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最終章
第717話
しおりを挟むダンジョン都市の住民は私たちだけでなく、妖精やキマイラ、そして神獣たちも含まれている。神獣たちも自分の棲み家を守るために追い払っているだけだ。
「神獣たちにとって、聖女でありエミリア教の御神体であるエミリアと我々聖魔たち。竜人のダイバたちをはじめとした住人たち。妖精たちと機織り女、神の眷属である騰蛇と元・魅了の女神だったチャミ。廃国に住まいを移した火龍。そして、存在を受け入れてくれたタグリシア国の国王たち。共存相手は以上です」
「ピピン……そこにエリーさんたちは入ってないの?」
「ないですね」
サクッと切り捨てるピピン。よく考えてみれば、神獣たちはエリーさんたちと関わってないね。
そして、このことはダイバたちに知らされていない。「二度と会えなくても、どこかで生きている」と信じ、自分が抱えられるだけの幸せを大切に生きてほしいと願っているからだ。
三度の襲撃後、ピタリと襲撃は止んだ。空魚を隊長とした『ナナシ捜索隊』からの報告では、プリクエン大陸と隣のミドグリームス大陸の間に神獣の縄張りがあり、領域侵犯で消されたのだろうと思われているらしい。
「どこ情報よ。つーか、誰からの調査情報?」
《 ペリジアーノ大陸でナナシの捜索をしている妖精たちが、竜人たちを見つけて潜入調査中 》
《 大丈夫だよ。プリクエン大陸に向かう連中にはついて行っていないから 》
竜人には妖精たちが見えないことはダイバたちで判明しているため、潜入調査といいつつ普段どおりに入り込んで小さなイタズラをしているらしい。風が吹いて物が倒れた、軽いものが飛んだ、地面の上に置いていた物が消えた(砂に飲み込まれた)など……
《 妖精たちが手を出していると思っていないし、気付かれてもいないよ 》
その言葉を裏付けるように、ナナシ捜索隊がいくつかの情報を持ち帰ってきていた。妖精たちは世界一周飛行で交代しているらしい。その情報を管理しているのはピピンで、共有しているのはダイバやシーズルたちダンジョン管理部の隊長職。
ただピピンが情報を統制しているため、わるい子たちの情報は妖精たちでさえ口を噤んでいる。
「知らなくていいことは今は知らなくていいです。いずれ、そのときは来ますから」
ピピンの言葉から、私にも情報を規制しているようだ。
……いずれ教えてくれるだろう。そう信じている私と同じく、ダイバたちもピピンを信じて黙って待っているのだと思う。
《 あの連中、ムルコルスタ大陸の近くにある無人島に隠れ住んでる 》
無人島に移動したところで『竜人調査隊』はナナシ捜索隊に戻ったらしい。
《 両方の大陸にいる妖精たちに竜人たちの動きを監視してもらってる 》
「…………その中に、さ」
《 セウルたちの兄ちゃんのことでしょ? うーん、詳しく調査していないみたい 》
仕方がない、と言えるかも。ナナシ捜索隊の妖精たちは、セウルたち兄妹とは直接の接触をしていない。そのため、気配が分からないだろう。たとえ知っていたとしても、見つけ出すのは難しい。私たちが初対面の子どもと会って「この中にいると思われる、この子の兄と大叔父を探せ」と言われても探せないように。
「生きてほしい」という願望はあるけど「絶対、生きている」という保証はない。
ピピンや妖精たちは、確証のない希望を持たせることはしない。……生きていなかったときに訪れるであろう絶望ほど……惨いことはないのだから。
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