私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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最終章

第761話

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妖精たちと一緒に、戦いで荒れたグモール国内の回復を……

「自分たちの後始末ぐらい自分たちでしなさい」
【 はいっ! 喜んで! 】

いらないと言われた神たちが率先しておこなった。
本来なら、鉱山も崩れたりして大惨事を起こしていただろう。しかし、そこは結集した地の妖精たちが鉱山を守り抜いた。大地を守護する神や自然を司る聖霊や精霊一族も加わって守り抜いた。

「大地の修復は戦いが終わってからでいい。……勝たなくては意味がないし。もしかして、魔力を補給できるようにするつもりなら…………敵に回ったとの理由で戦闘しましょうか?」

ジャミーラたちの存在を知っていて、その悲劇に涙する神や聖霊、精霊王たちは多い。彼らがジャミーラを敵に戦うなどできるはずがないのも知っている。

「だから、『逃げることのできない者たちを守れ』と言ってるの。……これ以上、ジャミーラに罪を犯させないで」

戦場にでて戦え、とは言わない。その代わりに、これ以上の被害者を出すな、とは言う。

「エ、ミリア、ちゃん……だったね」

一歩前に出たのは精霊王のひとり、シェリアさんとフィシスさんの父親のオーラムさんだ。その後ろにいるのはシェリアさんたちの姉妹。ほかにも同じように大地や森などの精霊王とその娘や息子たちの同族から水などに属する一族も揃っていて圧巻である。

「はい。精霊王さま」

こんな多数の面前で名前を口にすることは、私を信じて教えてくれたオーラムさんを裏切る行為になる。その意味合いを込めて無言で頷いた私にフッと優しい表情になる。

「私たちは何をすればいいかな?」
「ここで働く彼らを守るために鉱山の維持を。妖精たちだけでは……神たちの攻撃魔法の余波から守るには負担が大きすぎます」
「分かった。ここで働く者たちも妖精たちも、どちらも守ろう」

「お願いします」と頭を下げた私に、オーラムさんや後ろの人(?)たちが頷く。

「どうして……ここまでする」

紺色の古代ギリシャ風のピラピラした服を着ている(たぶん)精霊が表情をゆがませた。

「じゃあ、私を元の世界に戻してくれますか?」

そう聞いたら「いや、それは私ではできない」と断った。

「じゃあ、私の代わりにジャミーラと戦ってくれますか?」
「…………」

今度は返事をしない。

「返事をしないと言うことは、相手をバカにして『答えてやる必要がない』と見下しているのと一緒だ」
「……そんなことは」
「(すうう、と大きく息を吸い込んで)グダグダ言って何も考えを持たねえ役立たずのクズは口閉じて黙って従っていやがれ‼︎‼︎」

息と共にいかりも一気に吐き出すと、(きっと)精霊王は驚きの表情で口をパクパクと動かすだけだった。

「偉そうなこと言う前に……私に詫び入れろや」
「召喚は私には関係ない」

「『関係ない』と言えるのは……召喚された私の方だ‼︎‼︎‼︎‼︎ この世界で! この大陸で生きてきて! いままで召喚を止めたことがあるのか‼︎ 止めていないと言うことは貴様らも全員同罪だ‼︎‼︎‼︎ 巻き込まれた私だけじゃない! ……これまで召喚された聖女たちのために責任とれや‼︎ ジャミーラを放っておいてここまでこじらせた原因は貴様らにもあるんだ! なんで旧シメオン国の人たちが寄り添えて、アンタらは寄り添わなかったんだ‼︎‼︎」
「エミリア、そこまでだ」

後ろからダイバに止められて、我に返る。目の前の男の胸ぐらを両手で掴んで涙を流していた。
ダイバはそんな私の手を外すとギュッと抱きしめてくれる。背中を軽く叩いて落ち着かせてくれる。

「ダイバぁ……」
「分かってる」

まだ同調術を使っていないのに、ダイバは私の気持ちをわかってくれる。それに安心した私はダイバにしがみついて感情のまま泣き喚いた。

「分かるか? 本当ならエミリアちゃんはんだ。しかし、大切な人たちを守るため。大切な人たちとこれからも生きていくために戦おうとしている」

オーラムさんの声が、私の泣き声が轟く鉱山に静かに響く。私を慰めるように頭を撫でてくれるミリィさん。背中を撫でてくれるシシィさん。
……私の感情に引き摺られて大泣きしている妖精や聖魔たち。彼らを慰めるアンジーさんやフィシスさんたち。コルデさんは、自分に懐いてくっついている妖精たちの頭を撫でている。

「私たちは戦闘に向いていない。だったら、彼女のために出来ることをするべきだ」
「文句があるなら引っ込め。ただし、二度と表に出てくるな」

オーラムさんに続いて、エリーさんが精霊たちの前に立っていた。

「これからの世界はエミリアちゃんが生命をかけて挑んだ先に広がる未来だ。そこに、協力を拒否した貴様たちは相応ふさわしくない」

そのセリフの後は聞こえなかった。ただ、オーラムさんの「協力するかしないか。好きに選ぶがいい」と言う声だけは聞こえた。
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