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最終章
第760話
しおりを挟む神の総数は二十数人にまで減っていた。
「もうさ、『神に支配される世界』は止めようぜい」
そう言った私に返ってくる言葉はない。
仕方がないだろう。ある日突然「今日でクビな」と肩を叩かれたのだから。「明日から来なくていいよ」かもしれない。
「神は本来、人々の生活に寄り添った存在なんだよ。それを、これで二度目でしょ? 世界を崩壊に導くような混乱を起こしたのは」
そんな神なんていらないよね?
確認するように周囲を見回すと、聖霊(のハーフ)、精霊、妖精、竜人、翼人族などの種族の壁など関係なく全員が首肯する。
「この世界が崩壊したら、どうする気だったの?」
【 どう、とは…… 】
「私がいた世界にこの世界の人たちを送るの? それとも、この世界が崩壊するときに運命を共にする? 新しい世界を作りなおす?」
【 そのようなことには 】
「ならないと言える? 言い切れる? ここで誓える? ついさっきまでの死闘で死んだたくさんの神々に対して『別に死ななくてもよかったのに。そう簡単に世界は滅ばないさ』と笑いますか? 『こんな世界、滅びたところで新しく作りなおせばいいじゃん』って嘲笑いますか? 『こんな奴ら見捨てて、新しい世界をつくってそっちに引っ越そうぜ』とでも言いますか?」
驚きの表情の後、神々は俯き唇を噛み締める。
「そんなこと考えたことありませんか? そこまで考える能力も落ちましたか?」
【 無礼だぞ! 】
「それはこっちのセリフだ! こんちくしょうが‼︎」
【 なんだと…… 】
「貴様らは過去に何をした! ジャミーラを追い詰めて、ガミールやガミーラをこの世界から追い出して‼︎ その結果、どれだけの女性が聖女としてこの世界に引きずられたと思っていやがるんだ‼︎‼︎ 無礼だぁ? 人の生命を散々弄んできた貴様らが被害者の私に偉そうなこと言ってるいまこの状態が無礼だ‼︎‼︎‼︎」
私が聖女召喚で連れてこられた被害者であり、神に対して文句を言える唯一の存在だと思い出したのだろう。さっきまでの勢いが失われるとともに、その両目には詫びるような申し訳なさを浮かべる。
【 す、すまない。悪かった 】
「謝って済むんなら神なんか必要ない」
【 どうしたら…… 】
「この世界に神などいらない」
【 …………‼︎‼︎ 】
「ああ。世界を滅ぼす神などいらん」
「一部は……権利の神などはいてもいい。でも多くはいらない」
ダイバが私に同意するとマーレンくんが具体的に神の存在を否定する。
《 いらないよ! ボクたちがいるもん! 》
《 何にもしてくれない神なんかいらない! 》
「ああ、そうだ。女神のケツを追って、世界を二度にわたって滅ぼしかけた神なんかいらん」
次々に存在を拒否される神々。「必要」と認められた神と「いらない」と言われた神だけど……
「くすんでる?」
「神々しさが失われているな」
「信仰が失われていった結果です」
ピピンがいうには、このまま消えたり死んだりはしないけど、威厳がない状態らしい。
《 エミリア教があるから困らないモン! 》
「「んんん?」」
突然、妖精たちの声が大きくなった。どうしたのかと思ったら、暗の妖精が寄ってきた。
どうやら神のひとりが【 我ら神がいないと困るだろう? 】と言ったらしい。
《 それに対して、『エミリア教があるからいい』って突っぱねたんだ 》
さらに揉める可能性があるため、教祖であるピピンに妖精たちを止めてほしいと来たらしい。
「いい加減にしなさいよね!」
「あ、リリン参戦」
私の声にピピンが一瞬でリリンの隣に移動した……
「ピピン、聞いて! この神ったら、こんなこと仕出かしたくせにまだ『神の方が偉い』って‼︎ エミリア教なぞ潰してやるって‼︎」
えーん、とピピンの胸に抱きついて泣き出すリリン。
「あ、地雷踏んだ」
「エミリア。結界のアイテム1個貸してくれ」
「はい、指輪」
ダイバに結界の指輪を渡すと「ダダダダダダダダダダッ」というミサイル総攻撃並みの音が響く。結界シリーズに神の攻撃は防げない。…………効けば、ジャミーラの攻撃のうち威力の弱いケガは防げたはずだ。
「私がエミリア教の教祖です。さあ、この私を敵に回すと仰るバカはどなたです? 前へ出なさい。リリンを泣かせた罪は海より深いですよ」
さっき、触手で神々を串刺しにしまくったときに操り水を注入したようだ。
「完全に操られたな」
「前のときは期間限定で薄めてたのに」
《 前の100倍は濃いよ 》
神生…………詰んだな。
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