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後日談
第6話
しおりを挟むまだ人だった頃から、アゴールは隊服を着用していた。隊を離れても、着慣れていたために違う服では動きに違和感を持ってしまうらしい。
それは管理部を引退した隊員に多く見られた。隊服はダンジョン内で魔物と戦うため、動きやすさと共に救助活動のための防御機能が強化されている。
隊服は一定の間隔でデザインや仕様が変更されるため、古いデザインの隊服を……何百年も前のだったとしても。好んで着ていても問題にはならない。ちなみにダイバはダンジョン管理部に配属直後に支給された隊服を、アゴールは配属8年後に変更された隊服を好んでいる。その隊服の仕様が変更になるキッカケを与えたのはアゴールとエミリアだった。
「ほら! エミリアさん、ここ見て!」
アゴールが配属直後に支給された女性用の隊服を着用して、くるりと背中を見せる。
「これは……布地自体が固すぎて、腕を動かすとあそびがないね」
「そうっ! そうなの!」
エミリアの指摘通り、後ろ身頃にノリで固められたようになっていて……。エミリアは指先で隊服の生地をの上を滑らせるものの、何かに気づいたようにダイバに顔を向ける。
「……? もしかして、これって受付嬢が着る服じゃない? もしくは儀式に着る礼服、じゃないの?」
エミリアは戦闘に向かない服だと指摘する。
「たとえば肩まわり。ここは目の前までなら物を上げ下げできると思うけど……。武器を上段で構えたら、肩や袖にゆとりがないから脇の下が持ち上がって……ほら」
アゴールに両腕を高く上げさせたエミリアの指摘どおり、裾が腹部を晒していた。身頃の丈が短い裾は、腕を肩で水平の高さまで上げても隠れるものの、攻撃で腕を上げることまで考慮されていなかった。エミリアの指摘どおり、庁舎内で働いている女性職員に支給される制服を隊服と同じ生地でつくられたものだった。
当初は伸縮性のあるシャツを下に着ていたものの、安全性は低くなる。そのため、アゴールは男性用の隊服を着用するようになった。
「男用なら、私にはサイズが大きいもん」
そのままでは大きいため、フーリたちに裾や袖まわりを詰めてもらったそうだ。それが男装の麗人の誕生となる。…………のちにひと騒動が起きるものの、動きやすさを追求したら女性用の隊服には戻れなくなった。
言い忘れていたが、もちろん女性の隊服もパンツスタイルである。
「お胸ぺったんこだから、男服でも違和感ないんだよね。胸部とか、胸まわりとか」
「エミリアさぁぁぁぁん‼︎」
エミリアの言葉に否定はできない。実際にダイバの隊服の替えを着用して以降、動きやすさから女性隊員の服に戻れなくなったのだから。
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