私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第十二章

第664話

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エリーさんの回復を願いミリィさんは通話を切った。
オボロさんの優しい最期を知った私たち。誓うことはただひとつ。

「先にったみんなに胸を張って会える生き方をしよう」

私たちは大して変わらず、ダンジョンに入って素材集めに魔物の討伐。素材集めのダンジョンに魔物は出ないからね……魔素や瘴気が溜まらなければ。でも今は素材集めのダンジョンに魔物は出ていない。ダイバたち管理部がほとんど倒したからだ。ダイバたちは魔物の討伐や間引きが仕事のため素材には手を出さない。素材集め以外のダンジョンでも、魔物を全滅させるのが目的ではないため、生態系を壊さないように魔物を間引いていく。

「全部倒してしまうと冒険者たちが入れないからな」

そして、ダンジョンにひそむ魔物の種類を確認している。弱そうな魔物のダンジョンは、冒険者学校の生徒たちが実戦を学ぶために使っている。

《 エミリア! ダイバたちが入ったダンジョンでトラブルだって! 》
「何があったの⁉︎」
《 毒ガスが充満してるって。みんなは無事よ、結界を張ってテントの中に入ってるって 》

バラクルの私室で調剤作業を手伝っていた水の妖精みぃちゃんが、動きを止めてから慌てた様子で話す。動きを止めたのは、ほかの妖精から話が届いていたからだ。

「ここは私が片付けておきます」
「じゃあ行ってくるよ。一緒に行けるのは誰?」
「遅れて行く妖精はくらやみの妖精に涙石の部屋へ送ってもらいます」

ピピンの言葉に暗の妖精クラちゃんが《 任せて! 》と胸を叩く。

《 私は一緒に行くー。浄化上手くなったからー 》
《 ぼくも行く。同じダンジョンに入れるか分からないでしょ 》

光と地の妖精たちが手をあげる。

「わかった。じゃあ、先に行ってるね~」
「ダ~メ。窓からの出入りは禁止。メッでしょ」

窓から飛翔フライ関所ゲートまでとんで行こうとしてリリンに羽交い締めで止められた。そのまま触手で抱きあげられると廊下に続くドアから正しく連れ出された。

「あら、エミリアちゃん。どこか行くの?」

階下ではダイバたちの話が届いていないらしい。ただコルデさんは聞いているのだろう、テーブルに左ヒジを立ててアゴを乗せた状態で口に開いた右手を滑らす。これは鉄壁の防衛ディフェンスで使われる暗号で、『知っていることを話さないように』という合図だ。

「うん、調合してたけど薬草が足りなくなってきたから入ってくる」

これはウソではない。治療院で使われる麻酔薬や、守備隊が愛用している瞬間睡眠スプレーなどに使う『眠りそう』が足りなくなってきたのだ。

「そういえば冒険者ギルドから調剤の材料集めの依頼が出てたな。俺たちも一緒に行っていいか? 色々とよく分からんものが依頼書にあるんだが、ギルドに行って確認するか?」
「いいよ、依頼書は関所ゲートにもあるから。あとは採取できるダンジョンを職員に聞けばいいよ」
「それ以前に、草を見てもどれが正解か分からん」

コルデさんが苦笑する。一般的に出回っている鑑定の魔導具は、ただ持っているだけでは『※※』としか表示されない。本で見知ったとしても実物を確認しなければ鑑定は伏せ字で正しく表示されない。

コルデさんとアルマンさんは、今まで鑑定の魔導具を持っている仲間やエリーさんみたいにスキルを持っている仲間と一緒だったため、仲間や魔導具に頼りきっていた。そして引退して苦労しているのだ。

コルデさんが持っているのは半籠手……オボロさんからの最後のプレゼント。オボロさんはダンジョンに入るときはいつも装着している。肘から手の甲までの革製、ただし世界最強と言われる魔龍の革だ。オボロさんから土下座されて譲ったもの。コルデさんは盾の代わりに腕の半籠手を使う。そのためどんな魔法も攻撃も防ぐという魔龍の革をオボロさんは欲しがった。

茶色のなめした革はひと針を刺すのもひと苦労だ。そのため、職人の腕の見せどころだ。その職人に頼み込んで、オボロさんは時間をかけて作ったのだった。
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