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第十二章
第691話
しおりを挟む焼き芋からBBQに昇格したパーティーが開かれてから一週間。
「あの神の称号を無駄に使ってる無能連中って、あのまま廃国の肥やしになった?」
《 そんなことになったら、廃国の土が回復不可能なまでに腐るじゃない! 》
《 そうよ。私たちが頑張って少しずつ回復させてきたのに! 》
《 やっと雑草が生えてきたんだからね 》
「でも、あの無能な連中ならやりかねないよね? ただでさえ無能なんだからさ」
「あら、エミリア。あの連中は『バ神』っていうのよ」
《 バ神ー 》
《 バ神ー 》
《 バッドな神でバ神ー 》
あれ? 『バカな神』からのバ神だと思ったら違うんだ。
「でも、なんで?」
「彼ら、初対面のエミリアに挨拶した?」
ううん、と首を左右に振る。2往復でダイバの手が伸びて私の頭を止めた。
「エミリア、アイツらはエミリアを元の世界から引き離したことを謝罪したか?」
ダイバの言葉に首を左右に振るとまたダイバに止められる。
「神に罪はない、召喚した人間が悪い。と開きなおられた」
私の言葉に周囲が殺気立つ。
「そいつは許せねえな」
「今度来たら叩き潰して……」
「そいつはすでに妖精たちが仕返しした」
《 地面に深く落としてー 》
《 上から土をかぶせてー 》
《 落ち葉を積みあげてー 》
《 火龍が火を吹いたー 》
「そして焼いたんだよ、さつま芋を」
「最初は焼き芋パーティーだと言っていたけどね。気が付いたら、焼くものが野菜から肉に変わって、気が付いたらBBQになった」
妖精たちに続いてダイバと私がその時の話をすると一気に笑いが起こる。
「その火だって……メッシュが凍らされたと思って、真っ先に投げ込もうとしたんだよね」
そんな笑い話をしているが、あの後は本当に大変だった…………神々が。
「真っ黒けっけ。……誰?」
「ここに埋まってたんだから……神だろ」
「死んだ?」
《 死んでないよ。殺そうか? 》
《 死なないけど、仕返ししなきゃ 》
《 エミリアのお姉ちゃ~ん。『食後の仕返しタイム』に入っていいー? 》
「女神なんか返上するわ」という言葉ひとつで、『魅了の女神』と呼ばれるのを嫌った彼女は私の姉という立場を確保した。
「いいわよ。エミリア、まず最初に仕返し、する?」
「何をしてもいいの?」
「何でもいいわよ」
「じゃあ……みんな、ゴニョゴニョ。ゴニョゴニョ、で、ゴニョゴニョ」
妖精たちを手招きして私の思いを訴えると、みんなも少しずつ目が据わっていく。私たちの視線の先ではピピンとリリンが神々を介抱していた。
リリンが触手で穴から吊り上げた神々を地面に投げ出し、ピピンが水でこげを削ぎ落とす。そして気絶したままの神々に水を飲ませている。
《 りょうかーい 》
《 みんなで、ね 》
《 よーし。……かかれぇぇぇ!!! 》
《 とつげきぃぃぃ!!! 》
ピピンとリリンが離れると、妖精たちが一気に飛びかかる。そのまま神々の足に攻撃を加えてヒザをつかせる。
「こうしないと届かないもんね~」
私が。そう呟くと、グローブをはめた両手を握り合わせた。
「げんこつヶ原のオークさん♪」
童謡と同じ曲で歌詞が違う歌というのがこの世界には多い。タヌキやキツネという動物がこの世界にいないからだろう。
歌っていると、手の空いている妖精たちが手遊びを始める。クルクルと踊っている子たちの後ろで、私と妖精たちの気分が晴れるまで的になっていた神々が、何弾目になるか、妖精たちの仕返しを受けている。
「あの子たちは廃国で被害にあった子たちだね」
《 やれー、やれー! もっとやっちゃえー! 》
妖精たちは神々の表皮を切り刻んでいる。流れ落ちるその血は地面に触れる前に消えていく。
「ねえ、あれって……」
「騰蛇の話では、神の流す血も大陸の回復に使えるようです」
「ピピン……操り水って神にも有効だったんだね」
「はい、精神的に幼稚なのでしょうか。あっさり効いてくれました」
地中から引き上げた神々を介抱しつつ操り水を飲ませていたピピン。手出しをさせないため、そして神々の重ねてきた罪を清算して一括払いで償っているのだ。
私は妖精たちに支えられた神々の左頬を平手打ち、右頬をげんこつで裏拳打ち。そして立たせて腹部をひと蹴り。彼らの後ろには落とし穴が開いている。その中に順番に蹴り落としたら、地の妖精が土をかぶせて水の妖精が水を与えて花を咲かせる。
……その花の中で大きな一輪が神の顔だ。それが5輪、を引き抜くと神の生誕……生還?
そしてダイバとバトンタッチ。ダイバの腕力は私の何倍もあるため、一撃一撃がとても重く頬骨と肋骨、穴に落ちたときに首と背骨が砕けた音をさせていた。
ダイバの後は白虎だった。左頬の一撃で首の骨が右に90度に折れ曲がり、右頬の一撃で首の骨が砕けてぐるりと180度回転して背中に顔が向いて……白虎の後ろ足は神々を顔から穴に突き落とした。
リリンは触手で3度激しく地面に叩きつけ、ピピンは氷で作った槌で神の頭蓋骨を3度潰した。
私の願いは『みんなで仕返し』である。ナナシにはもちろん同じことをするつもりだけど……神には『叩いて殴って蹴る』をしたかったのだ。そのため、ここまでは3撃で終わらせていた。
何度も生き埋めになり、半死半生で花を咲かせて復活する神々の目は光を失っていった。それでもまだ終わらない。
次は私と契約した妖精たちの出番だった。
暗の妖精は重力魔法で煎餅にし、火の妖精がこんがりと焼いたときには、取り囲んで見守っていた妖精たちから《 おしょうゆ、いるー? 》という声があがった。
「お腹を壊すから食べちゃダメよ」
「今度お煎餅作ってあげるよ」
《 みんなでクッキングしよう 》
《 じゃあ、食べずにいてあげる 》
《 不味そうだもんねー 》
神々の地獄はこの後も連日連夜続いた。5柱以外の神々はすぐにでも救いに行きたかっただろう。しかし、ピピンの操り水によって宣誓をしていた。
【我々はこれから犯した罪にあった罰を受ける。これは我らが受けるべき罰であり、残された神々も同じ罰を受けると約束する。それにより一切の罪を問わないものとする】
この宣誓が神自身によるもののため、これから何度も罰を受けるために神々がやってくる。そこで流される血や涙が、騰蛇を介してこのプリクエン大陸の回復に使われる。
それは長年放置してきた神への罰である。
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