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最終章
第709話
しおりを挟む「エミリア。俺たちは家族だ」
事実を知る前からそう繰り返してきたダイバ。私たちが二世界に分かれていたとはいえ魂の片割れが家族だったという事実を知ってから、シュリさんたちダイバ以外も本当の家族のように接してくれている。
「私はぁぁぁ⁉︎」
それに不満を口にしたのはアゴールである。
「うーん……。お兄ちゃんって恋人はいなかったし……」
「誰かいないのぉぉぉ?」
どんなに思い返してみても、私に執着する女性も、お兄ちゃんに付き纏った女性も思い浮かばない。シスコン兄とブラコン妹だったのだ。
「ダイバぁ……思い浮かぶ人、いない?」
私の記憶を何度も夢で確認したダイバも一緒に考えるものの、やはり思い当たる人物を思い出せずにいた。
「エミリアに執着する人、だろ?」
「…………離れてくれない人」
ずっと私を背後から抱きしめて離れない執着の強さをみせるアゴールに周囲は苦笑する。そのお腹には3人目の子どもが宿っているアゴール。妊娠するたびに不安定になるアゴールの精神安定剤として、いまも私が与えられている。
「大変なときに妊娠させるか~?」
そう揶揄われたが、私が不安定になって以降アゴールも同じく不安定……というより暴走気味になっていた。帰ってこないダイバも心配だったけど、それ以上に私を不安定にさせるレイモンドの存在を憎く思っていたのだ。その感情を抑えるために、毎晩一緒に寝て慰めていれば……仲よし夫婦なのだ、当然の結果だろう。
ただし、今回は『エルフの祝福』は与えられない。エリーさんがこられないからだ。その不安も相まって、いまのアゴールは私並みに不安定になっている。
そしてさらに不機嫌なのは……
「いい加減に返してください。エミリアさんは俺の恋人なんです」
「私のエミリアさんです!」
彼が不満げに私の所有権を主張する。それに腕の力を強めてだき抱えるアゴール。
……そしてしまる私の首と苦しくなる呼吸。
「ストップ、アゴール。エミリアの首がしまってる」
「ママ、エミリアをはなして」
ダイバの言葉にいつもなら腕をゆるめないアゴールだったが、ここで妹のエーメを抱いたフィムがアゴールの手を軽く叩いた。さすが母親。フィムとエーメに目を向けると、強くしめていた腕がゆるんだ。その隙にダイバに助け出されてた私は、ダイバから彼の膝に移されて優しい腕に抱きしめられる。
「私のエミリアさん!」
「ママはコッチ」
そう言って右腕にエーメを抱かせるフィム。左膝にのったフィムは左腕を自分に巻き付けてアゴールにもたれる。
「おなかのあかちゃん、げんき~?」
お腹に耳をあてているフィムの言葉に「き~?」とマネするエーメ。
「フィム、お腹の赤ん坊はなんて返事してる?」
ダイバがフィムの頭を撫でながら聞くと「うん、うん」と何か聞いているように返事をしたフィムが顔をあげる。
「ママはね~、エミリアのママだったんだって」
「「「は、ああああああああ?」」」
全員が声をあげるものの、フィムはニコニコと笑っているだけ。
「シェシェと同じく、その人の過去がみえる?」
「もしくは、魂の片割れが誰かが分かる、とか?」
ダイバたちが話あってるし、アゴールはキョトンとした表情でフィムを見ている。
「はーい、フィム先生にしっつも~ん」
私が手を挙げると「エミリア、どうしたの?」と聞かれた。周りからは期待するような視線が集まってる。
「お腹の赤ちゃん、妹? 弟?」
私の質問にみんながずっこけた。
「「「何を聞いてるんだ!」」」
「そうじゃないだろ!」
「え? だって気にならない?」
「そりゃあ気になるが……」
気にはなるけど、いま聞きたいのは違うことだと、みんなが口々に訴える。
「おとうと、だよ」
「だって」
私の言葉にダイバが苦笑する。それにしても……フィムがニコニコの笑顔を変えることなく答えたが、なんとなく何か隠しているような?
「フィム? それはひとりだけ?」
「ううん、ふたり」
「……だけ?」
「うん。でも、いもうとはひとり、だよ」
おおっと~! 三つ子ですかい⁉︎
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