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最終章
第716話
しおりを挟むジズを襲ったバカモノたちは、ただの好奇心からジズに挑戦したらしい。ジズたちにしてみたらただのおあそび感覚で、本気になって相手をする気はないようだ。
「本気にされたらどうする気だったんだ‼︎」
そんなことにはならない。だって『わるい子の竜人たち』が大陸を渡って襲撃していたから。それが知られていないのは、神獣たちが相手をしているから。竜の姿で襲来してくる竜人たちは、大陸を前にして消滅している。彼らの背にのっていた竜人たちも同じ末路を辿っている事実は言わずもがな。
その中に、セウルたちの兄ボタジェシカや大叔父フレイズがいたかは判明していない。
たとえ分かったとしても、これはダンジョン都市の占拠を目的とした侵略……戦争だ。ダンジョン都市のあるタグリシア国と、竜人たちが支配していた旧ウランベシカ大国との。旧ウランベシカ大国のあるペリジアーノ大陸と、タグリシア国のあるプリクエン大陸との。
ウランベシカ大国の混乱は詳しくはわからない。一夜にしてエルスカントの尾根が消えたという前代未聞の事件に対して対処が遅れたこと。その不平不満は竜人たちの支配を受けて脅威の陰に隠れ、与えられる成果を甘受していた国王たちに向けられた。
竜人の存在は公表されていない。
特殊能力をもつ者たちを保護した国王が、その能力を活かした特殊任務を担う一隊のひとつとして召し抱えた、となっている。そう、竜人たちの戦果はすべて国王の指揮のもとで行われた作戦とされているため、竜人の存在が表に出ていないのだ。……ただ、竜を従えた一族というウワサは流れていた。
ダイバたちが住んでいたバラクビル国は、以前からウランベシカ大国に竜がいることを指摘していた。それはバラクビル国内に住んでいた竜人という、確かな存在からもたらされた情報。ただ、竜と竜人を同族と見做す国家はない、らしい。
バラクビル国にしてみれば、ウランベシカ大国からの最初の侵攻を事前に知らせてもらえたことで侵略されずに済んだ。以降も、竜人たちの侵攻を防いでいるが、その功績は自国の竜人たちのおかげだと知られている。そのため、自国の出身の竜人はウランベシカ大国の竜や竜人と違う存在だと公的に発表している。
そしてウランベシカ大国にいられなくなったのだろう。竜と『わるい子たち』は何度も海を渡ってプリクエン大陸に押し寄せてきた。
間にあったタムスロン大陸は、いまだ海の中に沈んだまま。その周辺はまだ海流が穏やかにならず。地の妖精と水の妖精曰く、《 大陸を元に戻すにはまだ不安定 》とのこと。このまま強行したら、周辺の島が水没しかねないらしい。
「これってナナシの封印に関係しているの?」
《 そうだと思うよ。大陸の一部が海流を乱しているから 》
封印が効いているけど、ナナシが求める声に従って封印を破ろうと抗っていることが、海流を荒らしている原因らしい。
そのため、ミドグリームス大陸までにある小島には、旧ウランベシカ大国に身を寄せていた竜人たちが休める島がないらしい。
「海流の乱れは大気の乱れ。竜に荒れた大気を渡る能力はないんだよね」
火龍と大きさも筋力も違うため、火龍が難なく渡れる距離でも竜は渡ることができない。
「じゃあ、どこにいるのよ」
《 報告では火山島の中でも比較的活動が小さいところを転々と 》
妖精たちが言葉を濁す
…………のちにその理由を知ることができた。
火山島の活動をよく知らない竜人たちは、自分たちの能力を過信していた。大気と地熱による暑さと、ときどき噴き出す火山ガスの熱さに耐えられることで、そこを自分たちの棲み家にしようとした。……ある日突然、特大の噴火が起きた。詰まっていた火山灰が一斉に噴き出し、地熱に温められて溜まっていたガスと共に大量に降り注いだ。
「半数以上の仲間たちが、そのときに死んだ」
生き残った『ウランベシカ出身』の竜人たちによる証言は、戦争が落ち着いてから世界に公表された。
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