Finale Love

卯月 桜🍒

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♪咲く花♪

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これでも元の場所に帰れる。
待ってくれてる人が私にはいる。
今度は2人で共に歩きたい。
ささやかな幸せかもしれない。
それでもかまわない。
一緒に共に歩いてくれる人がいるから。

煌也はシャワーから出てきて弥生の小さい背中を見つめた。

「弥生?」
「ん?」
「俺な、弥生が一途に思う遥樹の気持ちが好きや」
「え・・・」
「でもな、弥生の思いを独り占めすることは出来ん。弥生やてもうーわかってるよな? 俺やて弥生とこのまま一緒にいたいんよ。でもそれは、俺だけの思いや。そんな思いのまま弥生と一緒にいることは出来ん。弥生の幸せじゃないから。こんな俺やて、弥生の幸せを願ってる。だから、弥生には弥生らしくあってほし。俺はそんな弥生を好きになっただけや」
「煌也さんー・・・」
「弥生の気持ちやて、もうー決まってるやろ? だったら、その気持ちに素直になるだけなんちゃうの?
弥生は弥生の道に行けばいいんよ。俺や遥樹に遠慮せんと。それが弥生なんやから。弥生は自分のことより人のことを考えてまうから、自分自身が身動きとれないんやろうな。弥生のいいところでもあり、ダメなところなんやろうな。でもそこまで、相手のことを思える自分に誇りを持て。それが弥生のためなんよ。ほな、俺は眠くなったからベッドに行くわ」

煌也はベッドに行き眠りについた。

煌也さんの言うとおり。
私はそんな自分から逃げてた。
でも・・・もうー逃げない。
逃げちゃいけない。
自分自身のために。
ここから私自身の新しい道が始まる。
険しくて辛い道のりかもしれない。
それでも歩みは止めてはいけない。
きっと・・・今の私なら歩いていけそうな気がする。
この先、何があるかわからないけど・・・。
未来なんて誰にも見えない。
見えないからこそいい。
見えないから不安になることもあるけど。
でもそれを求めたらきりがない。
だから人は目の前にあることをあきらめず精一杯やる。
結果がダメだとしても。
今までの私はそんな自分をあきらめ逃げてきた。
でも、回り回って必ず戻ってくる。
それがどんな事柄でも。
目を背け逃げてきたぶん同じように戻ってくる。
自分が乗り越えられない限り・・・。
その中で得るものがあれば、失うものもある。
でもそれは・・・まだ見ぬ未来の自分に出会うための道のり。
その道のりから逃れることは出来ない。
けして逃れてあきらめてはいけない。
自分自身が望んでることだから。
辛い出来事も、悲しい出来事も、苦しい出来事も、楽しい出来事も全ては未来に繋がる自分への道。
『かけがえ』のないものは自分のすぐそばにある。
そのことを教えられた気がした。

弥生はソファーに横になってしまいそのまま眠りについてしまった。
翌日の朝。
煌也はいつもどおりに事務所に行った。
弥生は遥樹がいる福岡に向かうために荷物をまとめていた。

このまま煌也さんに何も言わずに出ていったら怒られるかな?
でも、煌也さんの顔見たら、いけなくなりそうで怖い。
本当は煌也さんに一言いったほうがいいんだけど・・・。
煌也さんがいない今のうちに出ていったほうがいいんだろうな。
少し寂しいけど・・・。
でも私の気持ちはもうー決まってる。
きっと煌也さんはそれをわかってる。
だから、昨日あんなことを言った。
ホント、煌也さんにはかなわない。
でも・・・最後に手紙だけ書いて出ていこう。

弥生はペント紙を出し自分の正直な気持ちを綴りだした。

『高野煌也様へ』

「煌也さん。今までこんな私のそばにいてくれてありがとう。煌也さんと共に生活が出来て楽しい時間だった。幸せな時間をくれてありがとう。私は煌也さんからいっぱいいろんなことを教わった。言葉には出来ないけど。煌也さんの思い、すごく嬉しかったよ。こんなダメダメの私を思ってくれて本当に嬉しかった。私は少しでも煌也さんの思いに答えられたかな? どうなんだろう? こんな形で煌也さんから離れてはいけないと思ったんだけど、きっと煌也さんの顔見たら、いけなくなっちゃうから。本当は私、煌也さんのこと、1人の男として意識してた。でもそれは、私にとっての逃げになる。煌也さんは私がそばにいなくても大丈夫。私も煌冶さんみたいに自分に強くならないとね。少しだけ涙出てきちゃったよ。でもこの涙は煌也さんだけの涙。それに私の未来に繋がる涙。いつか煌也さんと笑って会える日を私は思い描いてる。煌也さんも同じだったらいいな。煌也さん。本当に今までありがとうございました。弥生より」

弥生は書いた手紙を封筒に入れリビングのテーブルの上においた。
少しの荷物を持ち煌也の自宅を出た。
弥生は週刊誌に写真を撮られたことにも気づかず空港へと向かい福岡へと行った。

また福岡に戻ってきちゃった。
誰にも言ってないからいいよね。
さあー・・・今から不動産に行かなきゃ。
煌也さんの自宅にいた時に全ての契約は終わらしてるから、あとは印鑑と契約書とカギをもらうだけ。
これから生活ちょっと大変だけど頑張ろう。

弥生は不動産に向かった。

「あのー部屋の契約をした水無月弥生ですけど」
「水無月さんね」
「はい」
「書類に印鑑お願いします」
「はい。あのー・・・」
「何か?」
「東京から送った荷物って、もうアパートに届いてますよね?」
「届いてましたよ」
「ありがとうございます」

弥生は印鑑を全て押し契約書と部屋のカギをもらい不動産をあとにした。
アパートについた弥生は手持ちの荷物を置き掃除を始めた。

さすが新築のアパート。
室内モキレイだし外壁もキレイ。
これからここで生活するんだよね。
今までは煌也さんだったり遥がいたけど。
でもこれからは私1人。
寂しいけど、楽しまなきゃね。
とにかく今は掃除を早く終えなきゃ夜になっちゃう。

弥生は部屋の隅々までキレイに掃除を終え一時を過ごしていた。

ようやく部屋の掃除が終わった。
ちょい疲れた。
家具の配置もなんとか終わったし寝る場所も決まったし、あとは今日の夕食の材料を買出しに行くだけ。
そーと決まればスーパーに買い物。

弥生はエコバッグと財布を手に持ち近くのスーパーへと行った。

その頃、煌也は仕事を終え自宅に戻っていた。

「ただいま」
「・・・」

弥生いないんか?

煌也は玄関でくつを脱ぎリビングへと行った。
テーブルの上には1枚の封筒が置かれてあり煌也は手にして読んだ。

弥生のヤツ、何も言わずに出て行ったんやな。
連絡先ぐらい書といてくれてもいいのに。
何処に行ったかはわかるけど・・・。
これで弥生も遥樹と幸せになれるんやろうな。
俺はそれを見守るだけや。
今まで弥生がいたから部屋が広く感じなかった。
せやけど・・・今は俺1人。
弥生と出会う前に戻ったんやろうな。
今頃、弥生は何してるんやろうな。

煌也は残ってる仕事を自宅スタジオで仕上げるため地下へと行きやり始めた。
その頃、弥生は自宅アパートへと戻っていた。

買い物も済まして夕食もすましたからあとはお風呂に入って寝るだけ。
明日は仕事の面接だから早めに起きなきゃ。

それから1週間の月日が流れ弥生はレンタル屋でバイトをしていた。
そんな矢先、煌也の自宅から出てきた弥生の写真が週刊誌に取り上げられた。
煌也の事務所には各マスコミからの問い合わせがさっとうしたが、事務所側は写真週刊誌の記事を否定した。
そのことに拍車をかけるようにTV番組の芸能ニュースで取り上げられ、弥生は世間の注目のまとになってしまった。
弥生はそのことに気づかずいつもどおりの生活を送っていた。

なんか・・・お客さんにジロジロ見られてるんだけど、なんで?
私の気にしすぎかな?
あと15分ぐらいでバイト終わるから気にしなくてもいっか。

バイトを終えた弥生は店から出て自転車に乗ろうとしてた。
数人の女が弥生に近づいき、弥生を突き飛ばした。
弥生は何がなんだかわからないまま女を見てた。

「あんた、煌也の何?!」
「え・・・」
「うちらファンを差し終えて煌也の自宅マンションから出てくるなんて、何考えてんの?!」
「あんたみたいな女なんて、こっちのほがお似合いよ」

数人の女達は弥生をよってたかって暴行をした。
気がすんだ女達はその場を去った。
弥生は傷ついた体の痛みを堪えながらも立ち上がろうとしたが、立ち上がることが出来ずにいた。
ちょうどその時、弥生の後方から1人の男が駆け寄ってきた。

「大丈夫っすか?!」
「あっはい・・・。ありがとうございます」
「もしかして、弥生ちゃん?!」
「え・・・?」
「俺、聖だよ」
「あっ。お久しぶりです」
「さっきの連中何?」
「なんでもありません」
「ケガしてんじゃん。大丈夫?」
「あっはい・・・」
「とにかく弥生ちゃん1人じゃ立ち上がること出来ないと思うから、弥生ちゃんの家まで送るよ」
「ありがとうございます」

聖は弥生に肩をかしタクシーに乗り弥生の自宅へと向かった。
弥生の自宅についた聖はケガの手当てをした。

「弥生ちゃん、遥樹とはどうなってるん? 弥生ちゃんが福岡におること、遥樹は知ってるん?」
「遥には何も言ってません」
「福岡におることも遥樹は知らないんやね?」
「はい・・・」
「そっかー・・・。さっきの連中って煌也さんのファンでしょう?」
「なんで聖さんが知ってるんですか?」
「弥生ちゃん、何も知らない?」
「えっ・・・?」
「弥生ちゃんが煌也さんの自宅から出てきたところを写真週刊誌に撮られてて、各マスコミ各TV番組の芸能ニュースで今かなり取り上げられてる」
「えっ?!」
「遥も知ってるってことですか?!」
「すくなからずともね」
「そーだったんですか・・・。煌也さんは各マスコミ各TV番組にコメントしてるんですか?」
「煌也さん側の事務所は否定してた」
「そーですかー・・・」
「煌也さんは弥生ちゃんが福岡にいること知ってるん?」
「知らないです」
「そっかー・・・。きっと今、煌也さんも煌也さんの事務所もマスコミの対応に追われてる」
「ですよね・・・。聖さん」
「ん?」
「私が福岡にいること遥には言わないでください。
お願いします」
「わかった。でも、また今回みたいなことがあったら俺にちゃんと言ってよ。それが条件」
「わかりました」
「俺、帰るから」
「ありがとうございました」

聖は自宅へと帰った。

そんなことになってるなんて、気づきもしなかった。
だからみんな私のこと見てたんだ。
あの時に週刊誌に撮られてたなんて、思いもよらなかった。
煌也さんのファンからして見れば怒れること。
ファンからの中傷を受けてもしかたない。
私はそこまでのこと、したんだからー・・・。
中傷を受けても、当然かもしれない。

煌也と事務所側は各マスコミ各TV局の番組の対応におわれてた。
そんな中、煌也は遥樹に連絡をした。

「久しぶり。遥樹君」
「煌也さん?!」
「こんな時に連絡してごめんな」
「そんなことないですけど、大丈夫ですか?!」
「なんとかな。各マスコミの対応に追われてるけどな」
「ですよね・・・」
「せやけど、弥生のことは全否定してる」
「そーですか・・・」
「弥生って、遥樹君のところにいるんやろ?」
「えっ?! いませんよ?!」
「ホンマに?!」
「はい」
「ホンマにおらんの?!」
「いませんよ。煌也さんと一緒にいるんじゃないんですか?」
「それが、出ていった」
「えっ?!」
「てっきし、俺は遥樹君の元へ戻ったと思ってたんやけど」
「今、弥生、何処にいるんですか?!」
「何処にいるかは俺もわからないんや」
「弥生に電話しましたか?」
「してるんやけど、弥生本人が出ないんや」
「そーなんですか・・・」
「こんなこと遥樹君に頼むのもあれやけど、弥生の居場所がわかったら俺に連絡くれるかな?」
「わかりました・・・」

煌也さんの自宅から出ていったってどうゆうこと?
弥生は何考えてんだ?
何がなんだか俺にはわかんねえよ。
弥生のヤツ、今、何処で何してるんだ?
とにかく弥生の居場所、探して見つけなきゃ。

弥生はファンからの中傷を受けながら辛い日々を過ごしていた。
そのたびに聖は弥生を助けていた。
そんな弥生の姿を見るたびに聖は心を痛めてた。
聖はメンバーにバレないようにしてが、リーダーの哲也には勘ずかれてた。
そんな中、聖はポスター撮りの順番を待っていた。

「最近、元気ないけど、どうした?」
「哲やん・・・」
「なんか、あったか?」
「なんもねえーけど」
「そっか・・・」
「うん」
「言いたくないことなら、言わんでもいいけど。でも、助けが必要な時は俺たちに言えよ」
「うん」
「ポスター撮りも終わったから、俺、先、帰るわ」
「お疲れ」

やっぱ、弥生ちゃんのこと、哲やんだけには言ったほうがいいかな?
これ以上、隠し通すことは俺には無理。
でも、弥生ちゃんのこと、考えると、言わないほうがいいんやろうな。
きっと、遥樹が弥生ちゃんのことを知ったら、どうなるか目に見えてる。
でも、俺からは言えない。

そんな時、カメラマンのアシスタントに呼ばれポスター撮りのスタジオへと入り無事終えることが出来た聖はリーダーの哲也に電話をし近くのファミレスで待ち合わせをした。

「哲やん、わざわざ呼び出してわり」
「わかってたからいいよ」
「そっか・・・」
「何?」
「じつは今、弥生ちゃん、福岡にいるんだ」
「えっ?!」
「弥生ちゃんが福岡にいることは、遥樹も煌也さんも知らない」
「なんで言わないんだよ?」
「弥生ちゃんに『言わないで』って頼まれてる」
「なるほどねー・・・。他にも理由があんじゃねえの?」
「うんー・・・」
「何?」
「弥生ちゃんと久しぶりに会った時に煌也さんのファンから暴行うけてた」
「マジ?」
「今でも続いてるんやけどね」
「今、弥生ちゃんは?」
「レンタル屋でバイトしながら1人で生活してる」
「そっか・・・」
「うん」
「弥生ちゃんのバイト先と住んでるアパートの住所、わかる?」
「うん」

聖は弥生のバイト先とアパートの住所を哲也に教えた。

「あとは俺にまかしてくれる?」
「じゃなきゃー哲やんには話さなかった」
「だろうと思ったよ」
「なんか・・・めんどくせーこと、哲やんに頼んでわりな」
「そんなことねえーよ」
「ありがとうな」

哲也はさっそく教えられた住所のアパートに行ったが弥生はいなかった。
しかたなく弥生のバイト先へと行った。
弥生はバイトが終わりいつもと同じように駐輪所に行った。
そこには煌也ファンの数人の女が待ち伏せをしていた。
弥生は逃げることもせずファンからの暴行を受けていた。
そんな矢先、哲也が慌てるように駆けつけた。

「オイッ!! オマエら何やってんだ!!」

哲也の怒鳴り声に気づいたファンたちは暴行をやめその場から逃げた。
地面に横たわってる弥生を優しく抱き起こした。

「弥生ちゃん、大丈夫?!」
「哲也さんー・・・」
「何やってんの?! なんではむかわないの?!
こんなに暴行うけてるのに?!」
「だって・・・私は、煌也さんのファンを傷つけるよなこと、したからー・・・」
「だからって、自分を傷つけるようなこと、ここまでしなくていい」
「でもー・・・煌也さんのファンのことを思えばこれくらい受けても当然です・・・」
「弥生ちゃんー・・・」

弥生はそのまま静かに哲也の腕の中で目を閉じてしまった。
哲也は弥生を抱きかかえたまま病院へと運んだ。
弥生の診断結果は全治3週間の打撲と精神的病とストレスだった。
そのことを医師から言われた哲也は遥樹に連絡を入れた。

「はい。もしもし?」
「こんな夜中に電話してわりーな」
「別にいっすよ」
「今から病院にこれるか?」
「病院!?」
「うん」
「行けますけど、どこの病院っすか?」

哲也は遥樹に病院名を教えロビーで待っていた。
遥樹は少し慌てるように病院に向かいロビーに着いた。

「哲也さん。どーしたんですか?」
「遥樹に話さなきゃいけないことがあるんやけど、ちょっと俺に黙ってついてきてくれない?」
「はい・・・」

哲也は遥樹を弥生の病室へと連れて行った。
ベッドで静かに眠る弥生の姿を見た遥樹は何も言えず佇んでいた。

「遥樹。ごめん。言えなかった」
「どうゆうことなんですか?! なんで、弥生がここにいるんですか?! いったい、弥生に何があったんですか?!」

哲也は今までのことを遥樹に話した。

「話はわかりました。あとは俺にまかしてくれませんか?」
「遥樹ならそう言うと思った」
「すみません・・・」
「俺はこれで帰るから」
「はい。ありがとうございました」

哲也は自宅へと帰った。
翌日の朝、弥生は病院のベッドで目を覚ました。

ここ何処?
いつのまに寝てたんだろう?

弥生はふいにベッドの右側を見た。
そこには弥生の手を握って眠る遥樹の姿があった。

なんで遥がいるの?

弥生は握られてる手を静かに離そうとした時、遥樹が目を覚ました。

「大丈夫?」
「・・・うん」
「福岡に戻ってきたこと、なんで教えてくれなかったん?」
「遥ー・・・」
「話は全部、哲也さんから聞いた」
「そうー・・・」
「弥生が福岡に戻ってることは煌也さん知ってるん?」

弥生は何も言わずに視線を遥樹からそらした。

「煌也さんのファンに暴行を受けてたこを、なんで煌也さんに言わなかったん?」

弥生は視線をそらしたまま自分の気持ちを話し始めた。

「それはー・・・私が煌也さんのファンを傷つけてしまったから。それぐらいされても当然だって思ってた。だって、私はそれぐらいのことをした。だからあって当然なの」
「弥生ー・・・」
「こんな姿で遥と再会してごめん。遥も辛いよね・・・」

遥樹は何も言えず握ってる弥生の手を離し病室を出て屋上へと行った。

あんな弥生の姿を見るのは辛い。
それ以上に辛いのは弥生本人。
今の弥生に俺は何が出来るんだ?
ただこうやって弥生を見守ることしか出来ねえのかよ!!
こんな形で弥生と再会したくなかった。
でも、今は、弥生のことを考えてやることが1番。
そのためには俺が煌也さんに連絡をしなきゃいけない。

遥樹は煌也に連絡をした。

「はい」
「遥樹ですけど・・・」
「あっ、遥樹君」
「弥生のことなんですけど・・・」
「うん」
「今、福岡にいます」
「福岡?!」
「はい。仕事で福岡に来ることってありますか?」
「今のところはないんやけど、なんでなん?」
「弥生のことで煌也さんに会って話したいことがあるんです」
「弥生になんか、あったん?」
「はい・・・」
「ほな、明日の朝いちの飛行機で福岡に向かうわ」
「空港についたら電話ください。俺が迎えに行くんで」
「わかった」

弥生に何があったんやろう?
さっきの遥樹の電話の声、いつもと違ってた。
とにかく今は福岡に行くことを優先しなあかん。

煌也は一睡もせず仕事を終えその足で福岡へと向かった。
福岡についた煌也は遥樹に連絡をした。
連絡を受けた遥樹は迎えに行った。
煌也は遥樹の車へと乗った。

「今、弥生、何処におるん?」
「今から行くところにいます」
「そうーなんか・・・」

遥樹は車を走らせ弥生が入院してる病院の駐車場に車をとめた。
車から降りた煌也は何も言わずに遥樹のあとをついて行った。
病室の前についた煌也は何も言えなかった。
遥樹は病室の中に入った。

「弥生」
「ん?」
「弥生に会わせたい人がいる」
「誰・・・?」
「弥生も知ってる人だよ」
「えっ・・・」

病室の外で立っていた煌也は中へと入った。
弥生は遥樹から視線をそらした。

「こんな人知らない」
「弥生、辛いけど、ちゃんと向き合お。そのために煌也さんきてくれたんだよ」
「遥が勝ってに呼んだんでしょ?」
「俺が勝ってに呼んだけど、こうしなきゃ弥生はダメだろう?」
「遥ー・・・」
「俺は煌也さんに何も話してないままここに連れてきた。あとは弥生が煌也さんに今までのことを話さなきゃいけない。それが弥生自身のためだから」
「遥ー・・・」
「俺、病室から出てるから」
「うん」

遥樹は病室から出て行き屋上へと行った。

「なんで福岡に戻ったこと、連絡してくれんかったん?」
「連絡しなくて、ごめんなさい」
「いったい、福岡で何があったん?」

弥生はファンから暴行を受けていたことを話した。

「そんなことがあったんか」
「うん・・・。だから煌也さんに連絡しなかった」
「なんでなん?!」
「こんな私のことで煌也さんを巻き込みたくなかったから」
「せやからってなー、自分を犠牲にしたらあかん!!
俺はそんなこと弥生に望んでないんや!! 俺が弥生に望んでることは、遥樹との幸せなんよ!! なのに、なんでこんな俺のために弥生が傷つかなあかんの?! 俺やて1人の男なんよ!! こんな弥生の姿見たら俺やて傷つくわ!!」
「煌也さんー・・・」
「俺以上に傷ついてるんわ、遥樹なんよ。遥樹がどんな思いで俺に電話してきて、ここに連れてきたか、弥生やてわかるやろう? その遥樹の思いを大事にせなあかんちゃうの? 弥生は1人なんかじゃないんやで。ちゃんと弥生のことを大事に思ってくれる人がいるんやで。それが遥樹なんよ。遥樹は今でも弥生のことを大切に思ってるんよ。そんな遥樹の胸に飛び込まなあかんちゃうの? 遥樹はそれを待ってるんやで。
弥生やて、その遥樹の思いはわかるやろう? だから、俺に連絡してこなかったんやろう? それが弥生の正直な気持ちなんやろう?」
「うん」
「結局、俺も遥樹も弥生に守られてばかりやな。こんな辛い思いさせて、ごめん。でも、もうーそんな辛い思いは終わる」
「えっ・・・?」
「これで、俺もすっきりして東京に帰れるわ。弥生」
「ん?」
「こんな俺を守ってくれて、ホンマにありがとうな。
弥生には感謝しきれん」
「そんなことないよ。煌也さん。私は煌也さんと少ない時間を共に過ごせて幸せだった。こんな私のことを思っててくれたんだから。そんな幸せなことはない。
ありきたりな言葉かもしれないけど、煌也さんにはありがとうしか言えない」
「弥生ー・・・」
「こんな私に会いにきてくれて、ありがとう」
「俺やて、弥生にありがとうや」
「煌也さん・・・」
「ほな、俺、もうー行くわ」
「うん」
「遥樹に自分の気持ち、ちゃんと言わなあかんよ。
俺と違って、遥樹は鈍感やから」
「わかってる」
「ほなな」

煌也は弥生の病室をあとにし東京へと帰った。
屋上にいた遥樹は弥生の病室に戻ってきた。

「煌也さんは?」
「東京に帰ったよ」
「いつ?」
「遥が病室に戻ってくる10分前ぐらいに出て行ったよ」
「空港まで見送りに行ってくるわ」

そんな時、遥樹の携帯に煌也からの電話が入り、遥樹は慌てるように病院の外へと出た。

「はい。もしもし」
「空港まで見送りにこなくてもええからな」
「え・・・」
「遥樹は弥生のそばにいてやらなあかん」
「でも・・・」
「ええから、俺のゆうこと、きき」
「わかりました」
「ほな、電話切るな」

遥樹は煌也との電話を切り弥生の病室へと戻った。

「煌也さん見送りに行ったんじゃないの?」
「途中で煌也さんから連絡が入って『弥生のそばにいてやれ』って、言われて戻ってきた」
「そーだったんだ」
「うん」
「ねぇー遥」
「ん?」
「遥の気持ち、気づいてわかってた」
「弥生ー・・・」
「煌也さんにも見抜かれて言われた。私ね、ずーっと遥のこと思って信じてた。でも、信じるだけじゃダメだって思いしらされた。ちゃんと私の気持ち、言葉として遥に伝えなきゃいけないって思えた。こんな私の姿見てて、遥は辛かったよね。ごめん。でもね、私は煌也さんと遥を守りたかっただけ。身勝手に遥の側から離れて煌也さんの元に行き、こんな形でまた遥の元に戻ってきた私が言えることじゃないけど、でも、私は、遥に言いたい。私は、遥が側にいないと、夢も見れないし、人を思い愛することも出来ない。私が私らしくいられる場所は、遥の側。遥がいなきゃ、私は、輝くことも出来ない。遥が今、側にいてくれるから、私が私らしくいられる。こんな私だけど、また、遥の側にいていいかな?」
「俺も、そんな弥生の側にいたい。弥生のことを1人の男として、誰よりも精一杯、愛し貫きたい。弥生のことを、誰よりも何よりも、守り貫きたい。俺は弥生が側にいないと、夢を追うことも、人を思うことも、未来を描くことも出来ない」
「遥ー・・・」
「よやく俺の気持ち、ちゃんと弥生に自分の言葉として伝えることが出来た。こんな俺だけど、ずっと側にいて、俺のこと見守っててな。じゃなきゃ俺、いつまで経っても、ダメなままだから」
「遥ー・・・」
「俺、ずっと、弥生の思いを信じて待ってた」
「長い間、待たせて、ごめん」
「そんなこと・・・ない」

遥樹はそっと弥生の唇に自分の唇を重ねた。
弥生の退院当日になり、遥樹は病院へと出迎えた。

「今日が退院なんやろ?」
「うん」
「荷物、これだけか?」
「うん」
「下に行って精算して行くか?」
「行くって、何処に?」
「俺の家」
「また、遥の実家に行くってこと?」
「そーじゃなくって・・・」
「どうしたの? 雄」
「じつは・・・」
「うん」
「弥生が借りていたアパートを解約して、マンション購入しちゃった」
「えっ?! どうゆうこと?!」
「だから・・・俺と弥生が一緒に住むマンションを買った?!」
「遥が?!」
「そう」
「そんなお金、遥って、あったけ?!」
「詳しいことはマンションについてから話すから、とにかく、精算済ましてマンションに行こう」
「うっうん」

遥樹と弥生は入院費の精算を済ましマンションへと行った。
自宅マンションについた遥樹と弥生はリビングのソファーに座った。

「雄?」
「ん?」
「このマンションどうやって買ったの? それでもって、なんで、買ったの?」
「だからそれはー・・・」
「何?」
「俺が弥生と一緒にいたいから」
「だったら私のアパートでもよかったんじゃん」
「そうーなんやけどー・・・」
「何?!」
「俺の・・・」
「うん」
「親父とお袋が、どーしてもってことで買ったんだ」
「えっ!?」
「だから、あれだよ」
「何?!」
「あれって、言ったら・・・1つしかないやろ?!」
「ん・・・???」
「何処まで、弥生は鈍感なん?」
「遥が何を言いたいのか、真面目にわかんない」
「マジで?」
「うん」
「はぁー・・・」
「なんで、遥はため息ついてる?」
「つきたくもなる」
「なんで?」
「もうーいい」
「えっ・・・」
「シャワー浴びてくる」
「うっうん」

なんか・・・遥の様子おかしい。
なっなんでだろう?
何、ドキドキしてんの?!
遥のあんな男の目。
初めて見たからかな。
思い出したら余計にドキドキしてきた。
これって・・・もしかして・・・?!
遥からの・・・モーションってやつ?!

そんな矢先、遥樹がバスタオルを腰に巻いて出てきた。
弥生は意識してる気持ちを隠すためにうつむいていた。
遥樹は何も言わずに寝室へと行った。

遥、寝室にいっちゃったよ。
これって、遥が誘ってるってこと?
ここで断ったら、女が廃れるってもんだよね?
でも・・・怖い。
こうやってウジウジ悩んでる自分はもうーイヤッ!!
怖がってる自分もイヤッ!!

弥生は自分自身に逆ギレし遥樹がいる寝室へと行った。
遥樹はバスタオル姿のままベッドに仰向けに横になっていた。
そんな遥樹に弥生は自分から熱い吐息を重ねた。
遥樹は弥生のキャシャな体を抱き寄せ優しくベッドに沈ませた。
弥生は遥樹にその身をまかせた。
熱くとける2人を一夜の月の光が包んだ。
そのまま2人は朝を迎えた。
弥生はふと目覚め隣で寝てる遥樹を見つめた。

ようやく遥と肌を重ね合うことが出来た。
信じられないけど・・・やっと遥とそうなれた。
こんなに幸せを感じるものだとは思わなかった。
遥と1つになれた今、女になれた。
遥ー・・・ありがとう・・・。

弥生はそっと眠る遥樹の額にkissをした。
何げに遥樹は目を覚ました。

「おはよう」
「おはよ。今、何時?」
「たぶん・・・9時ぐらいじゃないかな・・・」
「そうー・・・」
「うん」
「弥生」
「ん?」
「昨日の夜、よかったよ」
「そっそうー・・・」
「そんなに、可愛く照れてると、また、求めたくなる」
「え・・・?」
「弥生は俺だけの女。俺だけが溺れていい女」
「遥ー・・・」
「弥生の女の顔は、俺だけが知っていたい。他の誰にも見せたくない。これって、俺の男としての独占欲。
それを満たすことが出来るのは、弥生以外いない」
「なんか遥ー・・・。今までと違う」
「俺は俺。ただ・・・」
「何?」
「今まで弥生に見せなかった」
「えっ・・・」
「俺は伝えることが不器用だから、弥生と早くこうなりたかった。弥生を丸ごと愛してるから。今、弥生の目の前にいる俺は、ボーカリストではなく1人の男として弥生を愛してる。いつでも弥生の愛を1人の男として求めている。こんな俺を愛せるのは弥生だけだ」
「そんなこと・・・言わないで・・・」
「なんで?」
「そんな遥を・・・」
「何?」
「求めたくなるから」

遥樹は弥生に熱く濃厚なkissをし互いに求め合う気持ちを重ねた。
重ね合う2人の気持ちは情熱のように熱くヘビのように激しく絡み甘い蜜のように互いを求め合い互いの気持ちを縛りつけ刻んだ。
遥樹は満足げに弥生を見ていた。
また弥生も熱い眼差しで雄祐を見つめてた。
そんな矢先、遥樹のスマホが鳴り響いた。
遥樹は普段どおりに電話に出た。

「はい。もしもし?」
「今からメンバー連れて遥樹が購入したマンションに遊びに行っていいか?」
「別にいっすけど・・・」
「何?」
「何時ぐらいにきます? 哲也さん」
「たぶん、あと30分ぐらいでつくんじゃねえか」
「マジっすか?!」
「まずかった?」
「そっそんなこと、ないっすよ?!」
「そうか?」
「待ってますわ」
「わかった」

電話を切った遥樹は焦っていた。

「遥、どうしたの・・・?」
「今、哲也さんたち、こっちに向かってるんやて」
「え?!」
「だから、弥生もそのー・・・」
「わかってる」
「ならいい」

遥樹と弥生は慌てるように服に着替え髪の毛を整え哲也たちが来るのを待っていた。
そんな矢先、遥樹は弥生に熱いkissを交わした。
その時、チャイムが鳴り弥生は遥樹の熱いと息から離れ顔を赤くしたまま玄関を開けた。

「弥生ちゃん・・・。顔、赤いけど、大丈夫やった?」
「あっ・・・はい・・・」
「お邪魔するわ」

哲也とメンバーたちは遥樹の自宅へと上がりリビングにあるソファーへと座った。

「遥樹」
「なんすか? あべっち」
「この家って、禁煙?」
「一服するなら、ベランダでお願いします」
「わかった」
「なー遥樹」
「なんすか? まー君」
「俺たちがくる前に、なんかしてた?」
「しっしてないっすよ?!」
「遥樹さん。何、動揺してるんすか?」
「何、言ってんだよ?! 慧」
「なんか、遥樹さん、おかしっすよね?」
「そっそんなこと・・・ねえーよ・・・」
「まさか・・・弥生ちゃんと?」
「なっなんだよ?」
「別にいっす」
「だったら、聞くなよ!! コノヤロウ」
「何、遥樹さん、怒ってんですか?」
「怒ってねえよ」
「そっすか?」
「テメーあとで覚えとけよ」
「何がですか?」
「オマエと話してると、ムカつくんだよ!!」
「ベランダで一服してきますわ」
「勝ってにいけや!!」

慧はベランダへと行った。

「遥樹、ちょっといいか?」
「なんすか? 哲也さん」

遥樹は哲也の側へと行った。

哲也は小声で言った。

「弥生ちゃんを、熱く激しく求めるなよ!」
「えっ?!」
「オマエ、わかりやすいんだよ」
「そうーなんすか?」
「オマエが熱く激しく弥生ちゃんを求める気持ちは、男の俺でもわかる。でもな・・・」
「はい」
「俺たちメンバーが今日、来ることは、知ってたよな?」
「あっ・・・。はい」
「だったらな」
「哲也さん」
「ん?」
「メンバーみんなが、俺たちのこと、見てますよ」
「んなこと、関係ねえよ!!」
「でっでもですねー・・・」
「なんだよ?!」
「このまま俺たちが話してると、余計にバレるんと思うんすけど・・・」
「俺は、バレてもかまわねえーけどな」
「哲也さん。それだけは、カンベンしてくださいっすよ」
「だったら、これからはきよつけろ!! わかったな?!」
「はい・・・」
「何、遥樹、哲やんにシメられてんだよ?」
「しっシメられて、なっないっすよ?! まー君」
「ふんー・・・。まぁー・・・弥生ちゃんとうまくやれやー」
「ありがとうございます」
「弥生ちゃんもあれやなー・・・」
「なんですか? 聖さん」
「遥樹みたいな男に好かれて、大変やなーと思って」
「たしかに・・・」
「遥樹がゆうこときかなくなったら、遠慮なく俺に言ってや」
「わかりました」
「遥樹のヤツ、調子に乗りやすいし、ヘンに暴走しやすいから」
「そうですね」
「遥樹の手綱をひっぱれるのは、弥生ちゃんだけやから」
「聖さんー・・・」
「じゃないと、このバカはあかんと思う」
「まー君。ちょっと言いすぎじゃないっすか?」
「オマエにはこれぐらいがちょうどいい。ヘンに甘えかすとあかん」
「まー君の言うとおりやな」
「あべっちまで同じことゆうかよ?!」
「ホント、遥樹さんはそっすよね」
「慧?! オマエだけは絶対に許さん!!」
「まーこれも弥生ちゃんのお陰なんやろうね」
「哲也さんー・・・」
「こんな俺たちだけど、これからもよろしくね」
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