SWEEP

夢野なつ

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08 生き様

後始末

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 結局、管理局に送信するための録画映像は、病院に備え付けられている監視カメラの映像を拝借した。俺達は悪名高いS級廃棄物を処理した掃除屋として褒め称えられ、しばらくの間仲間内での有名人になってしまうこととなる。しかしまったくもって、金銭面に関しては掃除屋の出来高制度に助けられたものだ。ヨミは高額だった。
 カンナが祝勝会をしようと鬼電してきたものの、俺はひたすら電話を無視し続けた。ビスと張った共同戦線の約束を忘れた訳ではない。それに――。
 もう俺達は、さよならしなくてはいけないのだ。

 あれからしばらくして、俺達はヘルゼルの定期メンテナンスと、俺の異能研究をするために、シカ医院に近い西地区のマンション兼事務所に引っ越した。俺達は今こっちで掃除屋活動を続けている。
 割と平和なこの地区は、中央ほど廃棄物で溢れかえっては居ない。なので少々稼ぎは悪くなるが、地道な仕事を続けつつヨミの死から得た賞金を大事に使っていれば、メンテ費用を差し引いても生きていける。
 掃除屋としては中の上と言ったところか。平凡な日々。それは待ちわびていたもの。
 ヨミの『壊したがり』な性質について、考えることがある。
 俺達掃除屋も、日常的に人間を壊す。廃棄物と分類付けられてはいるが、それは本来、間違いなく心を持った人間だ。そんな事は、分かりきっている。自分の精神を守り抜くため、意識から排除しているだけ。
 俺達は人殺しであり、根本的な部分はヨミと変わらない。
 では、どんな表層がヨミと俺達に違いをもたらしているのだろう?
 それは多分、国に所属しているか、自由に与しているかの違いに過ぎない。
 俺達は必要悪だ。そう、悪人なんだ。

 悪は善の矛先だ。
 いつか、悪が支配する世界からの脱却を望んだ強い人間は、真っ先に掃除屋制度を倒しにかかるだろう。それは世界から革命という名前で呼ばれるかもしれない。
 ターゲットとなる俺達末端の掃除屋は、その『正義の革命』を一番最初に察知する事ができる。
 俺はこっそりと考えている。
 もしこれから先、心を打ち震えさせられるような革命が起きたならば、その首謀者に力を貸すか、素直に愚直に首を差し出してやろうか、と。後者は間違いなくヘルの反対を喰らうので、却下だろうけれど。
「ただいま――あー!またタバコ吸ってるー!」
 ヘルは帰ってくるやいなや、室内でプカプカやる俺を叱りつけた。俺はただ笑うだけ。煙は昇る。
 新しい事務所の白い壁にも、程なくすればタバコの臭いが取り憑いていくのだろう。
 不思議と、期待感を覚えてしまう。


 END
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