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最終章
第773話
しおりを挟む《 エミリアの名前も、中にミリィが入ってる。エミリアは偶然って言ってたけど、記憶をなくしたエミリアの心の中にはミリィの存在が大きく残ってたんだと思う 》
「そうね。あのとき、ミリィったらエアちゃんにたどり着いたけど、私たちに教えなかったんだから」
《 黙って見守っていた。心配になって見に行ったら「私は連れて行かない。ただ私がエアちゃんと一緒にいたいだけ」。そう言ってた 》
「ミリィに会いに行ったキッカたちがエアちゃんを見つけたのは偶然だったのよ。……それでエアちゃんが記憶をなくしているのも知ったし。ミリィが言ったのよ『今のエアちゃんは聖女様じゃないんだから』って。『エミリアちゃんとして此処で生きてるんだから』って」
「私やエリーが会ったときも分からなかったみたい。それどころか『思い出す気はない』って。エリーはショックを受けていたわね」
《 エミリアは夢で『記憶のカケラ』を見せられていたから知っている。でも、それを『自分の経験した記憶』として思い出した訳じゃないから覚えていない。そこに感情がないから……。嬉しかったとか、エミリアは覚えてなかったから苦しかった 》
「……そうだったのね。でも私たちが再会してからの日々は間違いなく思い出になったわ」
そう。ドタバタで破茶滅茶で、色々と振り回されたこともあったけど……
「全部、楽しい思い出だわ」
アンジーが何かを思い出したのか、クスッと笑う。
泣いたり笑ったり。
全部がエミリアとつくってきた思い出。それは残される無限寿命のアンジーたちが思い出せば笑顔になれる、そんな楽しい思い出ばかりだ。
「みんなが同じ場所に生まれたらいいのに。そうしたら……」
「そうしたら、今度はミリィもエミリアちゃんも、最初からシアワセになれるようにするわ」
《 白虎もピピンもリリンもみんな一緒。誰も欠けたりしない 》
妖精の言葉に全員が頷く。フッとアンジーが思い出したように口にした。
「そうね。この世界の何処かにあるという『夢の郷』。そこにみんなが生まれてきたら……」
「……きっと、毎日が賑やかよ」
「うるさいくらいにね」
古くから言い伝えられている『夢の郷』は、きっと騰蛇が守るダンジョン都市だ。種族を越えて互いに笑い合える、夢のような世界。
前世の記憶を持ったまま生まれかわるというその地が本当にダンジョン都市だとしたら、きっと……
「みんなが生きていた以上に住みやすい環境を整えておくわ」
妖精たちの協力で緑が多く、どこよりも発展した都市になっている。エミリアたちが生きていた頃から魔導具の発展が著しかったダンジョン都市。その原因が、エミリアが所有する宝箱。エミリアが願えば、どんなものでも元の世界から取り寄せられた。
それは神のお詫びのつもりだったらしい。
エミリアは日本語を覚えた妖精たちを介して、ドワーフ族の職人たちと魔導具で作れないか模索していた。
「最新のものは無理でも、旧式タイプなら情報が開示されてるんだよ」
今では、昼間に太陽光を蓄電して夜でも明るい。風でも水でも発電しているため、開拓された南部の農村地帯を豊かにしている。
《 田畑の水調整は任せて! 》
《 私たちが微調整するから心配しないで 》
妖精たちは任された仕事に責任を持つ。イタズラもするけど、それも大した被害は出ないもの。
悪意をもつ者、悪事を働く者。
被害者が限定されているため、妖精たちのイタズラを推奨している人すらいる。
それもこれも、《 エミリアが遺したここを壊そうというものは許しません! 》が合言葉だからだった。
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