6 / 6
陸
しおりを挟む
あれから五年。陛下はあの時の私と同じ十五歳。皇族ならば子どもの一人や二人いてもおかしくはない年齢だ。
だというのに、まったく妃に手をつけていない。一部では男色かなどと噂が出るほど。
「宰相様が嘆いていましたよ。さっさと紫宮にでもどこでも通ってくださいな」
などと進言しても、
「背後の親族が面倒だ。わたしはまだ独り身でいい」
の一点張り。
私はそこまで気にしていないのだが、黙っていないのが高官たち。何度も進言に行くが、その都度すげない返事をしているという。
ついに、例のお気に入りの女官、つまり私でもいいからせめてお世継ぎをなどと言い出す者まで現れる始末。
すると陛下は意地悪く笑って言うのだ。
「あのときの話はまだ有効だぞ? 紫宮を選ぶか?」
まさかそんなとんでもない選択ができるわけがない。寵姫などありえないというのは今も変わらない。それに、陛下も私が断るのをわかっていてもこんなことをのたまうのだ。そのせいで私に世継ぎをなどとふざけた事をいう輩が出てくるのである。
だから、たまには戯れに乗って困らせるのも許されると思うんだ。
「私などではなく、星綺のような可愛らしい娘を嫁にもらってくださいな」
そうして、星綺に教わった通りに優雅に礼をしてみせると、陛下は渋い顔をしたのだった。
だというのに、まったく妃に手をつけていない。一部では男色かなどと噂が出るほど。
「宰相様が嘆いていましたよ。さっさと紫宮にでもどこでも通ってくださいな」
などと進言しても、
「背後の親族が面倒だ。わたしはまだ独り身でいい」
の一点張り。
私はそこまで気にしていないのだが、黙っていないのが高官たち。何度も進言に行くが、その都度すげない返事をしているという。
ついに、例のお気に入りの女官、つまり私でもいいからせめてお世継ぎをなどと言い出す者まで現れる始末。
すると陛下は意地悪く笑って言うのだ。
「あのときの話はまだ有効だぞ? 紫宮を選ぶか?」
まさかそんなとんでもない選択ができるわけがない。寵姫などありえないというのは今も変わらない。それに、陛下も私が断るのをわかっていてもこんなことをのたまうのだ。そのせいで私に世継ぎをなどとふざけた事をいう輩が出てくるのである。
だから、たまには戯れに乗って困らせるのも許されると思うんだ。
「私などではなく、星綺のような可愛らしい娘を嫁にもらってくださいな」
そうして、星綺に教わった通りに優雅に礼をしてみせると、陛下は渋い顔をしたのだった。
5
お気に入りに追加
13
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く
ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。
逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。
「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」
誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。
「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」
だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。
妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。
ご都合主義満載です!
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番
すれ違いエンド
ざまぁ
ゆるゆる設定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる