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第十一章
第576話
しおりを挟む冬支度を始めるダンジョン都市の中、鉄壁の防衛の冒険者たちはアルマンさんとコルデさんを残して母国へと戻る。
「戦争で帰国できなかったからな」
遠征のため報告義務があるらしい。ということで……
「い~や~ああああああ! の~こ~るううううう!!!」
「却下」
泣いて嫌がったのはアラクネの金糸にぐるぐる巻きにされたエリーさんだった。
「まだミリィの子供たちに会ってなあああい!!!」
「だから身体を置いて行こうとするな!」
よーく見ると、エリーさんの右腕が肩から2本生えている。1本は透明だ。精神が抜け出そうとしているようだ。
「完全にクセになっているな」
「アラクネの金糸がなくなったら飛び出すよね。海の上で外しても大丈夫かな」
《 ムリムリ。飛んでくるでしょ 》
「だよね~」
バラクルにコルデさんとアルマンさんにこれから帰国することを報告に来たキッカさんたち。コルデさんとアルマンさんは引退に近い状態で、今後はパーティーの顧問という立場だ。年齢的にも引退はまだ早いものの、2人はダンジョン都市という安住の地を見つけた。このままバラクルの嘱託冒険者として、好きなときにダンジョンに入ってバラクルで使う食材を集めて、ついでにダンジョン踏破する日々を楽しむそうだ。
コルデさんが探していた2人の子供ハルーファスはパルべシアに、ロッテはいとこのルグレインと一緒にパルパークにいた。港に着いたときに3人で一緒にはぐれた。そのときに港から出る混乱に子供たちは近寄れず、離れていたところで待っていたらそこに船が来てそれに乗ったらしい。
「国に戻る船だと思った」
その船のがタムスロン大陸行きで、最初に立ち寄った港で降りたとのこと。そこで避難民として避難所にいたが、仲良くなった子が親戚を頼っていくと聞いて一緒にウルクレア国へと移動、そのままパルパークで暮らして大人になった。ハルーファスは結婚して隣町のパルべシアに移ったがハルーファスとルグレインは魔導具技師となっていた。ロッテはルグレインと結婚していて子供もいるらしい。
ダンジョン都市に家族がいると知り、魔導具の最先端をいくダンジョン都市で技術を学ぶために家族揃って引っ越してくるらしい。それがいつになるかわからないらしく、コルデさんはダンジョン都市に残ることにしたのだ。
以前ルーバーが教えてくれた『滅びた兄弟国』と同じ名前だけど、いま名前が残っているのは救援国のウルクレアに保護されてつくられた町。両国の王都とその周辺は集団逃走で壊滅状態だったが、ほかの町や村は残っていた。その残った国民が、救援に駆けつけた中で一番離れたウルクレアに頼んで新たな町を興した。そのときに国の名前をつけたそうだ。それは避難した国でも『ここに避難民がいます』とわかるように国の名をつけることがある。当初は多くあったが、いまはウルクレア国のみに名を残している。
ダイバのほかの兄弟姉妹も近々ダンジョン都市に集まる。「冬の間だけ長期休暇がもらえました」とのことらしい。とくに今回、エリーさんが戻らなかったことで、冒険者ギルドの表のギルドマスターをしているユーリカさんは休むことができなかった。そのため、エリーさんが帰還したら、魔物情報の収集と翌春の一斉始動に向けた各所の情報収集を押しつけて、同じムルコルスタ大陸に住む兄弟姉妹と共に海を渡って来るらしい。
これが生き別れた家族全員が初めて揃った再会になる。そのためエリーさんはユーリカさんたちの護衛を、交代でダンジョン都市にくる鉄壁の防衛に依頼した。
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