮こまらせた。
腕をひっぱってたたせようとした、その鼻先に、槍の穂先が差し込れた。
「なにをしやがるっ!」
飛び下がってサオウは、喚いた。
「なんだてめえは!」
「女性の部屋に侵入し、これを拉致しようとした輩が、それを聞くか?」
短い槍を突き出したイゲル。
さっきの、遠隔攻撃の試験で優秀な成績をあげた、僻地の狩猟民族の少女だった。
「ほうほう、さっき試験会場にいたガキか。」
意外にもサオウは、愉快そうに言った。
「試験はどうだった? いや、合格に決まってるな。どうだ、おまえも来るか?」
「だから、どこへだ?」
イゲルは、サオウの笑みに戸惑った(うに、槍の穂先をサオウの喉元から少し離した。
「だから、神竜騎士団だ。」
「それがわからんから、聞いているのだ。」
「ぼくから、説明しようか?」
部屋の外からかかった少年の声に、全員の視線が集中した。
魔法弓を使う長寿族の少年・・・ガゼルだった。
「サオウ殿も悪気はないようなのだが、どうも人相の悪さと口下手でだいぶ損をしてるようだ。ぼくが説明しよう。」
「そりゃあ、助かる。」
サオウは、あっさり頭を下げた。
見かけほど暴力的な単細胞ではなさそうだった。
「どうせ、おまえもスカウトするつもりでいたんだ。二重に手間がはぶけて助かるぜ。」
邪魔します。
と、声をかけて、少年は、するりと室内に体をすべりこませた。
「ぼくと、イゲルはもちろんだが、近接戦闘試験を受けたものは全員合格した。遠隔攻撃試験で全部の的をはずしたものを含めて、全員だ。」
一同を見回すと、少年はにこりと笑って続けた。
「サオウ殿はどこから、どんな指示をもらったいたんだろうか?」
「ルルベルーナという女を難癖をつけてでも不合格にするように、むろん、出処はジャンガ校長からだ。」
「ほう?
しかし、そんなことをしてはあとあと問題になるのでは?」
「もちろん。本気で不合格にするつもりはない。あれこれと、難癖をつけて寄付金を、もっと積ませようとするジャンガの悪知恵だ。」
ルルベルーナは、内心呆れた。
悪知恵、というか浅すぎる。そんなことが噂でも流れたら、もう誰も冒険者学校に寄付金を払って入学しようという愚か者はいなくなるだろう。もともと公営の学校ではある。収めた寄付金の一部、あるいは全部が、賄賂に流れていることは予想していたが、まさか、おかわりを要求されるとは。
「ずいぶんと図々しい考えだな。」
と、ガゼル少年はつぶやいた。
「その通り。なので、俺たち『神竜騎士団』の権限で、ルルベルーナは入学させることにした。」
「神竜騎士団ってなんです。」
サオウが、口を開きかけた。おそらく、神竜騎士団の輝かしい栄光の歴史を一くさり吟じようとしたのだろうが、ガゼルが無情にもぶった切った。
「冒険者学校の自警団だ。」
「じ、け、いだん?」
「校内の秩序を守ったり、ほかの学校とのトラブルの矢面にたつ連中た。ランゴバルド冒険者学校の自警団は歴史もあり、学校側にも影響力が強い。」
「でもいくらなんでも、入学試験の結果まで左右できるなんて・・・」
「もともと、全員入学が基本的だ。校長が追加の賄賂を要求したのを必要なくしただけだな。」
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