私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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最終章

第774話

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白虎とミリィ。彼女たちを石碑の後ろの地面に埋める。ここにはエミリアを大切に思う家族みんなが眠っている。

「私が死んだら、みんなと一緒にしてね」
「エリー……」

フィシスたちと違い、エリーは長寿とはいえ平均3,500歳(最長3,800歳以上)という限られた生命。残された寿命は平均寿命からみれば五百年を切っている。

アクアとマリンはフィシスたちと同じく永遠に続く生命。あの子たちはすでに一人前の大人として二人一緒に生きている。お互いの不足を補いチカラを合わせていることで、『人の世』に触れていられる。

水の聖霊と人とのハーフでありながら、神の末端に名を連ねている。それだけの能力を生まれながら持っていたのだ。

【 父である聖霊が持つ神の力を譲り受けたのだ 】

神の話では、水の聖霊は無意識に自らの内に秘めていた神としての能力を女性に委譲していた。それを女性は『自身の生命を守るため』に、無意識のまま神の能力チカラで双子をつくりだした。

【 神力でつくられた神の子 】

それがアクアとマリンの正体だった。しかし、人の身には強すぎる神力を抑えることが母親には出来なかった。

精霊たちの助けがあったとはいえ、双子の誕生と共に衰弱死した。それを悲しんだ聖霊は自暴自棄引きこもりになり、管理していた水の迷宮が汚染される結果になった。

神界に戻った聖霊は人間の時間で言えば数ヶ月で消滅した。記憶の管理者という責任を放棄したのだ。今は……どこかでひっそりと『世界にひとつだけ』という枕詞まくらことばがつく植物になっているだろう。ジャミーラから生まれ落ちたマーシェリのように。

そのマーシェリは数十年前に目覚めた。汚染されていた思考は浄化され、水の迷宮で起きたことを泣いて悔いた。精霊王による処断により、二度と精霊王が管理する森から出ることは叶わなくなった。二度と魅了や魅力に関する薬は出回らないだろう。

「お姉ちゃんが遺したこの世界。私たちが守っていくの」

そう言って笑ったアクアとマリンは、あちこちの大陸を冒険者として渡り歩いている。長寿種族と勘違いされているようで、誰にも気にされたことはないようだ。

「私たち、駄天使じゃなくて『堕天神だてんしん』だもんね」
「神なんかくそくらえだ! 僕たちは最後の聖女様お姉ちゃんがこの世に遺した『最後の反抗』だぁぁぁ!」

二人は天上神ではなく『人の世を生きる神』の道を選んだ。

マリンはマーレンと結婚した。残念ながらマーレンとの間に子は出来なかったが、アクアと三人でパーティを組んで冒険者として世界を旅して回った。
マーレンは両親や兄一家と同じ場所で眠っている。彼は『世界を救った冒険者の一人』として、世界の人々から今でもたたえられている。

ほかの関係者はこの特別な空間で静かに眠っている。その眠りを邪魔しないために、自分だけ両親と同じ場所に埋葬を願った。彼の思惑どおり、それまでエミリアたちの眠る場所を探し求めていた人々は彼という偶像に殺到するという形で収束を迎えた。

今でも二人は悪事を働く相手に【神の罰】と言う名の制裁を繰り返し、を続けている。そのおかげと言えるのか、エミリアたちが生きていた頃とは大きく変わり、正しい常識が身についてきたようだ。
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