私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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最終章

第762話

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ムルコルスタ大陸の修復は神々によって行われる。

神は一部以外は干渉しない旨も決定した。表に出るのは、権利の神など生活に関わる神や各職種に属する神。そして自然に関係する神と、火の神など魔法の属性の神のみ。
…………それでも十分に多い。
残りの神は神界でねむりにつくらしい。

【 睡りによって世界を修復させる 】

海の底に沈んだタムスロン大陸も元に戻るらしい。
それらは神から発表された。

すぐに大陸を持ち上げるには海流などの流れが、ほかの大陸や島にまで影響を起こすため出来ないそうだ。

「大陸の塩害も何とかしろよ」
【 塩害? 何のことだ? 】
「海の底にいたんだ。大地も山も木々も。海水を吸っちまってるだろうが。そんなところで農作物が育つと思ってんの?」
【 思って 】
《 『る』と続けるようなら、その大陸に埋めて栄養にしてやろうかー? 》

シャキーン
シャキーン

暗の妖精クラちゃんが悪~い笑顔を浮かべている。その横では浮かべたナイフを2本交差させて動かしている。ハサミのように見えるけど……

《 返事がないなぁぁぁ? 》
【 思っていません‼︎‼︎ 思っていません‼︎‼︎ 全力で大陸に染み込んだ海水を取り除かせていただきます‼︎‼︎‼︎ 】

一瞬で増えたナイフ。そのナイフに見覚えがある。

「ダイバ……あのナイフって」
「ああ、ユーグリアで妖精たちが巻き上げたヤツだな」

そういえば、遊びに使った未使用のナイフも含めて52本。集められたナイフは暗の妖精クラちゃんが使ってたっけ。でも、アラクネが遊ばれた男と一緒に回収したはず。

「騰蛇かアラクネから、証拠ナイフ受け取った?」
「あのあと問題が起きたからな。そういえば忘れていたな」

つまり、ダイバやシーズルに回収されなかったから騰蛇から貰ったのだろう。
普通のナイフのため、神に使っても痛いだけで大したことにはならないハズ……

「エミリアちゃん。あれ『毒牙のナイフ』ってあるけど聞いたことないわ。エミリアちゃんが作ったの⁉︎」
「いやいや。あれは普通に支給されるナイフだ」

ダイバが自分の持っているナイフを取り出す。使い込まれているけど、柄などは全く同じもの。
森のダンジョンやフィールドで枝葉を打ち払うときに使うものとして支給されるものだ。

「同じものね。……なのに、何であんなに毒々しいの」
《 だって、これって騰蛇が作ってくれたのよ 》
《 そうそう。コカトリスをうむ毒を使ってね 》

ほかの妖精たちも、自分たちに合わせた小さなナイフをスチャッと手にする。

「どこからきた、そのコカトリスをうみだす毒とやらは」
《 廃国の地下深くにあるよ 》
《 ウンウン。廃国のお城の地下に湧き出てる水がまぁっくろ 》
「それはジャミーラのせい?」
《 じゃなくてね。水路に棲みついた魔物が毒を吐いてて、迷い込んだコッコのたまごがそこで孵ったんだって 》

コカトリスはコッコのたまごが毒に汚染され続けることで誕生する。ちなみにコカトリスがうんだたまごからは、毒がなくてもコカトリスが誕生する。そのコカトリスを生み出した毒を使ったらしい。

「毒を吐き出した大本の魔物って?」
《 バジリスクだって 》
「…………毒が毒をうんだ」

妖精たちの話では、地下の棲息地争いからバジリスク軍団対コカトリス軍隊戦が起きたそうだ。

「で? どっちの勝利?」
《 いつも引き分け 》
《 ストレス発散みたいなものだから 》
「……子どものチャンバラか」

もしくはスポーツかもしれない。

「面白いかもね、魔物たちのスポーツ大会って」
「前提は共存か?」
《 それって面白いね! 》

もちろんオークやゴブリンなど本能のまま生きる魔物とは共存できないだろう。しかし……

「ピピンたちや白虎みたいに、心を通わせることの出来る魔物だっているんだから。だったら知能が発達した魔物なら、魔人や獣人に進化してもしなくても共存できると思うんだ」
「エミリアらしいな」
「そうね。私たちは種族の壁を乗り越えて世界の危機に立ち向かった。今度は魔物との共存も可能かもしれないわね」

あれ? なんか忘れてない?

「フィシスさん」
「なあに?」
「ミリィさんたち巨人族も、魔物の巨人族ギガンテスの魔人化だよ」

それからさらに進化したのがミリィさんたち。ミリィさん自身は魔物の巨人ギガースと人間のハーフと言われているけど。

「たぶん、父親は魔人の巨人族ギガンテスだよ。だって純血種の巨人族ギガンテスと大きさがちがうもん」
「そうだな。ピュリアス島の巨人族はミリィやルーバーとは大きさが違った。もし本当に魔物が父親だったなら……純血種と同じ大きさだったはずだ」

はじめて聞いたフィシスさんたちムルコルスタ大陸組の人たちの驚きはすごかった。

「結局、みんなどこかでをしてたんだよ」

まずは、そんな思い違いの鎧を一枚ずつ脱ぎ捨てていかなくては。

「新世界第一回目の世界会議のテーマは決まったね」

そう言って振り向いた私の視線の先には…………風の妖精たちに運ばれてきたエイドニア王国の国王ルナンバルトと賢妃フランシアが立っていた。
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