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第十一章
第613話
しおりを挟む俺たちは双子を冒険者に育て上げていた。それは別の視点から見れば『殺戮の道具』だった。
セイマール地方の一件が終わったとき「子供らしくない」と指摘を受けた。弟妹に甥や姪など幼い子供と触れ合ったことのあるユージンたちが双子の様子を見守った。たしかに子供らしい無邪気さを持っている。その無邪気さで魔物と対峙するため真っ先に飛び出して行く。それも格闘技で倒すため一番危険な魔物の目の前だ。
「凶暴な魔物は俺たちが倒す」
そう話しても返ってきたのは「「なんでー?」」だった。
その言葉を聞いて背筋が凍った。
だってそうだろう、双子は自分たちが前にでて魔物を倒すことを当然だと思っているのだ。そして俺たちも双子が楽しそうだから、強いから大丈夫だと前線に配置していた。エアさんの指摘から注視してはじめて気付いた。たしかに遊び半分で戦っている。そして「「飽きた」」といって、それまで遊び相手だった魔物を笑顔で殺す。そして倒した魔物を「「たおしたー」」と笑顔で引き摺って持ってくる。「たのしかったー」や「おもしろかったー」と笑う……魔物を引き摺って。
双子が子供らしくなるために、仲良くなった宿屋の下の子供と遊べるように手配した。早めに異常に気付いてもらえたのが良かったのだろうか、3人で走り回るようになるとすぐに子供らしく声をあげて遊べるようになった。……それまでは『大人の言うことをきく子供』、言い方を変えれば『年齢にそぐわない子供』だった。
「俺たちは……子供を預かったんだ、善悪を知らない子供を。冒険者にする前に子供らしく情緒を育てなければいけなかったんだ」
それでも子供らしく無邪気でいられたのは、偏にアルマンのおかげである。預かったときからアルマンが双子に日課とさせたのは、木のぼりやブランコに鬼ごっこ。冬には雪だるまづくりにそり遊び。そのすべてが遊びを取り入れた体力づくりだ。ブランコやそり遊びも動体視力を鍛える訓練だった。
気付くと宿屋の子供も冒険者になるといって、双子と一緒にアルマンの特訓や鍛錬を受けていた。父の後を継ぐ兄のために食材を採取するらしい。
「お姉ちゃんが僕たちに希望をくれた」
それは大地のダンジョンのときだ。あのときはどこもが閉店や休業、素泊まりのみなどまともに稼働していなかった。そんな中、エアさんは自分の食材を分け与えて足りない肉を求めてダンジョンへと向かった。いまでは、冒険者ギルドには魔物の肉を求める依頼書が貼られるようになった。冬に閉ざされてきたダンジョンも、上級冒険者には食材の依頼で入ることが許された。
さらに商人ギルドには、村のギルドが一括で買い上げて時間停止の食材倉庫に保管し、それを依頼されるとギルド間で食材を送りあう方法が提案された。それが上手く稼働して、冬でも野菜が不足するようなこともなくなった。
それまではあまり豊かではなかったという彼の実家。冬の期間中、ほとんどの宿は休業する。仕入れもできず食材も足りなく食堂も休業になる。その間、彼ら家族4人はひもじい思いをしていたそうだ。それが商人ギルドでいつも食材が手に入るなり、冬も暖かく越せるまでになった。
「僕が家族を支える」
彼の決意を彼の家族も応援している。双子と共に冒険者となるべく、日々の鍛錬を続けて少年冒険者としてパーティのひとりとして頑張っている。
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