私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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最終章

第752話

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❀  ❀  ❀

こちらの世界に来てから本で覚えた光魔法は使えるようにはなったけど、私には聖女としての能力は元々ない。それでも私が聖女としての能力が使えるのは、あの子をはじめとした聖女たちのおかげか。

あの子と再会した【大地の迷宮】で、譲られるかたちで聖女の能力を得たのだ。それのほとんどはマリー夫妻の昇天に使われた。

「あれ? いまの私って、出涸らし?」
「枯れてはないな」
「出き切ってもいないな」
「じゃあ、搾りかす?」
「…………そんなに良いモンか?」
「……シーズル。アゴールへの供物イケニエ、決定」

聖女という存在を検討したときにそんな話をしたものの、私が異世界を渡ったことは事実。それによっては十分にあった。

「ただし、弱いけどね」

その能力を補助していたのがチャミだった。聖女として選ばれたあの子たちには、そのチカラを与えられたと同時に使い方も無意識に手に入っていた。

「だから、『聖女として神との契約』などという願いごとが叶えられたんだよ」

その契約は聖女としてこの世界に連れて来られた代償であり、どんな内容であっても神は叶えるしかないもの。唯一効かないのが「元の世界に帰して!」である。

「でもね。イレギュラーな私には、そんな能力チカラの使い方は教えてもらえなかったの」

それは危険なこと。だって、「聖女より弱いとはいえ、世界を浄化できる能力チカラを持っているということは…………。こんな世界にした原因、神でさえ私は消滅させることができる」ということ。

それを妨害するという形でピピンが考え出したのが「それでは彼らを私の支配下に置きましょう」というもの。それにリリンは協力した。廃国の植物に操り水を吸わせて香りに操り水をのせてばら撒いた。もちろん、騰蛇や火龍、空魚ルティーヤの協力もあった。ジズたち神獣も自分たちを救わなかった神など見限って造反して袂を分かち、彼らと共に行動しているキマイラもまた神獣たちと道をおなじゅうにした。

いわゆる下剋上である。

妖精たちはすでに神に絶縁状を叩きつけ、いまではエミリア教のみを信心している。

《 ちゃんと顔に叩きつけてきた! 》

小さな胸を大きく張って報告する妖精たち。謝罪のため廃国に集められた神々をピピンが操った状態で絶縁状を叩きつけたのだ。その反応によって、水の効果を確認したらしい。

「それは中世ヨーロッパの果たし状じゃない」
《 私たちには果たし状と同じよ。アンタらのことを二度と敬わないって意思表示なんだから! 》

ピピンの話では、効きが弱かった神でも、妖精たちに絶縁状を叩きつけられたショックで心にポッカリと穴が開いたらしい。神にとって妖精たちは自分たちの仲間でありながらも「無知で幼く、可愛い愛玩生物ペット」だったのだ。

「だから、妖精たちに何も教えなかったのね」

それを人は『やさしい虐待』という。ただ可愛がるだけで最低限の知識を与えない……

「ねえ。もしも知識を与えたら、元は神だった以上、自分たちを上回るなんて思ったんじゃない?」
《 私たちの『神としての知識』は、記憶と共に聖霊が受け継いでいる 》
《 私たちの知識はエミリアから与えられた『異世界の知識』だ 》

正しく差別なく知識を与えていたら、こんなことにはならなかっただろう。
私たちは、二度と悲しみを繰り返さないため。そのために、私たちがいままで隠してきた情報を公開することにした。あとは事実を知った人たちが決めればいい。

国を代表する人たちが話し合い、大陸で話し合い、世界で話し合えばいい。

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