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第十二章
第641話
しおりを挟むナナシに関する何かが封印されていると思しき箇所には、ナナシの痕跡が残されていた。それは『女神のカケラ』の思惑か、それともナナシ自身存在を忘れた『善き心』か。
…………かすかに残った善き心を捨てているのか。
「そう考えると、ナナシの足跡が辿れるな」
アルマンさんがテーブルに開かれた世界地図を見ながら、地図上に置かれた小さな宝石くずのひとつに触れる。それは封印があると思しき場所とその周辺で起きた事件や事故の被害状況の大きさを、私が安価なアクセサリーに使う宝石くずの大きさであらわしたものだ。そんな宝石くずを小さなものから順番に指を動かして軌跡を結ぶ。それ則ち、ナナシが辿ってきたと思われる痕跡でもある。記録が残っており、古い事件から順番に被害は大きくなっているのだ。
「タムスロン大陸で起きた事件もかなり古い」
「そして今は最新で最大の被害だな」
大陸そのものが沈められたのだ。ただ王都や大小の町や村に設置されていた魔導具が被害を軽減した。元々は水害から守るために城壁の等間隔に設置されていた魔導具は、海の中でも城壁の中に住む人々を守り続けている。それが世界中に知れ渡り、今は各地で魔導具が設置されている。
「次はこれ以上になるというのか」
「大陸の沈没が先だと考えたら、各国の被害は『これ以上』になるよね」
竜巻(風属性)か、地震(地属性)か、噴火(火属性)か。
大陸の沈没が水属性による災害と考えるならそうなるだろう。
「大陸の沈没は地属性も含まれないか?」
「2属性だとしても、被害という点で考えたら水属性でしょ。それに過去にも被害が出ている噴火だって、火属性と地属性の2属性だけど被害報告は火属性で分類されているよね」
大陸には火山がない。今まで繰り返し起きてきた噴火で流れ出た溶岩によって大陸の大地を焼き、大陸から切り離された状態になっているのだ。そして溶岩が大地を抉った場所は渓谷に。冷えて固まった溶岩に含まれた栄養によって木々は鬱蒼とした森へと育った。
そう、ムルコルスタ大陸は火山によって齎された栄養分によって自然豊かな……過剰なくらい緑に囲まれている。
「ムルコルスタ大陸って、大地の神様が危険だから大陸から離したんだね~」
世界全集を開いてムルコルスタ大陸に関するページを読む。火山といえば火山島をいくつも有するムルコルスタ大陸が有名だ。まあ、日本の様に火山と共存して地熱を使って豊かな生活ができる島もあるが、火山のみの島も数多くある。溶岩が海水で冷えて大地を広げている島もあって鳥が住み着いている。……普通の鳥や魔物の鳥ではなく神の眷属、迦楼羅や迦陵頻伽などだと召喚獣図鑑には掲載されている。
「その火山がいっせいに噴火すると思うか?」
「うーん、神の方も警戒してるんじゃない? だいたい、一度は『タムスロン大陸の沈没』という失態を犯したんだし。それこそ、大地と火の神が全力で妨害するでしょ」
形振りかまわないナナシであっても、複数の神々に妨害されては手出しできないだろう。
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