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第十二章
第625話
しおりを挟むコルスターナ国は本来タグリシア国の一部だった。それが健全ではない理由でタグリシア国から切り離された。
「当時の記録では王族による反乱だ。兄弟王子で王太子の座を争い……両方とも国から追い出された」
兄弟喧嘩で済まない騒動に国民が巻き込まれて平穏が破られようとしていた。国王たちは至極まともな常識人だった。
「国王とは国を統べ、民の平穏を守るために存在する。それを争いで壊そうとしたお前たちに国王となる資格はない」
そのときに兄弟はそれぞれに荒れた地を与えられた。兄が比較的人が住む、のちにコルスターナと呼ばれる地を。弟が港を有する、のちにパルクスと呼ばれる地を。
弟王子には夢があった、「よその大陸と外交をしたい」という夢を。その夢を叶えるために港がある地を与えられた。
兄王子にも夢があった、「広大な土地を緑でいっぱいにしたい」と。
神がまだ見守っていたその頃の大陸でも人は少なく、国はタグリシア一国のみしかなかった。大陸の東西にある港町から発展したタグリシア。多くの人は港を中心に広がっていったが、大陸の端と端の往来は陸路より海路がメインだった。その中継地に港町ができたのが、いまのアルジオキス国のなりたちだ。
そう、コルスターナ国もパルクス国もアルジオキス国も。もとはタグリシア国の王族であり国民であり、封印は4ヶ国の王族だった。
そして大陸の中央はまだ未開の地だった。
「そこに神々が天界から降りてきていた。しかし、何らかの理由で大陸から神の加護は消え失せ、不毛の大地となった」
ここら辺は騰蛇とアラクネから聞いた話だ。アラクネだけでは神への批判しか言わないため、騰蛇と通訳に妖精たちも含めた話を聞いてきた。
「それで、何で私はお留守番だったわけ~?」
それは私の散歩(みんなは家出と言うけどさ・ん・ぽ!)に問題があったらしい。
「話を聞いたら家出するだろ」
「家出じゃない。散歩、さんぽ、さ・ん・ぽ!!!」
「はいはい。まだ確定していない話を聞けばその遠出をするだろう?」
「確認に行くだけだよ?」
「行かんでいい。それに確認も調査も情報部の仕事だ」
「お手伝い」
「しなくていい」
「お邪魔」
「もぉぉっとしなくていい!」
妖精の幼稚園で、私はフィムたちと一緒に遊んで眠っている。
こっそり夢の中で魅了の女神に会ってこようと思っても、なぜかフィムが遊びにくる。ダイバに言われたとおり、私と一緒にいる。トイレにはついてくるし、お風呂はアゴールとシエラが一緒。そして夢の中には、ときどきエルスカントの尾根にいるおじいちゃんたちと抱かれたシェシェもやってくる。
いろいろな話をしていると、あっという間に朝がきて夢から覚めるのだった。
「じーさんたちは無事だったか」
「『もうすぐあえるよ』だって。なんかいねたらあえるの?」
《 何回だろうねー。今度会ったら聞いてみたら? 》
「お昼寝するから1日2回寝てるでしょ。だから日数の2倍……?」
「おひるねしなかったら、はやくあえる?」
《 昼寝してもしなくても一緒。昼寝しないと大きくなれないよ 》
《 そうそう。『寝る子は育つ』っていうからね 》
うーん……早く会いたいし色々聞きたいことも多いけど…………
「エミリアちゃんはナナシに残っていた『女神の心』がこの世界に招んだんだよ」
その理由を聞きたい。
そう考えていた私は忘れていた。その話のときにフィムとシェシェもいたことを。
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