私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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最終章

第726話

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「レイモンドが聞いた声はナナシで間違いないでしょう」

ピピンがそう断言する。

ここはいつもの報告会を開く会議室ではなく、バラクルに用意された私の部屋兼作戦会議室。参加者は私とダイバ、コルデさんとアルマンさん。そしてミリィさん。私の聖魔たちも一緒だ。シーズルは『妖精たちのしごき』という名の監視下に置かれている。代わりにシーズルの補佐、翼人族テンシのミュレイが同席している。

「そこで断言できるのは何故ですか?」

代理で参加しているため、少しでも情報を持って帰ろうとしているミュレイがピピンに質問をする。興味のない話は耳の前で方向転換すどおりするため、脳の扉を叩かないシーズルと、足して5で割ると丁度いいらしい。

「元々の原液が濃縮すぎるのです。2人を足して出来た原液は混ざりあって、さらに濃厚になります。料理に使うなら5倍は薄めないと使えないでしょう」

2人の隊に所属する隊員たちはそう口を揃える。ちなみに濃度はシーズルが3でミュレイは2、らしい。ミュレイは知能や分析の高さが評価されているため、濃度がシーズルより薄い。

そのミュレイの能力が、ここでも遺憾無く発揮されている。

「彼に届いた声は不死人しなずびとにとって甘美の誘いでした。その声が止んだのは、彼の父がナナシの声に応えたからです」
「彼の方がナナシの声に応えたということはありませんか?」
「ありえませんね」
「何故です? 不死人しなずびとの焼きいんが消えているのでしょう?」
「焼き印は薄くなっただけで、完全に消えた訳ではありません。その証拠に、レイモンドは今も不死人しなずびとのままです」

ピピンの言葉にダイバが呆れたような声をあげる。

「ミュレイ。エミリア至上主義のピピンが、レイモンドを前にしてと思うか?」

その言葉にミュレイはすんなりと納得する。

情報部から接触したメッシュから報告は上がっている。それはニュースとなり、ここダンジョン都市シティでは「「「よくぞやってくれた‼︎‼︎」」」と歓声があがったくらいだ。

何をしたか? 水を操り、氷もつくりだせる。そんなピピンが、ありとあらゆる手段をつかってレイモンドに死と再生を味わわせた。

不死人しなずびとは苦痛を味わう。切り落とされた肉体は再生しない。ただ死なないだけだということを、ピピンは証明してくれた」

ピピンは最初、凍傷による壊死などでダメージを与えていたものの、再生するその様子をみて方向転換をしたらしい。

「今後の知識のため、ご協力ください。出来ますよね? 異世界から私の主人を誘拐してさらってきただけでなく、らぬと言ってゴミ同然に捨てた。その罪を償うために現れたのでしょう?」

ピピンの言葉おどしに従うしかなかったようだ。
そう証言したのはダイバたち。ダイバたちが手を出すことはできなかったらしい。

「仕方がありません。元魔物の魔人や獣人と違い、彼らは手を出せば罪に問われます」

その言葉からも分かるとおり、ピピンはダイバたちの分も手をくだしたようだ。

「そのときの記録データから、ナナシの器になったとおぼしき不死人しなずびとの対処法は出来上がっています。また、彼の父が起こした此度ナナシの騒動に対して、その身を差し出して止めることを約束させました。死なないのですし、父親の尻拭いくらいするでしょう」

自分の尻拭いおこないで父親を不死人しなずびとにしたのですから、当然ですよね?
その言葉が、レイモンドを見えない鎖で縛りつけて、操り水を使わずとも従わせることが出来たそうだ。

……あとはナナシ自身を倒す方法を見つけるだけだ。
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