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第十二章
第658話
しおりを挟む使える魔法が少ない、魔法の威力が弱いという点でナナシが流民を選別できていたのだろうという仮説がたった。
「ほかの大陸に移民しても、ムルコルスタ大陸で生まれた人の子孫はずっとペナルティが続くのかな?」
「いや、そうならないだろう。それこそ神の権限を逸脱している」
「でも流民は?」
「彼らは移民ではないからだ」
どこかの国に移り住むのが移民。しかし流民は定着が許されない。仮住まいではペナルティはなくならないそうだ。
「エミリアちゃん、俺がここに住み着いてだいぶ経つだろう?」
アルマンさんの言葉に頷く。アルマンさんはコルデさんとダンジョン都市に来てから一度もムルコルスタ大陸に戻っていない。
「あれ? じゃあアルマンさんは移民になるの?」
「ああ。それでダイバの言葉を裏付けることになるが……。まず、ムルコルスタ大陸にいた頃とここに移った頃はステータスに変化はなかった。しかし、バラクルに部屋をもらったことで少しずつ変化は出てきた。そこから1年後、俺のステータスに『ダンジョン都市在住』がつくと抑えられていた魔法の威力が何倍にも膨れ上がった」
それはネージュさんやフォスターさんたちのように、違う大陸で生まれて渡ってきた仲間たちと同じ強さだったそうだ。
「ねえ、ネージュさんたちってエイドニア王国に住み着いたんじゃないの?」
そう聞いたら、大陸を渡る前に冒険者になっていたことで移民とならなかったらしい。南部守備隊の人たちが除隊してできた鉄壁の防衛だけど、ネージュさんたちのように商人の護衛でエイドニア王国に渡ってきた冒険者も加わっている。魔法の威力が買われたのではなく、意気投合したかららしい。
「彼らの魔法の能力が減ったようには見えなかったな。その点から見ても、違う大陸からきた移民はムルコルスタ大陸のペナルティが影響することもなかったのだろう」
「そういえばコルデさんは?」
「んー? たしかに威力とか変わらなかったと思うぞ。まあ、実戦は魔法に頼らないパーティだったから気にしたことはなかったし、日常生活には魔導具を使っていたからな」
元々、魔法に頼らずとも生活できるからこそ退化したのかもしれない。
「いい加減さあ、魔法戦争が起こっていないんだからペナルティを解除すればいいのに。こんなことしていたら、ムルコルスタ大陸に住んでる人たちが別の大陸に移住するじゃん」
「流石にそこまでバカじゃないだろ?」
「バカでしょ? んで、誰も住まなくなった大陸はほかの大陸で犯罪を犯した連中が移り住むんだよ。だって国が消えたんだったら、どの町や村に入れない犯罪歴のある人たちが、新たに町や村をつくって住み着いても問題ないよね」
「ここの外周部のようなものか」
「そうそう。……そんなこと、神様って本当に望んでいるのかな?」
そんな話ののち、〈ムルコルスタ大陸のペナルティが解除された〉と火龍から聞かされた。どうやら、神たちは数百年でペナルティを解除するのを忘れていたらしい。
〈騰蛇からペナルティの事を聞いた神獣たちが神に聞いたらしい〉
……神って何を考えているんだろう。
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