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第50話 降臨
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魔王バズス=リウ。
真祖吸血鬼ロウ=リンド
神獣ギムリウス
神竜皇姫リアモンド
「ひとりスタンピード」フィリオリナ
そして「魔王の再来」。ぼく、駆け出し冒険者のルト。
ぼくはこの前の夜のことを思い出して、高揚感につつまれていた。
ぼくは、ひとりではない。
フィリオリナとふたりきりですらない。
このパーティならば、邪神そのものにも対抗できるだろう。
まだ冒険者資格さえない、ぼくたち。
「踊る道化師」。
そして、このメンバーなら一番恐ろしいこと。誰かが暴走してもそれを止めてくれる。
互いが互いを牽制し合える力があるのだ。
それはどういうことかと言うと。
上空で神鎧竜レクスがブレスの発射体制にはいった。
アモンが、それまで立っていた塔の先端を離れて距離をとる。
「阿呆がっ!」
という罵りがきこえた。
ギムリウスの糸が砦のように、広場全体を包んだ。
魔法に、物理攻撃に、無類の耐性をもつギムリウスの糸砦。ボルテックが、ぼくが、フィリオリナが、幾重にも障壁を張り巡らせていく。
なんという頼りなさ!
踏み潰されるアリが、木の葉のマントに身を包んで、踏みつけられるのを、避けようとしているような。
「アモンが相殺してくれる。」
ぼくの、表情をみてとったのか、ドロシーが不安げにぼくを、見上げた。
アキルも走りよってきた、
使徒も。
蜘蛛たちも。
もはや、戦いどころではないと、わかったのだろう。
ひゅるっ。
と、風が舞って、フィリオリナが隣に舞い降りた。
「99.9パーセントは、アモンが相殺してくれるはずだ。」
「でも、無限の力の千分の一も、やっぱり無限だからなあ。」
そうぼやくと、フィリオリナは、ぼくの頭を撫でた。
「神竜のブレスは、『 測定不能 』なだけだ。別に無限などという如何わしいもんじゃないぞ、我が君。」
その、呼び方は、アウデリアさんがクローディア公を呼ぶときの、だよね。
こう状況でもフィリオリナは落ち着いたものだ。
ぼくはと言うと、相殺が上手く、できなかったときの用心に次元転移の魔法を用意するのに懸命だった。
「だからできれば、99.9のあとにさらに9を
いくつか並べて欲しい。できれば20っ個くらいは。」
「ルト!」
ドロシーの引きつった声が耳もとで聞こえる。
いや、ドロシー、ここはボルテックのじじいに抱きついててください。
「大丈夫だ。誰かが暴走しても誰かが止める。仲間というものは、そういうふうに出来ている。」
アキルが、ぼくの言葉に、なにかを決意したような顔で大きく頷いた。
閃光。
衝撃波が、広がる。
凄いな、アモン。ブレスの99.9・・・9999999パーセントを相殺してのけたのか。
いや、そこまで、微細なコントロールが、出来るということは、アモンも、そしてレクスもこれでも全力ではなかったのだろう。
衝撃波は下方、つまりぼくらのいる広場には、ほとんど影響しなかった。
ギムリウスの巣は、びりびりと震えたが、なんとか耐えた。
だが、衝撃波(それでも、アモンが相殺してのけたほんの余波)は。ふたりのブレスが、衝突したところから同心円上に広がり、尖塔や5階建て以上の建物が、軒並み崩壊していく。
どこまで広がるのか、減衰が確認できないのでわからなかった。
たぶんランゴバルド中の高層建築物が軒並みやられるんじゃないだろうか。
「巣」から無数の糸が、舞い降りる。それぞれに、戦闘を再開しようとした蜘蛛を絡めとって、巣の中に連れていった。
戦いを中断していた使徒たちは、蜘蛛とは違って理性が、あった。
このまま。戦いを続けて良いものなのか。
それを、判断すべきものは、ぐったりと意識を失っていた。
その、襟首をリウが持ち上げている。
そのまま、地上にふわりと、降りると使徒たちに向き直る。
アキルが、ちょいちょいとぼくの腕をつついた。
小さなメモを渡してくる。
「なに、これ?」
「わたしが、この場をおさめるから、この通りに、読んでよ!」
「いいけど?」
「お約束って、やつよ。テンプレ。」
勇者殿のたって依頼。ぼくは、魔道も駆使した大音声で叫んだ。
「控えい控えい控えいっ!」
いや、アキル。異世界ではなんかのお約束があるのかもしれないけど、西域だと通じてないぞ。ほらみんな、可哀想なひとを見る目で見ている。
アキルは隣に仁王立ち。うむ。ここまでは間違っていないらしい。
「ここに、おわす御方をどなたと心得る!
恐れ多くも先の大邪神ヴァルゴールさまにあらせられるそ!
頭が高い!控えおろう!!」
呆れて、アキルの顔を見た。清楚で無邪気そうな少女の顔は若干、不満げである。
「驚かないんだ。」
「なにが。」
「わたしがヴァルゴールになってたことに。」
「事情はあとできく。とりあえず、声を聞いでも、姿をみても誰も正気を失わないみたいだから」
「我が忠実なる使徒へ申し渡す。
血の祭典はいま、この瞬間をもって中止とする。未来永劫、行われることはないと知れ。」
使徒たちは、頭をめり込むほどに地面に擦り付けている。
わかる、のだ、彼らには。
異世界からきたこの少女が、邪神ヴァルゴールであることが。
「我に捧げる供物は我が決める。
卑小な命などいくら捧げても、我の乾きを満たすことできぬ。」
し、しかし
と誰かが言いかけた。
ならば、わたしたちはこれからどうすれば。
「ふむ。それぞれに、お前たちは表の顔を持っているだろう?
それで、暮らせばよかろう。ランゴバルドは我の直轄地とする。ここで暮らしたいものはそうすればよい。」
では、わたしどもは何を、目的とした生きていけばよいのですか?
「それは、人それぞれに、異なるだろうな。だが、無駄な血が流れても我にとって供物になるどころか、邪魔にしかならん。
それを、良く覚えておくがいい。」
ランゴバルドの公式な記録にはこう記録されている。
情報に基づいて、ヴァルゴールの使徒のアジトを急襲したが、使徒アスタロトには逃げられた。
同時に人質とされていた100余名を無事に解放した。
と。
真祖吸血鬼ロウ=リンド
神獣ギムリウス
神竜皇姫リアモンド
「ひとりスタンピード」フィリオリナ
そして「魔王の再来」。ぼく、駆け出し冒険者のルト。
ぼくはこの前の夜のことを思い出して、高揚感につつまれていた。
ぼくは、ひとりではない。
フィリオリナとふたりきりですらない。
このパーティならば、邪神そのものにも対抗できるだろう。
まだ冒険者資格さえない、ぼくたち。
「踊る道化師」。
そして、このメンバーなら一番恐ろしいこと。誰かが暴走してもそれを止めてくれる。
互いが互いを牽制し合える力があるのだ。
それはどういうことかと言うと。
上空で神鎧竜レクスがブレスの発射体制にはいった。
アモンが、それまで立っていた塔の先端を離れて距離をとる。
「阿呆がっ!」
という罵りがきこえた。
ギムリウスの糸が砦のように、広場全体を包んだ。
魔法に、物理攻撃に、無類の耐性をもつギムリウスの糸砦。ボルテックが、ぼくが、フィリオリナが、幾重にも障壁を張り巡らせていく。
なんという頼りなさ!
踏み潰されるアリが、木の葉のマントに身を包んで、踏みつけられるのを、避けようとしているような。
「アモンが相殺してくれる。」
ぼくの、表情をみてとったのか、ドロシーが不安げにぼくを、見上げた。
アキルも走りよってきた、
使徒も。
蜘蛛たちも。
もはや、戦いどころではないと、わかったのだろう。
ひゅるっ。
と、風が舞って、フィリオリナが隣に舞い降りた。
「99.9パーセントは、アモンが相殺してくれるはずだ。」
「でも、無限の力の千分の一も、やっぱり無限だからなあ。」
そうぼやくと、フィリオリナは、ぼくの頭を撫でた。
「神竜のブレスは、『 測定不能 』なだけだ。別に無限などという如何わしいもんじゃないぞ、我が君。」
その、呼び方は、アウデリアさんがクローディア公を呼ぶときの、だよね。
こう状況でもフィリオリナは落ち着いたものだ。
ぼくはと言うと、相殺が上手く、できなかったときの用心に次元転移の魔法を用意するのに懸命だった。
「だからできれば、99.9のあとにさらに9を
いくつか並べて欲しい。できれば20っ個くらいは。」
「ルト!」
ドロシーの引きつった声が耳もとで聞こえる。
いや、ドロシー、ここはボルテックのじじいに抱きついててください。
「大丈夫だ。誰かが暴走しても誰かが止める。仲間というものは、そういうふうに出来ている。」
アキルが、ぼくの言葉に、なにかを決意したような顔で大きく頷いた。
閃光。
衝撃波が、広がる。
凄いな、アモン。ブレスの99.9・・・9999999パーセントを相殺してのけたのか。
いや、そこまで、微細なコントロールが、出来るということは、アモンも、そしてレクスもこれでも全力ではなかったのだろう。
衝撃波は下方、つまりぼくらのいる広場には、ほとんど影響しなかった。
ギムリウスの巣は、びりびりと震えたが、なんとか耐えた。
だが、衝撃波(それでも、アモンが相殺してのけたほんの余波)は。ふたりのブレスが、衝突したところから同心円上に広がり、尖塔や5階建て以上の建物が、軒並み崩壊していく。
どこまで広がるのか、減衰が確認できないのでわからなかった。
たぶんランゴバルド中の高層建築物が軒並みやられるんじゃないだろうか。
「巣」から無数の糸が、舞い降りる。それぞれに、戦闘を再開しようとした蜘蛛を絡めとって、巣の中に連れていった。
戦いを中断していた使徒たちは、蜘蛛とは違って理性が、あった。
このまま。戦いを続けて良いものなのか。
それを、判断すべきものは、ぐったりと意識を失っていた。
その、襟首をリウが持ち上げている。
そのまま、地上にふわりと、降りると使徒たちに向き直る。
アキルが、ちょいちょいとぼくの腕をつついた。
小さなメモを渡してくる。
「なに、これ?」
「わたしが、この場をおさめるから、この通りに、読んでよ!」
「いいけど?」
「お約束って、やつよ。テンプレ。」
勇者殿のたって依頼。ぼくは、魔道も駆使した大音声で叫んだ。
「控えい控えい控えいっ!」
いや、アキル。異世界ではなんかのお約束があるのかもしれないけど、西域だと通じてないぞ。ほらみんな、可哀想なひとを見る目で見ている。
アキルは隣に仁王立ち。うむ。ここまでは間違っていないらしい。
「ここに、おわす御方をどなたと心得る!
恐れ多くも先の大邪神ヴァルゴールさまにあらせられるそ!
頭が高い!控えおろう!!」
呆れて、アキルの顔を見た。清楚で無邪気そうな少女の顔は若干、不満げである。
「驚かないんだ。」
「なにが。」
「わたしがヴァルゴールになってたことに。」
「事情はあとできく。とりあえず、声を聞いでも、姿をみても誰も正気を失わないみたいだから」
「我が忠実なる使徒へ申し渡す。
血の祭典はいま、この瞬間をもって中止とする。未来永劫、行われることはないと知れ。」
使徒たちは、頭をめり込むほどに地面に擦り付けている。
わかる、のだ、彼らには。
異世界からきたこの少女が、邪神ヴァルゴールであることが。
「我に捧げる供物は我が決める。
卑小な命などいくら捧げても、我の乾きを満たすことできぬ。」
し、しかし
と誰かが言いかけた。
ならば、わたしたちはこれからどうすれば。
「ふむ。それぞれに、お前たちは表の顔を持っているだろう?
それで、暮らせばよかろう。ランゴバルドは我の直轄地とする。ここで暮らしたいものはそうすればよい。」
では、わたしどもは何を、目的とした生きていけばよいのですか?
「それは、人それぞれに、異なるだろうな。だが、無駄な血が流れても我にとって供物になるどころか、邪魔にしかならん。
それを、良く覚えておくがいい。」
ランゴバルドの公式な記録にはこう記録されている。
情報に基づいて、ヴァルゴールの使徒のアジトを急襲したが、使徒アスタロトには逃げられた。
同時に人質とされていた100余名を無事に解放した。
と。
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