下っ端妃は逃げ出したい

都茉莉

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 あれから五年。陛下はあの時の私と同じ十五歳。皇族ならば子どもの一人や二人いてもおかしくはない年齢だ。
 だというのに、まったく妃に手をつけていない。一部では男色かなどと噂が出るほど。
「宰相様が嘆いていましたよ。さっさと紫宮にでもどこでも通ってくださいな」
 などと進言しても、
「背後の親族が面倒だ。わたしはまだ独り身でいい」
 の一点張り。
 私はそこまで気にしていないのだが、黙っていないのが高官たち。何度も進言に行くが、その都度すげない返事をしているという。
 ついに、例のお気に入りの女官、つまり私でもいいからせめてお世継ぎをなどと言い出す者まで現れる始末。
 すると陛下は意地悪く笑って言うのだ。
「あのときの話はまだ有効だぞ? 紫宮を選ぶか?」
 まさかそんなとんでもない選択ができるわけがない。寵姫などありえないというのは今も変わらない。それに、陛下も私が断るのをわかっていてもこんなことをのたまうのだ。そのせいで私に世継ぎをなどとふざけた事をいう輩が出てくるのである。
 だから、たまには戯れに乗って困らせるのも許されると思うんだ。
「私などではなく、星綺のような可愛らしい娘を嫁にもらってくださいな」
 そうして、星綺に教わった通りに優雅に礼をしてみせると、陛下は渋い顔をしたのだった。
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